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pommeのうた 8

家のなかを歩くたびついてくる
ただ、物を取りに行きたいだけなのに
おまえは撫でてくれると思うのか足元に身を寄せ
ときに体をつよく当ててくる
すこし早歩きにすると足首のあたりを一噛みする
たわむれなのかおまえの意思表示なのか
ときたま唸り啼いたりもしたりして
布越しに当たるちいさな牙の痛みを
手加減をした甘噛みを
きっと老いた日に思い出すのだろう

次は足の指を噛んでくる
おまえにできる限られた方法を
今日も私たちは解き明かそうと
必死に耳を傾ける
そしてこちらも限られた方法で
おまえに気持ちを伝えるのに夢中だ
その懸命さを受け取ってくれたような
おまえのしぐさを まなざしを
きっと思い出すのだろう

古屋朋