エンタメとマーケティング7 テレビのBGM化に見る差別化
先日noteに投稿したエンタメとマーケティング6(https://note.mu/t_eae/n/nb3c2f7512de4)
実はここにあげたBGM化番組の3番組の時間帯が被っている。
土曜の夜23:30からTBS「新チューボーですよ」「7つの海を楽しもう!世界さまぁ〜リゾート」の連続した1時間と、土曜の夜23:55〜24:55日本テレビ「Going! Sports&News」である。
土曜日の夜ということは、次の日が休みなので遅くまで起きていてもよい子供が起きているからか、平日よりも過激ではない番組を作っているという事なのだろうか。
では他の局はどうなっているのか。
テレビ朝日「SmaStation」
実にSMAPファンという一定の固定層がいることは間違いないが、それ以外の客層の心を掴めているかと言うと疑問に感じる。SMAPのファン層である主婦層が喜びそうな紹介の仕方で行列店、便利キッチングッズを、名が知れている役者をゲストに迎え一緒に見ているという内容が定番である。過激な内容はなく、情報もある。テーマらしいテーマがあるかといったら疑問だが、BGM化番組になりうる可能性もある。ターゲットはミーハーな40歳前後主婦層といったところである。
フジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」「傘を持たない蟻たちは」
「さんまのお笑い向上委員会」では、凄く大御所の明石家さんまが、そこそこの大御所をひな壇に座らせ、中堅のゲストを迎えるというスタンスの番組である。はっきり言って見ていて辛くなる。面白くないわけではない。中堅以上の人間が集まっているので話術が面白い事はあるのだが、笑いの取り方や、パターンの作り方がバブル的というのだろうか、少なくとも10〜20代の若者はターゲットではないだろうと推測される。
前の番組の視聴率が低いと次の番組も見ない。その典型例が次のドラマの時間である。今までのドラマも視聴率も低く、評判の良し悪しすらあまり聞こえないほど視聴率が低い枠である。
現在(2016年2月)放送のドラマはジャニーズ事務所のアイドルNEWSの加藤シゲアキ原作出演で、新規顧客としてNEWSファン層を取り込める可能性はあったはずだが、視聴率はどんどん下がっているようだ。ターゲットはNEWSのファン層や、加藤シゲアキという作家に興味がある文化的興味をもった中年層と想像していたが、前者だけになっているだろう。
フジテレビ以外の民放3局は足並みを揃えたようにバラエティ色もあるおとなしめの番組を揃えている。
いつも独自路線を行くテレビ東京は夜23時からはネオスポ、24時からは「家、ついて行ってイイですか?」である。「家、ついて行ってイイですか?」も情報は特に無いが、テーマがあり過激な内容もほぼない。
多少過激なものといえば「Going! Sports&News」の前に「マツコ会議」「有吉反省会」と続くくらいだろうか。
土曜の夜24時前後という時間には個性、差別化がない、没個性な時間と言える。テレビのプロ達が長年培った経験や試行錯誤で今の形になっているのだろう。しかし、飛び抜けて変わった番組が存在しない、他の時間よりぼんやりとした時間帯なのである。
そこに、大きな発表があった。
ドロドロで有名な東海テレビ(フジテレビ系列で配信)の「昼ドラ」が土曜日の夜11時40分に移動するという内容だ。半世紀続いた、確実にファンがいる番組の時間帯移動はテレビ局としても大きな決断だっただろう。
ぼんやりとしたこの時間帯に、明らかな差別化にはなり得る。しかも新しくドラマ枠としての一新だけでは衝撃にも話題にもならないが、昼ドラをやめ完全な時間帯移動で話題性もある。
この昼ドラから夜ドラへなることは、マーケティングという視点で見て多くの利点がある。
・差別化
先にあげたとおり、土曜日24時前後は今まで差別化がなされていなかった。そこに「東海テレビの昼ドラ」という強烈な個性が入る。この時間帯に退屈を感じていた層には良い刺激になるかもしれない。
・顧客層の生活変化
昼ドラは全世界にあり、海外ではソープオペラと呼ばれ洗剤広告がスポンサーに着く女性向け、主婦層向けドラマである。しかし、顧客層である女性の社会進出が進み、専業主婦の人数が減り、フルタイム労働、パートタイム労働者が増ている。そのため、平日毎日同じ時間にドラマを見るという生活が難しくなってきた。
録画機器という方法もあるが、毎日となると録画を観る時間の確保の難しさ、そしてコアターゲット層である30〜40代女性の機械に対する苦手意識等も考えると、録画視聴にも期待が出来ない。
これが週に一回に変わることで安定して視聴する環境になる。土曜日の夜なので、次の日が休みのため、お弁当作りのための早起き等日々の生活環境にも影響されにくい。
・新規顧客開拓
2000年代、冬のソナタをきっかけに韓流ドラマが大量に輸入され流行った。内容はドロドロとした家族紛争もの、劇的な恋愛もの、オーバーなメリハリのある作品が韓流ドラマの特徴で昼ドラに通づるものがあった。冬のソナタの顧客層を期待して輸入した番組だったが、夕方に放送するものが多かったこともあり、中高生が学校から帰ってきて見て、次の日に学校で盛り上がるといった予想外な広がりを見せた。
韓流ドラマの例のように、コアターゲットではない層が観る事によって新規顧客開拓が期待できる。
以上のような利点が考えられる。
しかし、だからと言って成功するとは限らない。
ドラマという連続性のあるものは、一度忘れると続きを見るのが億劫になるという問題がある。特に東海テレビのドロドロが週1となると内容が濃厚で、1話で大きな展開があることも想定できる。再放送や、説明付きの告知や宣伝番組等色々な対処法が必要になるだろう。
しかし、現在フジテレビはドラマもバラエティもニュースもスポーツすら視聴率が落ちている。他の番組を見てもらえなくては、いくら告知をしても忘れられてしまう。
他の番組が観てもらえないという問題では、テレビの視聴は同じ局の番組を続けて見る傾向があるため、前の時間に放送する番組の視聴率の問題も出てくるだろう。
東海テレビの夜ドラということで、内容が他の局とは一線を画している。そのためどの顧客層をコアターゲットに据えるかをしっかりと決めなくてはいけない。つまり、東海テレビの夜ドラの前の番組からコアターゲットを揃え、コアターゲットの家族まで想定し番組を作る必要がある。
番組を楽しみに観るかどうかは別として、今後のフジテレビのマーケティングとして見ものである。
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