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『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』が生まれた理由。

こんにちわ、「T3」広報担当の岩田です。
本日は、『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』の創設者である、速水 惟広さんへのインタビュー記事を紹介させていただきます。

|プロフィール

速水 惟広 (はやみいひろ)
『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』:ファウンダー(創設者)
株式会社シー・エム・エス 取締役 / director

カリフォルニア州立大学サンマルコス校卒業。帰国後、株式会社シー・エム・エスにて雑誌の広告営業担当として勤務。「英語を活かし作家と携わる仕事がしたい」という想いから、某カメラメーカーにギャラリー運営案件を提案・受託。その経験を活かし、写真雑誌「PHaT PHOTO(ファットフォト)」編集長に。現在は『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』の企画運営の他に、写真を使った地域活性化企画等、「写真」というメディアを横断的に用いた様々な活動を行っている。

|インタビュー

― 「T3」を思い付いた経緯について教えてください。

 速水:「写真雑誌の編集長をしていた頃。北京で開催されていた国際写真祭に参加したんです。その際、中国の若い写真家たちが、ゲストとして来ていたニューヨークやロンドンのキュレーターに対して、臆せずに自分の写真を売り込んでいたのを観たのに刺激を受けました。英語なんてほとんど喋れないのに片言の英語で“自分の写真を観てくれ”と。当時、そういった場所が世界中にあって隣の中国にもあったのに、東京にはなかった事に危機感を感じ、フォトフェスティバルをやろう、と。少し大げさな言葉ですが“日本の写真文化の未来”を本気で考えるようになりました

― 「日本の写真文化の未来」とは具体的にどのような事ですか?

 速水:「元々日本には、独自の写真文化を育てた肥沃な土壌がありました。紙雑誌が主流だった時代、“写真雑誌”は写真家達にとって、発表の場、議論の場、評論の場、後進の育成、コミュニケーションなど日本の“写真“を支える豊かな土壌だったのです。ですが現在。紙媒体は次々とデジタルへと移行。写真雑誌も次々と休刊を余儀なくされている。広告業界などで活躍する商業写真家以外の作家たちの活躍の場をどう拡げれば良いのか…。日本には海外にも通用する素晴らしい写真家がたくさん存在します。私は、その橋渡しとなるような仕事がしたい。そういった想いからT3は生まれました

2017年度開催:上野公園

― 「T3(ティースリー)」という名称にはどのような意味があるのですか?

  速水:トロント大学経営大学院の教授であるリチャード・フロリダ氏の著書『クリエイティブ都市経済論』の中で提唱されている、経済成長の源泉である“3つのT理論“、T1(ハイテク)、T2(才能)、T3(寛容やアメニティ)にインスピレーションを受けています。写真祭は世界的に見ても”地域活性化“に大きく貢献をしています。例えば、フランスの“アルルフォトフェスティバル“は世界で最も歴史のある写真祭で、ゴッホ好きには知られる人口5万人程度の南仏の街ですが、現在は世界中の写真家たちが集まる街になっています。他にもスイスの“フェスティバル イマージュ ヴヴェイ“は、アルルよりも小さなスイスのヴヴェイという人口1.7万人の街が、最も革新的な写真の見せ方を行う街として、知られることになった。そして、我々が開催する“T3“も同様の可能性を秘めていると考えています」

2020年度開催:東京駅周辺

― 場所を「地方」ではなく「東京駅」の“ビジネスエリア”にしようと思ったのはなぜですか?

 速水:「国内外含め“屋外写真展”の開催自体は珍しくはありません。ですが、場所はどれも“地方エリア”なんです。観光資源の発掘や土地の規制についても地方が有利です。しかし、私は“都心”でやる事に面白さがあると思っています。東京は変わりゆく街です。数年後には全く違う風景が広がっているでしょう。すでに出来上がったものを元に戻すことはできませんが、そこにアーティストが介入することで、その土地が持つ歴史や文化的要素を顕在化できないか。街には、必ず使われていない“余白”が生まれます。工事中のビルの壁面といったわかりやすい空間もそうですが、それ以外にも様々な余白があります。そういった場所を作家達と一緒にハックする。そうすることで、その場所の使われ方、空間の意味に異なる解釈を与えていく。街と既に関わりのある人たちには新たな気づきを生み出し、それまで関わりのなかった新しい人たちを街に呼びこんでいく。それは「街を開いていく」ことです。その過程において、私たちは東京駅東側エリアの足元に眠る、この土地の歴史的文脈と現代を再接続できないかと考えています

2021年度開催:東京駅周辺

― 4回目となる今回。こだわったポイントを教えてください。

  速水:「過去の開催では、ビルの中で作品を見せるという事の難しさ、つまり美術館やギャラリーとは違う日常の文脈の中で作品を見せながら、気づいてもらうことの難しさと向き合ってきました。そのために、例えば高さ15メートルなどの巨大なスケールでの展示、あるいはテキストを使った展示を行ってきました。本年はそういったものに加え、より街の「日常空間の中に入り込む」展示や、作品そのものに興味を持ってもらえる「体験」など、様々な趣向を凝らした企画を準備しています」

― 例えば10年後、どんな「写真文化の未来」を描いていますか?

  速水:世界的にも有名なアートフェスティバルでは、そのイベントに参加するために海外に渡航する方も多いです。“T3”もそんなイベントに成長できればと思っています。“T3”が観たいから“東京”に行ってみようと海外の人が思えるようなイベントにしたい。都市を新たなメディアとし、次世代の写真文化を育むエコシステムを構築。アジアのハブとなるようなイベントを目指したいと考えています」

|あとがき

実は、こちらのインタビュー取材は、およそ2時間半にも及びました。
このnoteには書ききれないほどの熱い、熱い、想いを速水さんから受け取る事ができました。

私は、正直。
「アート写真」の楽しみ方に関してド素人だと思っています。
新卒から広告業界に従事してきたからこそ、写真に「答え」を求めてしまうのです。この気持ちを率直にぶつけてみました。

「T3を観た人にどんな風になって欲しいですか?」と。

速水さんは「疑問を持って考えて欲しい」と。答えてくださいました。
出逢った作品、全てを飲み込み、好きになる必要は全くない。
多くの作品の中から、心に残った1枚。
その写真に対して「疑問」を感じ、考えて欲しい。

私はこの言葉をいただいたとき、スッと肩から力が抜けたような気がしました。身構える必要はない。

「好きだ」
「気になる」
「なんでだろう」

素直に感じた1枚。
その作品との出会いを大切にすれば良いのだと思えました。

私は素人ですが、私なりの言葉で。
「アート写真」の素晴らしさ、楽しさを、皆さんにお届けできればと思っています。

4年目の開催となる今回。
どんな「疑問」と出逢えるのか。
今から、とても楽しみです。

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