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アフリカの音が響く:リオネール・ルエケ

この10年ちょい、ぞっこんなのは、西アフリカ、ナイジェリアに接するベナン共和国出身のギタリスト、リオネール・ルエケ。ハービー・ハンコックのバックを務めたこの人のギターと音楽は一度聴いたら忘れられない。



2020年に、全面ハービー・ハンコックの曲を演奏したアルバム "HH" をリリースして、このところよく聴いている。

派手でメカニカルな超速長尺ソロがあるわけでない。キレキレの高速カッティングがあるわけでもなく、サステインの効いた泣きのビブラートがあるわけでもない。

しかし、Vocal Percussion のような、といったらちょっとアレだろうか、でも、Vocal Percussionを織り交ぜながらの、まるでVocal Percussionのようなパーカッシブなギターの演奏は、聴いているとじわじわと虜になることは間違いない。

西アフリカ方面の音楽が好きな人には馴染みの音かもしれない。しかし、コラ(*1)やムビラ(*2)などを想起させるフレージングやメロディを感じる他のアフリカ出身ギタリストとも違うように感じる。うまく説明できないのだけど。

有名になったのは、2010年リリースの"Mwaliko"だろうか、当時、よく聴いた。毎朝、1曲目の Ami O をかけて起きていたものだ。

ムビラのビビりのような歪とミュートの効いた音、そして、押しつけがましくないギターシンセの音も独特だ。

ライブの演奏をYouTubeでも、いろいろ見つけることができる。私はハービー・ハンコックの大ファンなので、そのあたりをよく視聴する。私の大好きな、ヘッドハンターズの名曲、カメレオン。ヴィニーカリウタの大人なドラムスと、タル・ウィルケンフェルドの若々しいベースのリズム・セクションも気に入っている。タル・ウィルケンフェルドは、ハービー・ハンコックと顔を合わせてはニコニコっとするのが、見ていて愛らしい。

この動画は、何度見ても飽きない。

さて、note に好きなミュージシャンをテーマに、先月から週一で投稿し始めていて、noteの「マガジン」機能を使ってまとめるようにしているわけだが、私がギターを弾くから、というのもあるのだが、どうしてもギタリストが多くなる。

ギターは世界中で入手でき、他の楽器と比べても各段に安いし、民族楽器で似たような楽器も広く分布しているせいか、どんな辺境の地でもどこかしら馴染みもあるからだろう、演奏者人口が非常に多いようだ。だから、世界中にすごいギタリストがたくさんいる。ギターは簡単だ。誰でも弦をひっぱたけば音が出る。

だからして、音も奏法もプレイヤーごとに独特でメチャメチャ幅が広い。

誰でも手にとることができ、どんなことをしても許される自由でアナーキー、しかもバンドの花形楽器でもあり、世界のスーパーヒーローにもなれる、そういう夢の楽器なのだ。


■注記

(*1) コラ

西アフリカのほうの楽器で、大きな丸い瓢箪に長い竿をたてて、弦をハープのように張った楽器。マリやシエラレオネや周辺、いいミュージシャンがたくさんいるし、昔はなかなか入手できなかったけど、今なら、Spotifyでも Appleでも、探せばたくさんの音源を聴ける。おススメは、と言われると、やはり西アフリカ出身の名ギタリストにしてレジェンドの、アリ・ファルカ・トゥーレと、コラのトゥマニ・ジャバテの共演のこちら。

それから、マダガスカルのヴァリハという楽器を弾くラジェリ、モロッコ出身のウード奏者 ドゥリス・エル・マラウミと、コラはバラケ・シサコの、"3MA (Madagascar, Maki, Maroc)"、こちらも愛聴盤だ。

バリハは竹の筒のまわりに弦を張った琴みたいな楽器で、マダガスカルの音楽は私はぞっこんなのだが、別の機会に譲ろう。

ウードは、ギターの先祖と言える楽器で、涙粒型でバックが寄木で膨らんでいる琵琶みたいな楽器だが、中東ではまだポピュラーに使われている。こちらも好きすぎるので、別の機会に譲る。

(*2) ムビラ

親指ピアノ。ジンバブエ、中央アフリカあたりでポピュラーな楽器だったと記憶している。木の四角い共鳴箱の上に、長さの異なる20本くらいか、複数の細長い金属の板を並べて配置し、両手で箱を持って、親指ではじいて音を出す。一度、見て聴くとわかるだろう。

カリンバとムビラの区別が私にはよくついていないのだが、カリンバも有名だろう。実はエレクトリック・カリンバというのもある。

面白い。


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