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「可愛いだけで終わらせない」ポートレートの撮り方で、大切な友達を撮ってきた

ポートレート、特に日本のポートレート界隈でよく聞くワード。

「彼女感」
「デート風」

こういったワードに対してのアンチテーゼを掲げ、一人の女性を撮るうえで重要な

「あなただからこその写真」
「自分ウケ最優先」

を目指すための、私なりの考え方を紹介する記事。
役者さんが多く共感してくれる「可愛いだけで終わらない」ポートレートを求めた私のメソッドです。
強めの言葉を使っているので苦手な方はブラウザバック推奨。

どこか他人と差別化できる写真を撮ってみたい方。
撮られたいんだけど苦手かもしれないという方。
写真に興味はないけど人との接し方として参考にしたい方。
に届けられるよう書いてみます。

そして今回、SNSで知り合ったお友達をこのスタンスで撮らせてもらいました。
ポートレートは自撮りしか経験なしの方。
それはもう最高に撮ってきたので、写真も内容も見て損はさせませんので最後まで見ていって。


大前提:「鑑賞者」は誰なのか

大前提であり、ある種結論。
その写真の「鑑賞者」は誰なのかという問いに対しての答えを持つことです。

私の答えは「被写体さんご本人」

鑑賞者、つまり写真を見る人です。
真っ先に浮かぶケースとしては撮る人でしょう。
写真は収奪という論を引用したこともありますが、事実写真という媒体でもって手元に残す行為ですから、撮る目的の一つは自分で見ることです。

また別の角度として「被写体のファンやフォロワー」「自分のフォロワー」という考えもあります。
不特定多数に向けたもの。
これは広告であったりSNSで戦略的に用いられる考え方で、これも一つ答として正しそうです。

ですが私の目的は「撮られることで、自分をちょっと好きになってもらう」こと。
私から見たあなたはこう写っていて、こんなところがステキで、そこに至る服選びや体形維持やもっと言うと写ろうとした決意含めて好きだ、と伝えることです。
その媒体としての写真であって、撮る私でも第三者でもない、あなたのためというスタンスでいます。

このことを踏まえて、いくつかトピックスをご用意しましたのでご覧ください。

①「彼女感」「デート風」をオーダーしない

うるせぇてめぇの彼女じゃねぇよ

乱暴に言いましたが本心です。
「彼女感」「デート風」はポートレートの界隈でよく聞くワードですが、これは鑑賞者を”不特定多数の男性”に設定しているからこそ出るものに他なりません。

いや、あなたの彼女でもなく、不特定多数の彼女でもないだろ、と。

推測ではありますが、そういったオーダーの背景は「うっとりとした、気を引くような表情」なのだろうと。
本来なら特定の人物にしか見せないものを覗き見ているような
部屋着やランジェリー系の撮影と同じような傾向と考えられます。

確かに共通認識として分かりやすい単語ではありますが、考えなしに用いると今の時代色々危うい価値観です。
プロのYouTube系写真家さんでも使っている人がいますが、私個人としては反対の立場です。

裏を返すと、そういった縛りを導入することでオーダーの幅を広げる必要が出てきます
言うて私のオーダーは「この雰囲気で撮るので~」で役者さんならではの力を発揮してもらうだけの簡単なお仕事なんですけど。

注意いただきたいのは、彼女感を売りにしているモデルさんもいるという点。
そういった方々のスタンスを否定するほどではありません。
あくまで「勝手に求めてはならない」という戒めです。

②自分ができない指示をしない

好きな人を思い浮かべても表情に出ねぇよ

「目の前に好きな人がいると思って~はい~」
よくある指示、と聞きます。
いや、表情に出ませんよ?
思い浮かべたのがクソデカ感情こじらせた推しとかだったりすると変な表情になりません???

もし仮にですよ。
好きな人とケンカしちゃった、もう少しで付き合えそうなんだけどイマイチ前に進めない、プロポーズしてくれない…
なんて悩みを抱えてる人にこういった言葉を投げているのであれば山口百恵のごとくカメラをステージに置きましょう。
元祖のキャンディーズだろうという方は私の父と同世代かもしれない。

私はポリシーとして「自分が出来る動きだけでリクエストをする」を持っています。
手の動き、腰の反り、足の角度、表情…
具体的にどのように動けばいいのかを口頭で伝える、ないし実際に自分が実演しています。
ちょいちょいInstagramでオススメされる、ポージングをするフォトグラファーのアレです。

特に私の場合、表情については”絶対に”指示を出しません
目線と顔の向きだけに言及し、表情については「ノッてきたら自然とバリエーション出る」というスタンスで撮っています。
なぜなら私自身が表情にコンプレックスがあるから。
撮る側になったのは自分のこと見たくないから、ですし。

③誰かと比較して褒めたり貶したりしない

いや、目の前にいる私だけ見ろ???

もうここまで来るとコミュニケーション術みたいな領域に入ってきますが。
「○○さんよりいい!」
「○○さんの時はこうだったから目指したい!」
はNGです。

…といいつつこれは私の反省から来ている点でもあるので、よく理解した方がいい。

褒めるのは百歩譲っていい。
しかし誰かと比較して評価されたとき、嬉しい感情の中に申し訳なさが出ると思うんです。
実際私はそういった褒め方をされたときに罪悪感みたいなのあります。

翻って、他の人を褒めるときに踏み台にされてるのでは、という疑念を抱かせることにもなります。
いま褒められていても、後々自分の及び知らぬところで自分が比較対象にされて下に見られてる、なんて考えると萎えますよね。

仮に比較して褒めるなら、過去のその人より良くなっていると表現することが大事だと思ってます。
特にポートレート初心者さんの場合、
「今日のスタートと比べて数段よくなってますよ」
「前回撮った時より自信が付いて見えますね、色々考えてきてくれたのかなって思います」
「撮ってて楽しくなってきました」

なんて表現を使うといいかも。

④あなただから撮りたいの気持ち

誰でもいい、なんてそんなワケない

スナップを撮るときは、そこにいる人の素性とか個性なんて気にしません。
でもポートレートは意味通り「肖像」ですから、その人について雄弁に語るような写真であることが求められます。
としたとき、「誰でもいいから撮らせて」の気持ちは存在しないと思うのです。

何が求められるかといえば、その人をどれだけ観察したか、どれだけ理解しようとしたか、です。
明るいトーンが合うのか、暗いトーンが合うのか。
自然が合うのか、都市景観が合うのか。
どんなものが好きで、どんな風に撮られたらうれしいのか。

ここで私が持っているポイントとして「風景に人物を足す」を挙げます。
撮りたい構図があって、画面構成上どこにあなたがいてほしいかを伝える。
風景だけで切り取っても素晴らしいんだけど、あなたがそこにいる美しさ・感動を表現したい。
そういった気持ちを持てるか否かが私にとって最重要項目です。

このスタンスの副次的な効果として、「可愛い」に頼りきらないポートレートが目指せるようになります。
可愛いを表現したいのであれば、正味ロケーションなんてどこでもよくて、アップで顔を撮っておけばいいです。
いや、むしろ自撮りで十分です。

しっかりしたカメラで、撮る側と撮られる側の共同作業で、作品を作るのだから。
「あなただからこう撮りたい」はあって然るべきではないでしょうか。

実際に撮ってみた

SNSで知り合った写真友達のYumiさん
私が尊敬する方であり、大切なお友達です。
そんなYumiさんから「ポートレートを撮ってほしい」とお話しを頂きまして撮らせてもらうことに。
素敵なnoteも書いてらっしゃるのでぜひごらんになって。

上で書いた内容をもとに撮影をしてみました。
写真はこちら。

Instagramのアイコンにご採用いただいた一葉
横顔がすごく好き
フレアをまとった姿は息を呑むほどでした

すばらしいの一言。
誰のためでもなく、写る自分のための一葉。
そんな風に受け取ってもらえてたらなお嬉しい。
せっかく一葉と数えるのだから、これは私からの無言のお手紙として。

撮ってみて:人として好きであること

可愛いで終わってしまうポートレートがあるのなら。
まぁ一つの正解というか、「可愛い」を引き出せているのだからそれでいいとも考えられます。

しかし私はそれでは満足しません。
その人の、私から見た「人として好きである部分」を見てもらいたいのです。
そのためにはご本人が写真を好きになってもらう必要があります。

今回、Yumiさんから事前に伺った話。
ご自身の容姿が好きではなく、だからこそ写真を撮ることを楽しめるのだと。
丁度わたしがnoteを始めた初期の初期に書いていた、この記事に共感したからこそ、私にオーダーしてくれたと言うのです。

あ、もちろん私の写真は好きだと言ってくれている上で、です。
私もYumiさんの写真すごく好きですしファンです。
ぜひInstagram覗いてみてください。

単に技術がある人なら、私なんかよりも適任はたくさんいます。
上には上がいて、日本で有数の撮影技術を持っているわけではないので。
それでも選んでくださったのは、私の人となりというか、考え方にリスペクトを持ってくださったからだと思っています。
私はそれに応えたいし、私もYumiさんのことを好きだという気持ちを返そうと。
人として、写真を撮る人として、そして被写体としての。

正直言えば綺麗ごとですが、こういった考えを頭の隅にでも入れてあることは私の強みです。
ましてやこうして文章にして発信しているのは、写真を撮っている人の中でもそう多くないです。
今回それを誇りに思おうと決意するキッカケになりましたし、私自身人間として数段成長することが出来ました。

作品の出来というか満足度は、私からだけでは測れません。
私は満足の出来ですし、しかしまたチャレンジできるなら撮りたいし、もっと切磋琢磨したい。
あとは同じことを考えてくれていたら、こうして考えて、書いてきたことが報われるのだろうと。

良き縁を長く大切にしていきたいですね。
今後ともよろしく。

おわり。

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