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マリア・ピア・デ・ヴィト: Maria Pia De Vito ”This Woman’s Work”

イタリアのジャズシンガー、マリア・ピア・デ・ヴィト (Maria Pia De Vito) の新しいアルバム "This Woman's Work" が素晴らしかった。

タイトルソングはアルバムの6曲目、Kate Bush の "This Woman's Walk"、私が好きな Kate Bush の "The Sensual World" の一曲だ。タイトルだけではピンとこなかったが、一聴してどこかで聴いたと感じたのだった。

アルバムの1曲目を飾るのはトニー・ウィリアムスの "There Comes a Time" 1971年の Tony Williams Life Time バンドのアルバム "Ego" の一曲だ。"EGo"はあまり聴かなかったが、この "There Comes a Time" はなんとなく憶えていた。Giacomo Ancillotto のリフから始まり、トランペットやバックコーラスも大胆なアレンジながら原曲の不安な雰囲気を保ちながら、マリア・ピア・デ・ヴィトの迫力ある歌が冴える。

さらに私の耳をひいたのはオーネット・コールマンの "Lonely Woman" だった。

"Lonely Woman"に歌詞がついているというのは、私としたことが、知らなかったのだが、フリーに演奏するバックの上に乗って歌い上げる。原曲よりぐっと重厚な演奏だが原曲の演奏の雰囲気をしっかりと残し、悪くない。

エルヴィス・コステロの "I Want to Vanish" や、フィオーナ・アップルの "Every Single Night" も耳をひく

どの曲も、縦横自在なギターを中心にトランペットやベースもそれぞれフリーな持ち味を出す、大胆なアレンジで元の楽曲が再構成されていて、引き込んで聴かせる。

アルバム全体としては、タイトルが示唆するように女性がテーマになっていて、たとえば "The Elephant in the Room"は、Kate Passという女性のベーシストが書いた曲だということで、アルテミス・オーケストラという女性ばかりのジャズバンドのデビューアルバムのタイトルソングだ。

男性ばかりのバンドの中で自分が一人きりの女性だったときに、まるで自分が "The elephant in the room" のようだったという経験を表現した曲だということだ。

ちなみに、” The Elephant in the Room" というのは慣用句だ。誰もが知っていて見過ごすことがない大きな問題でありながら、あまりに大きく明白であるがために誰も触れたがらない議論しない、そんな問題のことを言うらしい。

マリア・ピア・デ・ヴィトのことは、先週か先々週に初めて知った。

ポピュラーソングの、有名なミュージシャンの曲で、比較的マイナーだけどいい曲を取り上げて、大胆なアレンジでジャズに仕上げて歌う、なかなか骨のあるアルバムを出している。

一作前の 2020年の "Dreamers" では、ボブ・ディラン、ポール・サイモン、ジョニ・ミッチェルなどのポピュラー・ソングを歌っている。

"Pig Sheep and Wolves" "Questions for the Angels" はポール・サイモンの曲だが、あまり知られていない曲ではないか、と思う。"Chinese Cafe", "Carey"はジョニ・ミッチェルの曲だし、"Simple Twist of Fate" や "Times They Are A-Changing"は言わずと知れたボブ・ディランの曲だ。

リリカルなバックの演奏は、ピアノのジュリアン・オリヴァー・マッツァリエーロとEnzo Pietropaoli (b)、Alessandro Paternesi (ds)のトリオということだ。いずれも私には馴染みがないイタリアのミュージシャンのようだが要注目だ。

そういえば、彼女の声はどこかで聴いたことある馴染みのある声だと感じていたが、ジョニ・ミッチェルの声によく似ているのだった。

ジョニ・ミッチェルの曲ばかりカバーした 2007年のアルバム "So Right" がある。

"Ameria"から始まり、"So Right," "God Must Be a Boogie Man," "River," "Woodstock" と粒よりの名曲が、ジャズ・アルバムとして再構成されて、見事に歌われている。

まだ知ってから間もないこともあっていろいろ聴けていないのだが、2017年の "Core”が印象深かった。

こちらはブラジルの名曲を歌ったものだということだ。

イタリアが誇る歌姫、マリア・ピア・デ・ヴィトの最新作。
ブラジルの名曲をポルトガル語からナポリ方言を交えながら、作者の意図に沿いつつ再現されたサウダージ感溢れる名唱集。
ガブリエル・ミラバッシも参加!

★伊女性ヴォーカル Maria Pia De Vito / Core - VENTO AZUL RECORDS (shop-pro.jp)


2008年の "Dialektos"も、 2003年の"Tumulti," 1998年の "Triboh," 1995年のデビューアルバム "Nauplia" もいい。


これまで知らなかったのが迂闊ではあったが、素晴らしいミュージシャンだと思う。歌声、歌唱力もさることながら、幅広い選曲、とくに有名どころの曲でもちょっとマイナーな捻りがきいた選曲がいいし、それらの曲が大胆なアレンジで再構成されて新しい魅力を放っていると思う。

イタリアではとても有名なジャズ・ボーカリストのはずだ。


どんな人なのだろう、ますます興味がわいてくる。




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