まだ観ぬフランス映画 (仏詩)
『コーラス』(原題 "Les Choristes")というフランス映画をご存知でしょうか。
戦後間もなくの、孤児や問題児が暮らす寄宿舎を舞台とし、新しく赴任した音楽教師が、合唱を通じて少年達と関係を築いていく物語…らしいです。
予告版の映像やDVDジャケットからは、セピア色な雰囲気が漂っています。
日本ではいざ知らず、フランスではかなり流行ったそうな。
お気づきかと思いますが、私は観たことがありません。
レンタルショップや動画配信サービスでなかなか見つけられないこともありますが、長年まだ観ぬ映画に思いを馳せているので、たった一回しか経験できない「初見」がなんだか惜しくて。
観たことはないのですが、家にサウンドトラックがあったので、幼い頃から物語の中の少年たちの歌声には親しんできました。そのサウンドトラックに、年を重ねるにつれてどんどん惹かれていっています。
魅力の一つは、森羅万象の神秘を歌った歌詞です。…大学生の頃に調べて初めて知ったのですが。フランス語の歌詞は、私には聞いただけじゃ分かりません。残念無念。
例えば、こんな歌詞です。
(意訳)
ああ 神秘の夜よ
静寂の魔法を もう少しの間だけ地上に残して
付き添う闇は とても柔らかで心地よい
あなたのもたらす夢ほど 美しいものはあるだろうか
あなたの歌う希望ほど 真なるものはあるだろうか
甘美。。
そしてさらなる魅力、美しい曲調とハーモニー(音楽分野にはあまり通じていないので語彙が乏しく歯がゆいです…)と共に光るのは、少年たちの、あどけなさの残るまっすぐな声。その美しい高音は少し震えて、声変わりのために間もなく失われる予感を湛えています。
ふと、小学校の音楽室を思い出しました。
何年生の頃だったか、音楽の授業で、声変わりしていく少年の歌声を記録した音声を聴きました。子守唄の一節をしっとりと歌うその声は、初めはきれいな高音だったのが、少しずつ苦しそうな音になり、やがて掠れて失われていきました。
後半の、裏声の失敗を面白がるクラスメート達のクスクス笑いが聞こえて来る中、私は鼻の奥がつーんとなるのを感じました。でもその感情の根拠が見当たらず、唾を飲んで涙を押し殺した記憶があります。
前に座った女の子の鼻をすする音を聞いた時、何を思ったのか、もう忘れてしまいましたが、あの時私も、理由なんか考えず素直に涙を流したら良かったのになと、今、思います。
※写真は今日のブランチ、その名もクランペット。小説『メアリー・ポピンズ』に出てきて作ってみたのですが、ドライイーストを入れすぎてちょっと苦かったです。
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