美味しいカフェラテ。伝えたいこの想い。《ショートショート》
声に出して言いたい。
「このカフェラテが大好きだー!!!」
僕はそれを、目の前にいる女性に向けて言った。
「え、えっと、何ですか?」
いや、目の前に女性が偶然居合わせただけだが、今飲んだカフェラテがあまりに美味しくで叫んでしまった。
「わぁ!ごめんなさい。」
目の前にいる女性は、くすくすと笑っている。
僕が手にしているカップを見て状況を汲んでくれた。
「カフェラテ好きなんですか?」
今飲んでいたカフェラテは、2ブロック先のコーヒースタンドで、最近出来た新しい店舗のものだ。
「はい。すぐそこのカフェラテなんですけどね、これめっちゃ美味しいんですよ!」
まだ新店だし、あまり知られていないだろう。
この美味しさを誰かに伝えたい。そういう衝動に駆られてしまった。
「あら、そうなんですか。美味しいんですね。」
女性は少し興味を持って聞いてくれているように見えた。これは良い所をもっと欲しい、そう思ってまくし立てるように続けた。
「お店のセンスを感じるんですよ。カップもオシャレだし、お店も清潔感があって。チェーン店ではないみたいで、このお店の店主さんはきっと素敵な方なんだと思います。会ってみたいなぁ。」
熱く語ってしまった。ついさっき初めて知った店なのに。
「それだけ褒めてもらえたら、店主さんもきっと嬉しいはずですよ。というかね、、、」
にこやかに答える女性は、近づいて来てこう続けた。
「私、あなたが飲んでるカフェラテのお店のオーナーなのよ。ありがとう。」
僕の顔は、過去一くらい紅潮していただろう。
「また飲みに来てね。」
彼女は、そう言って去っていった。
僕の手には、彼女がくれたカフェラテ無料券が3枚乗っていた。
顔が熱い。
END
T-Akagi
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