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西アフリカのギターの響き:ウスマン・サッコとヤカレ・ジャバテ、アリ・ファルカ・トゥーレ

先週、ふとしたことで、アンゴラになかなか腕のいいギタリストがいるのを知った。カルロス・プライア・・発音、合っているだろうか。

YouTubeでも、それほど多くの楽曲が上がっていないのと、再生回数 400回とか 80回とか、これまで再生数1億越えや10億越えのスーパースターを紹介したので落差が大きすぎるかもしれないが、この人はなかなかいい感じだ。次の動画などサムネイルの2枚の国旗を見ただけで泣いて喜ぶ方がいるかもしれない。

アイバニーズのギターを弾き、民俗音楽色は感じないがストレートアヘッドで、とても上手くてなかなか聴かせる。最近だろうか、カナダのゴダンのギターも弾くらしく、Facebookのゴダンのオフィシャルで紹介されていた。これからの人だろう。注目していきたい(*1)。

さて、これまで何人かアフリカのギタリストを紹介してきたが(下方の関連 note 記事参照)、やはり、アフリカは広い。広すぎるし歴史もある。私の知っている範囲が狭すぎるので、まだまだたくさんの凄い人がいることは間違いない。

最初に西アフリカの音楽に触れたのは、確か、マリ共和国の Ousmane Sacko & Yakare Diabate " La Nuit Des Griots" (グリオ達との夕べ)というライブ盤の LP だった。

民俗楽器のコラを思わせる独特のフレーズのギター、バラフォン(木琴の一種)の素朴な音とゆったりしたリズム、ボーカルの掛け合いが新鮮でよく聴いた。それ以来あまり聴いていなかったのだが、こうして、デジタル音源で聴くことができるのは、うれしい限りだ。言葉はわからないけれども、身体をゆったりと揺らしながら、何時間でも聴いていられる。

グリオというのは、西アフリカの吟遊詩人・楽器演奏者で、それぞれの楽器ごとに世襲の「家」があるらしく、ジャバテ、サッコ、シソコ、などマリやセネガルを中心にした西アフリカ出身のミュージシャンは同じ苗字の人が多いのはそのためだ。

そのころ、他によく聴いたのはアリ・ファルカ・トゥーレだった。何の気なしに手にとって購入したLPの "The River" が素晴らしく、よく聴いた。

彼はグリオの出身ではないらしい。ニジェール川の中流域のトンブクトゥという街出身で1939年生まれだという。世界的に知られるようになったのは 1980年後半で私が知ったのもそのころだ。2006年に亡くなっているが、素晴らしいアルバムを何枚もリリースしている。

アメリカのブルースのギタリスト、スライドの神様ライ・クーダーとの共演盤 "Talking Timbuktu" はなかなかいい感じだ。このアルバムは 1995年にグラミーも受賞している。

同郷のコラ奏者のトゥマニ・ジャバテとの共演盤 2005年リリースの "In the Heart of the Moon" もすばらしい。トゥマニ・ジャバテは、名前からわかるように名門グリオのジャバテ家の出で、幅広いミュージシャンとの共演で世界的に知られている。

二人へのインタビューが YouTube にあがっていた。

"In the Heart of the Moon"のセッションは2回目のセッションもあって2006年に亡くなってからだが2010年にリリースされた。どちらも素晴らしいアルバムだ。

これらは地球上のすべての人に聴いてもらいたい。

先週、World Circuit レーベル (Home - World Circuit Records) の創始者 Nick Goldのインタビュー記事 (2019年, PAM (Pan African Music)) がタイムリーに Facebook に流れてきた。これは非常に興味深く読んだ。

ニック・ゴールドがアリを「発見」したときの経緯、海外のリスナーから自身の音楽が「ブルース」と言われることへのアリの思い、ブバカール・トラオレとの交流、マリの音楽への造詣の広さと深さ、ほとんどが first take だというレコーディングの様子、ライ・クーダーからのコンタクトと "Talking Timbuktu" のレコーディングのエピソード、興味ひかれた方はぜひ読んでみてほしい。

トゥマニ・ジャバテとの共演盤は、音に関しては、伝統的なコラとの共演ということもあってか、民俗音楽色は強いがどちらかというとピュアな感じでアクは少ない。2006年の "Savane" は、ずっとアーシーな感じで泥臭い雰囲気があってこちらもよい。こちらのほうを好む向きも多いかもしれない。

さて、このように聴いてきて、もう一度ウスマン・サッコとヤカレ・ジャバテの「グリオの夕べ」を聴きなおしてみると、アリ・ファルカ・トゥーレの音楽は、やはり西アフリカ・マリの音楽ということがよくわかる。

改めてこうして記事にしてみてよかったと思う。


■ 注記

(*1) 昨日、アンゴラの歌手やミュージシャン、誰か出てこないかな、と YouTubeで検索したら、次の女性シンガーがひっかかった。

Cesaria Evora (セザリア・エヴォラ)、私は知らなかったのだが、有名なカーボベルデの女性シンガーで同国の音楽であるモルナ(Wikipedia link Morna)の歌手ということだ。2003年にグラミー賞も受賞しているということで、これまで知らなかったのは大変に迂闊だった。
2004年のパリでのライブ 1時間30分近い動画が上がっていたので貼っておく。

すばらしい。これほどの人をこれまでまったく知らなかったのも迂闊であった。

(*2) ブバカール・トラオレ (Boubacar Traoré)

この人もマリの素晴らしいギタリストだ。別の機会にまた取り上げる予定だ。

ちなみに、この画像で構えているギターは日本の有名ギターブランドのタカミネ・ギターだ。アリ・ファルカ・トゥーレも愛用しているようで、ライブのビデオや写真で見ることができる。

高峰楽器製作所 - タカミネギター (takamineguitars.co.jp)

日本製だからどう、というわけでもないが、なんとなく嬉しいものだ。


■ 関連 note 記事

ニジェールのトゥアレグ族のギタリストといえば以前に記事にしたムドゥー・モクターだ。

ベナン共和国出身のリオネール・ルエケは、アリ・ファルカ・トゥーレやブバカール・トラオレとも、ムドゥー・モクターともまったく違うスタイルだが、最高に気に入っている。

ちなみにこの記事の注記で、西アフリカのコラ、マダガスカルのヴァリハ、モロッコから中東のウードと、中央アフリカのムビラについて簡単に紹介しておいた。

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