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写真の「その場力」を鍛えるのにプロレスはもってこい、というお話

どうも、プロレスとか役者さんポートレートを撮っているたかはしです。

写真を撮っていて思うことがありまして。
「カメラの設定をスピーディーにこなす練習ってどうやったっけ?」と振り返った時に、自分以外のカメラマンさんがどう練習してたのかが分からないのです。
私自身は「プロレス」と即答するのですが、カメラ本体の性能が向上した昨今ではどうなのかな?と。

考えても分からなかったので、自分なりの「プロレス撮影で鍛える過酷な環境でも耐えられる『カメラそのりょく!』」を書いてみたいなと思います。

なお、以前に「ポートレートを撮るようになって気付いたプロレス写真の難しさと楽しさ」という記事を書いており、一部焼き直しの内容があります。
そこにプラスアルファして、プロレス撮影の魅力としてお伝え出来たらなと思います。

1.めっちゃ暗いし明るさがバラバラ

ちょっと盛りましたが。
プロレスの会場は、概ね舞台だったり映画だったりと同じで、客席から見やすいように「客席は暗く、リングは明るく」なっています。

肉眼で見る分には十分明るいのですが、いかんせんカメラで撮影すると暗くて仕方ありません。
分かる方向けに言えば、「ISO1000以上は必要、私の場合1600が上限かつ下限」です。
別にシャッタースピードが稼げればいいのですが、いかんせん被写体が素早く動くので、SS 1/800[s]程度は欲しいところ。
どうしてもISOで稼がないといけなくなります。

そして何より、選手の位置によって明るさが変わってきます
リング中央、ロープ際、立ちかキャンパス(リングの床面)か、はたまたコーナートップだったりリング外だったり、縦横無尽に選手が動くたび明るさが変動します。
そしてとても暗いです。

仮にオートモードで撮影したとしても、上述の通り動きとの戦いがあるため、完全なカメラ任せにはできないかなと思います。
限られた範囲の中で、妥協点を探ったり、ダイナミックレンジの暴力で「後でどうにかする」を発動したり、何かしら判断をしながら撮影をする必要があります。

実際の設定値に関しては、敬愛するお二方の記事を参考にしていただければと思います。

2.会場のいろいろ

プロレスは日本各地様々なところで行われています。
代表的な後楽園ホール、大規模であれば東京ドームや大阪城ホール、地方の体育館やバー、果ては遊園地やキャンプ場、巌流島などなど。
通いなれた場所であれば勝手は分かるでしょうが、初めての場所や悪条件の会場だと「その場力」が求められます。

例えば「白色蛍光灯と電球色LEDが交互に設置された体育館」とか、「めっちゃ暗いうえにホワイトバランスが整わない公民館」とか、「コーナートップに立つと顔に照明が当たらないライブハウス」とか。
スタジオ撮影とは違い、撮影のために存在する施設ではないので、カメラマン泣かせの場所はザラです。

しかし写真で大事なのは設定値ではありません。
設定値は事前にある程度決めておいて、その中でどう妥協して構図やタイミングの考慮にリソースを割くか、というメンタルを求められます。
ロケ撮影でも天候や人だかりはコントロールできないのと同じです。
その会場の制約の中でやれるだけやってみるツヨツヨメンタルトレーニング2時間コースがプロレスです。

3.構図の制限

カメラの入門者向け記事や動画で、「足を使え」と言われた記憶があります。
たとえズームレンズを使っていても、前後左右に自分から動いて、いい作品になるよう工夫する考えを持たせる言葉と思っています。

一方プロレスは席に座って観ます。
基本的にその場から動けません。
足、使えません(足は重低音ストンピングのためにあります)。
その席に座ったら最後、その席で出来ることしか出来ません

これは数を撮ってきて思う事ですが、すべての面において欠点の無い座席というものはありませんし、欠点しかない座席というのも同様です。
その座席をあなたが選んだのか、その座席に選ばれたのかは定かではないですが、なんにせよ「その場で出来ることを考えて工夫するしかない」というのがポイントです。

例えばプロレス撮影の大敵「ロープ」。
選手の身長によって被る被らないが変わりますし、座席の高さによっても変わります。
自分がロープ被りしていても他の人は撮れているし、自分が撮れていても他の人は被っているかもしれないのです。
もし都合よくロープが被らない選手がいたら、その姿を収める使命を授かったと思って撮りまくります。

逆にロープが被ってしまっても、カメラの位置を低くしてみたり、立ち位置を観察してタイミングを図ったりと、自分なりの回避策で打開してみるのも一興です。
周囲の方に迷惑がかからない範囲でカメラを移動させて、試合時間いっぱいいっぱいまで試行錯誤してチャンスを作り出す、という考え方はタメになります。

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連写して、ロープが顔に掛からないカットだけ公開してます

4.被写体を理解するしかない。でも…

通いなれた会場の座り慣れた座席であっても、NGカットを乱発することがあります。
それは観戦経験の少ない選手を撮る場合です。

球技に比べれば幾分マシですが、プロレスは動きが激しいです。
それは前後左右だけでなく、上下にもです。
しかしその動きには選手ごとに規則性があり、その規則性を理解しないとNGを誘発することになります。

プロレスは基本的に技を中心に動きが展開されます。
技前のシグネチャームーヴ、予備動作、技本体、その後のアピールという流れがあり、ものによっては連続した技に繋がります。
この一連の流れは選手ごとにある程度決まっていて、「この動きをしたらこの技」と判断できれば、「この技ならこの画角」と決め打ちできます。
選手への理解が深ければ技ごとのベストなタイミングを狙えますし、逆に理解が乏しければ選手が見切れたり明後日の方向向いてたり…

しかしそれでは「プロレス見に行って撮ってみよ」と思ってる方の心を折りかねないので、誰にもチャンスがある撮り方を紹介します。
それは「選手の表情を撮る」です。

プロレスの華は派手な技ですが、プロレスの面白さの一つは「ダメージを喰らっても諦めない姿」です。
歯を食いしばって、苦しい表情でも叫びながら立ち上がる瞬間は、動きは少ないながらも「プロレスならでは」の写真に仕上がります。
自分がその場で「いい!ステキ!尊い!エモい!語彙力!」と思う瞬間を逃さない集中力と瞬発力を養うには、プロレスはもってこいだと思います。

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何度倒れても、カウント2.99で返せば試合が続くプロレスならでは

5.まとめ

カメラの設定というメカ的な理解、構図やタイミングといった技術的な要素、共にプロレスで「その場力」が鍛えられます、という内容でした。
特に座席から動けない中でクオリティを求めるというのは、動ける環境に移った時に「水を得た魚状態」になれるのでオススメです。

あとは単純にプロレス面白いので、エンジョイしつつ技術向上に臨めるのは、私としてはいい糧になりました。

もし興味が湧いたらぜひ会場でボクと握手(東京ドームシティ感)(握手できるようになったらいいね)。

おまけ:プロレス独特のやーつ

ここまでは他の撮影でも使えそうな話ですが、ここでは他で無さそうなヤツを。

例えば蛍光灯やガラスが破壊されるシーン。(流血ありなので注意)
例えば電流爆破(さかやきさんの素敵な投稿をお借りして)。
選手もさることながら、撮る側も一発勝負のスリリングな体験です。

あとは試合をしていない選手を撮るやーつ。
リングの外、真っ暗な場所で運営をサポートするセコンドの選手にもシャッターチャンスがあったりするのも、プロレスならでは。
まぁ失敗はつきものです。


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