箱の中のディストピア《ショートショート》
窓から入ってくる光と空気は、ヒトを殺傷するのに十分過ぎるほど鋭く、全身を黒のマントのような布で覆ったその男を、今にもギザギザに切り刻もうとしていた。轟々と鳴っている風切り音が壁に打ち付けられていて、もうここから1ミリも動く事は出来なくなっている。
石造りの古い家屋は隙間が出来ていて、既に床は水浸し。そこに転がっている黒焦げになった物体は、床に広がる雨水を吸い込んでいるようだった。
それをただただ眺めるしかない。目を開けている時間も、徐々に少なくなっては来ている。まぶた