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ロキア・トラオレ: Rokia Traoré "Beautiful Africa"

アフリカのマリ共和国の、ロキア・トラオレ、この素晴らしい女性ミュージシャンのことを知ったのは、3 年ほど前ではないか、と思う。1997年に本国で1998年にヨーロッパでデビュー作がリリースされた、というし、世界的に有名なミュージシャンなので、知っている人も多いかもしれない。

2021年1月の NPR の Tiny Desk (Home) Concert でライブ出演していて、すばらしくいい感じだったので、まずこれを選曲しよう。

ン・ゴニと呼ばれるマリの弦楽器とバラフォン、ドラムスにエレクトリックギターというシンプルな編成で、彼女の歌と声の魅力がたっぷりと堪能できる。

ン・ゴニは、ひょうたんや木で作られた細長くくびれた共鳴胴の表面にヤギなどの動物の皮を張ったギターのような楽器で、似た形の弦楽器はアフリカから中近東に広く見かけるように思う。他にコラなど、マリの民族音楽の伝統的な楽器を使いつつ、エレクトリックギターやベースのリフを中心にうまく現代風の楽曲に仕上げていると思う。

2011年のライブを視聴すると、彼女の歌とともに、彼の地の民族楽器の演奏や音色も聴けて、楽しめる。

1998年のアルバム、"Mouneissa"が明るくカラフルなジャケットで、この何年か、よく聴いている。ゆったりとした楽曲ばかりで、波のようなリズムに身を任せて身体をゆっくりと揺すりながら聞くといい。ギターと彼女の歌が前面に出て、弦楽器のアルペジオを中心にしたアコースティックな音作りで、民俗楽器の音色もたっぷり楽しめ、バックの女性コーラスとのユニゾン、あるいは掛け合いが、息もあっていていい感じだ。  

少しかすれた感じで、自由に上下にコントロールされる声がいい。2000年の "Wanita"も同様にシンプルで素朴な美しさがある。

2013年の "Beautiful Africa"は、もっとエレクトリックギターやベース・ドラムスなど現代西欧ポップスの色が前面に出た音作りになってくるが、女性コーラスやンゴニなどの音も彩をそえている。聴きなじんだリズムと雰囲気がベースになっていて、より味わい深いものになっていると思う。

多作ではなく、アルバムもシングルも新作はしばらく出ていないが、そろそろ出てくるかも、と期待している。

私は、たぶん、2016年のアルバム "Ne So"で初めて聴いたのだと思う。

音はさらに洗練されている感じで、マリの伝統的な音楽が絶妙なバランスでうまく現代のポップスとブレンドしていると思う。

ただ、全編、重ためのメッセージが詰まっているように感じる。ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」もカバーしているが、静かな迫力があり圧倒される。

言葉がわからず詩も理解しないまま、彼の地やアフリカの歴史と現状をよく知らないまま、私のような呑気な人間が単純に称賛するのは気が引ける。

それでも、こうして、素晴らしい音楽を聴くことがきっかけで、それぞれの国に興味を持ち、様々な問題を知り考え、ひょっとしたら誰か力のある人達が働きかけをしていく、そんなきっかけになるのではないかと思ったりする。


世界中の紛争が早く解決しますように。



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