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【レッスン編】桜タンゴフェスティバル

前回は、美味しかった九州グルメや、大好きなShinji&Natsune先生、恩人ルシウス様や同じ地方の趣味友さん達との思い出ばかり書き本編まで書けなかったが、少しでも福岡の様子やフェスティバル中の過ごし方の参考になれば嬉しい。

今回はいよいよ、フェスティバルの核の一つになっているレッスンについて、触れたいと思う。

3つのレベルから選択

だいたいの時間はAll level(入門者から参加可能), Intermediate(初~中級) ,Advance (中~上級)全てのレッスンが一つずつ行われており、予約をした人は、自分が受けたいレベルのレッスンをどれでも選択できる。

当時どの先生も知らなかった私は
「細々ながら5年位はタンゴをやったんだから、全てadvance(中~上級)で食らいつこう!」
と意気込んで、Advance ばかり申し込んだ。

しかし実際ふたを開けてみると、経験者や上手な人でもAdvanceばかりを申し込んでない人もいたことを知れた。

私より経験も長く、ずっとタンゴ一本で踊って来られている人達でも、なぜかあまり一緒にならない。
後から聞いてみると、彼らはレッスンの内容(レッスンのテーマも、丁寧に書かれている)や好きな先生で、クラスを選んでいたという。そういう選び方もあるんだ、と学びになった。

対していつも同じだったのは、北京グループをはじめとする海外アジア勢!
周りでは常に中国語が聞こえてくるから、四日後には彼らや中国語にすごく親近感を感じるようになった(笑)。

また経験値の高い欧米人達とも、一緒になる確率が高かった。

「自分でレベルを選べるなんて、危険じゃない?」
WCSのようにレベルを細かく分けられているダンス界の人達は、びっくりするかもしれない。

でも、タンゴを踊る人達は冷静に自分を判断できる人が多いのか、
「この人がなぜここに?」
という人は、Advanceにも混じっていなかった。
初めのall level (入門以上)クラスにいた、びっくりするような例外な足運びをするような人達もAdvanceには来られていなかった。

事前に、いつも習っている先生にどこのレベルで受けられるか確認しておくのも、名案だと思う。
私も本当にadvanceでついて行けるのか先生達に聞き、先生達が
「大丈夫!頑張っておいで!」
と言ってくれたことで、安心して受講することが出来た。

レッスンの進行

レッスンはChristian and Nao先生以外は全て英語で、日本語の通訳は一切なし!
丁寧に通訳がつく日本キゾンバフェスティバルとは、違う点だ。
英語がわかる人が、タンゴ界では多いのかもしれない。

桜タンゴフェスティバルに初参加で英語が使えない方は、特に初日、
「日本のフェスティバルなのに、日本語訳がない......」
と、だいぶ衝撃を受けていた。
しかし日が経つごとに、徐々に踊りそのものによって理解を深めることに慣れたという。

そして当たり前だが、それぞれの先生によって特徴があった。

◯Julian and Natalia は、コロンビアという陽気な国の雰囲気がよく出た、明るく楽しいレッスンだった。

音楽性、そしてパウサ(一時停止)の表現がテーマだった時は、個人でもペアでも様々な音楽をかけて先生達と実践的に練習し、楽しみながら音を捉えていくことが出来た。
ミロンガ(パーティー)で即実践できるテーマをレッスン内容にしてくれていたのも、親しみやすく有り難かった。

◯ Los Totisのレッスンは、生徒をモデルにして進むことが多かった。
このモデルの決め方が、面白い!
靴を投げるのだ、毎回。
靴が差した人とその時組んでいるパートナーが、モデルになる。
モデル達は先生から優しく的確に指摘してもらえるから、ラッキーそのものだ。

モデルになれなかった人は、自分がクリアできていることだと少し退屈かもしれない。
グループレッスンだから、そこは仕方がないだろう。
私の場合は学べたことが、多かった。

でもやっぱり音楽に合わせて、次々とメンバーを交代してたくさんの人と順番に踊れた時間が、踊りながら学べて楽しかった。
最後にLos Totisが設けてくれるこの時間は、毎回とても楽しめた。

◯RodorigoとIndiraは、ソロ練習も入念に行った後、Rodorigoのおじ様秘伝?!のスパイラルシークエンスをペアで練習して行った。
先生達のお手本を見せてもらい、
「かっこいい、できそう!」
と思っても、実際組んでみたら、じわ〜っとターンするタイミングや胸の向け方など、課題があることを感じた。

たくさんの国際的な同レベルのリーダー達と練習を重ね、それが出来た時、そしてそれがミロンガ(パーティー)でも決まった時、私達は共に大いに喜び、ますます絆を深めることができた。

◯Jonatan & Laisaのレッスンは、ウォーミングアップの時はそこまで難しくなかったけれど、発展させて行くと一気にハードルが上がって行った。
彼らのレッスンは3回受けたが、1レッスンは楽しくクリアできたが、2レッスンはなかなか難しく、理解しきれているか半信半疑だったりする。私の場合この二人のレッスンは、絶対に復習しないと取得は無理だと思った。国際的なクラスメイト達も、帰ってグループで復習する!と意気込んでいた。

◯Christian & Naoは、唯一日本語がメインのレッスンで、レッスンのテーマだったワルツをより深く理解することができた。個人練習でのアドバイスの時間もしっかり取られていて、順番に丁寧にアドバイスして下さっていた。

日本語が分からない海外勢にはChristian が英語やスペイン語でフォローしてくれていた。

先生達のタンゴやミロンガのレッスンも受けたかったから、また東京にも行ってみたくなる!

◯Lucas & Paula も、ゴルガーダという技が難しめということもあってか、練習時間、その技をやるための一人の練習にも、じっくり時間をとってくれていた。

最終日の最終レッスンだったからか、大幅に延長してレッスン下さったのも感動だ。
身体の使い方がダイナミックで足の上げ方、回し方、足先の使い方、学ぶ所だらけだった。

パレハ(ペア)で参加する場合

「交替!」
と言われてもずっと同じペアで踊っている人達がいる。

彼らは普段からペアを組んで、一緒に練習しているパレハ(ペア)の可能性が高い。

「たくさんの人達と練習できるフェスティバルでも、ずっと同じ人と踊ること」については、意見が分かれるのでは、と思う。

私は、個人的にこれはとても勿体なく感じる。
世界中からすごいレベルのダンサーが集結しているのに、同じ地域でいつも練習出来る相手とだけ踊るのは、残念に思えた。

ただ反対に、
「すごいレッスンだからこそ、慣れた相手と技術を高めて、選手権などに備えたい」
と思う方も、いるようだ。

こういう価値観の違いを防ぐために、パレハ(ペアの相手)が同じフェスティバルに参加する場合、事前に自分の想い、希望は互いに伝えておくと円滑だろう。

私には幸い、恩人でありパレハ(ペア)のLucius様がいらっしゃる。
普段のレッスンはLucius様と固定で受講させて頂けているおかげで、少しずつ上達することができている。
ただ今回は互いのレベルアップのためにも、たくさんの人と練習をしようと提案すると、私の意見を尊重して下さった。
素晴らしいリーダーさんはどこまでも寛大で、尊敬の念は膨らむ一方だ!

こうして、いつものパレハ以外のたくさんのAdvanceのリーダーさん達もフォローしたことで、知れた発見も多かった。

普段、パレハと技と深めていけることは本当に有難いことだし、パレハで深めて行けることももちろん多い。
一方で自分自身のレベルアップとしては、同じ位のレベルの人同士で交代をして練習することも、色々なリードの仕方を知るうえでも大切だと思った。

「パレハとしか踊れないリーダー、フォロワー」にならないためには、パレハとはもちろん練習、復習を続けながらも、個人としても、いつもとは違った環境のフェスティバルに参加すること、同じ位のレベルのたくさんの人達とも積極的に練習してみることが、良い助けになると思う。

自由練習時間は積極的に

どのレッスンでも多かったのが、自由練習時間。
音楽をかけて、自由に練習するのだ。
この時、先生は参加者達の踊りをチェックして回りながら、的確で貴重な一言アドバイスをくれる。
ただ参加者が多いのと、とても積極的なアジア勢が多いから、アドバイスしてくれるかな、と踊っているだけだと、自分達に順番が回って来ないこともある。

初日から中国、香港、台湾人とペアになった時、練習をある程度したら"出来たよね、僕達!先生にチェックしてもらおう!"と、彼らは積極的に先生を探して自ら先生に声をかけ、チェックをお願いしていた。

彼らの「何がなんでもレッスン時間内に技を取得するぞ!!」
という、隠さない気合いと積極性。見習っていきたい。

先生達がなかなか自分達の所に来ない場合、自分から先生を探して
「合っていますか?見て下さい」
とお願いしていこう。

レッスンから出来る、絆

スペインでのキゾンバ、そしてズークフェスティバルでも、レッスンから出来る絆がとても尊いものに感じたが、それはここ桜タンゴフェスティバルでも生まれて行った。

音楽をかけての練習は、先生の積極的にアドバイスを受けると同時に、練習相手とミロンガ(パーティー)前、一足先に音楽に溶け込める貴重な時間でもある。

あるリーダーさんは音楽をかけての練習だったからか、課題以外のオマケを付けてきた。
彼のリードはマイルドで気持ちよく、思わず円を描く飾り足を付けると
「wow….!! Nice…!!(わぉ、いいね!!)」
と満面の笑みを向けて来た。

こういうリアクションが嬉しく、音楽が終わった後の会話が発展したりする。

「素敵な飾り足だね。君は、日本人?」
「ありがとう。うん、日本人だよ。あなたは?」
「僕は、中国の北京から来たよ!」
「そうなの?!私、中国語でこういう名前.......」
「この字と、この字?上手に発音するね!その発音、どこで習ったの?」

こういうちょっとした会話がきっかけで、例えばこの北京君には自由練習の時によく誘われ、練習を共に楽しんだ。
その練習には、ステップに加えて音楽に寄り添った感情が、互いに加えられるのだ。
音を通じて気持ちがピッタリと重なったこの北京君には、その夜のミロンガ(パーティー)から踊りに誘われた。

レッスンの練習の時から気持ちが通じあったリーダーさんの中には、互いの言語があまり通じない人も……!

中米から来たL君は、私の英語の質問に全く違う答えで返してくれることが多く、私もまた、彼の母国語のスペイン語はほとんど話せなかった。

会話ではなんだかコメディーのような展開になるのだが(書きたい位だが、タンゴに関係ないのでひとまず省略する.笑)、タンゴを踊っている時が、L君とは一番通じ合えたのだ。
圧倒的にコミカルな会話とは、比べ物にならないほどに。

そう。ミュージカリティーがとても素敵なリーダーさんとは、言語が通じなくてもタンゴで会話が出来ることを知った。

音楽をかけた自由練習で踊りを楽しみ、すでに、互いがミロンガ(パーティー)で踊りたいと思うーそして実際、パーティーで長時間(タンゴでいうと、たくさんのタンダを)踊り明かす。
これこそが、レッスンもパーティーもどちらも豪華に詰まっている、フェスティバルの大いなる魅力の一つだろう!

言語よりもタンゴで会話が出来たこのL君とも、全日全てのミロンガで踊り明かした。
「忘れられないタンゴ」がこのL君とも生み出せたことが、嬉しかった。

レッスンの雰囲気

これまでタンゴのある教室の本格的なレッスンやアジア選手権の会場で、サルサ、キゾンバ、ズークにはない、ツンとした感じや内向的な雰囲気をかもし出している人達が時々いらっしゃった。

「タンゴ独特の雰囲気なのかな。それだけ本気モードなんだろうけど、こういうの残念だな。フレンドリーな方が、ずっといい......」
と感じた。

しかし、この桜タンゴフェスティバルではAdvance(中~上級)クラスであっても、そのようなツンとした感じや内向的な空気はなく、すごくフレンドリーな方がほとんどだった。

地元福岡のダンサーさん達が、例え先生や超上級者でも、参加者と同じの目線で優しい雰囲気をかもし出しているのが、全体に伝染していたのかもしれない。
「一緒に出来るようになろう!上達しよう!」
という気持ちで溢れ、接してくれるリーダーさんが多くて、福岡メンバーさん達とは初日から会話が弾んだ。

休憩時間、レッスンからとても気持ちよく踊らせて下さった二人のリーダーさん達と地元の仲良しの趣味友、Jさんが喋っていたので、私も合流した。
喋っていると、一人のリーダーさんは鹿児島の方だった。
「お二人のリード、いきなり、とっても楽しく踊れました!鹿児島、レベル高いですね。二人とも鹿児島の方なんですか?」
「ちょっとちょっと、タンツちゃん!この方は央先生!福岡の有名な先生だよ(笑)」
「!!すみません!!先生でいらっしゃるんですね!」
「(笑)いやいや、生徒生徒! 実際鹿児島も、たまに行きますよ!」

こんな感じで先生方も、レッスンを参加者の目線でレッスン受けておられるのもとても素敵だなと思った。

他の福岡のリーダーさん達とも、互いの角度からの動画を送り合ったり、私のまだ知らない知識を熱心に教えてもらえたり、思い出に残るやり取りがあった。
素敵なコミュニティを作り上げている福岡タンゴ。
フェスティバル以外でも、ぜひとも遊びに行きたい!

最終日に向けての、絆の深まり

欧米のクラスメイトとは初日の木曜日に意気投合すると、金曜日には笑顔で手を振り合った。
土曜日にはハグで挨拶し、最終日の日曜は絆の深まりと名残惜しさからか、両頬にキスで挨拶された。

「これ、スペインのフェスティバルでも同じ展開だったなぁ……」
挨拶が日ごとに変わって行くのも、フェスティバルでレッスンもミロンガ(パーティー)もずっと共に過ごした、仲間ならではの展開だろう。

特に気持ちを通じ合わせ踊った人は、最後のレッスンを終えた時も熱いアブラッソ(ハグ)で感謝を伝えてくれ、また必ず世界で踊ろうと約束した。
私は環境の変化から、桜タンゴの頃より踊れる回数はめっきり減ってしまったが……人生、何がどうなって行くかなんて分からない。
再会が、今から楽しみである!

挨拶の仕方こそ違えど、日に日に深まる絆を感じて行けるのは、アジアや日本のクラスメイトでも同じだった。

特に最初、
「うわ……、気合いが入り過ぎていて怖いよ〜!」
と、抑揚の強い中国語も手伝って圧倒されていた、数人の中国リーダー勢。
しかし練習でペアになると、彼らは、仲間同士、激しい中国語で闘争的にディスカッションをしている時とはガラリと印象が変わった。
英語で話す彼らは穏やかで、とにかく優しい。

ある人は土曜日の練習でペアになった時、ふと
「君、昨日のミロンガでも人気者だったね!僕は君を踊りたいとずっと思ってた。でも、カベセオ(目線でダンスに誘うこと)が通じなかったよ……。今夜は君と、踊りたいなぁ!」
穏やかで優しい英語と、はにかんだ笑顔でそう言われた。
北京グループを率いているような威厳に満ちていた北京さんだったのに、こんな台詞をプレゼントされ、そのギャップにドキッとした。

その辺りからだろうか。
圧倒されていた気持ちが仲間意識に変わり、すごく温かい気持ちで中国人とも土曜、特に最終日、心を通じ合わせて練習を頑張れ、音をかけた練習でも踊りを楽しめた。

昔習ったという日本語も使いながら、ひたむきにいっぱい練習してくれた台湾さんにも心が温かくなったし、
「you will do it!!」
を合言葉に何度も誘われ、熱心に練習をリードしてくれた香港さんのガッツも、忘れないだろう。

ミロンガだけでも、もちろんダンスを通じての会話や絆が生まれる。
そしてレッスンは、パレハ(ペア)と実力を向上させたり、個人的に実力を向上することに集中している人もおられる。

私も、レッスンそのものでレベルの高い内容に食らいついて行くことが、もちろん楽しくてゾクゾクした。でも、同時にレッスンで深まるこうした絆、ミロンガとの相乗効果で生まれる総合的な絆もとても大切な時間だと感じる。

色々苦しい展開が続いても、時々でも踊ることを諦めたくない。
彼らと世界各地でまた再会できることを、今から楽しみにしている。

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