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クリスマス・ソング:ハービー・ハンコック Herbie Hancock "The River"

一番好きなジャズ・ピアニストを1人挙げよ、と言われても、愛する素晴らしいミュージシャンばかり思い浮かび、いくら考えてみても決められないが、どうしてもと責めたてられ拷問されたら、ハービー・ハンコックと答えるだろう。

今朝、Facebookをチェックしていたら、ウエイン・ショーターの公式やリオネール・ルエケが、クリスマスソングとして、ハービーハンコックによるジョニ・ミッッチェルの "The River"をシェアしていた。

美しい。あまりに美しい。

この曲が収録されているアルバムは、"River: The Joni Letters,"  2007年のリリースで、ジョニ・ミッチェルをトリビュートしたものだ。もちろん、収録曲のほとんどの曲がジョニ・ミッチェルのカバーだ。

ハービー・ハンコックの曲を初めて訊いたのは、まだ高校生だったときにラジオでたまたまかかった "Rock It"だった。そのときは奇妙な曲だ、と思ったくらいだったのだが。

アルバムは "Future Shock." 最近の人はどうだろうか、「Futureといっても、あー30年前のFutureね、さすがに時代を感じさせる音と構成だなぁ」と思うだろうか。それとも、ひょっとしたら、かえって斬新に思えるかもしれない。ルーツに立ち返る経験は、そういう感覚もあるだろう。

私がハービー・ハンコックに本格的に惚れたのは、その数年後、マイルス・デイビスを聴き始めてからだ。1963年から1968年まで在籍し、ウエイン・ショーター (ts)、ロン・カーター (b)、トニー・ウイリアムス (ds) の、黄金のクインテットのピアノだった。マイルスのアルバムはどれも大好きだが、”ESP" など、このころの演奏が一番好きかもしれない。たとえば、その中でも私の一推し、 "Nefertiti" (ネフェルティティ)。

マイルスとウエイン・ショーターが執拗にテーマを繰り返し、リズムセクションとピアノが即興で曲を展開していく。テーマのメロディラインも印象的だが、通常の曲と表裏がひっくりかえったような面白さ、そして何よりも、曲の進行につれて、演奏者たちの気持ちが静かに高揚していく様子が生き生きと感じられる。リリカルな "Fall" もいいし、"Hand Jive", "Madness," "Riot," "Pinocchio" といい曲ばかりだ。


ハービーのピアノは、硬くゴツゴツした感じがする。音はクリアで明るめ、粒もはっきりしているけれど、たぶん、和声の使い方と微妙なタイミングから来るものと思う。誰でも入れるような耳慣れた音を入れずに、溶け込まないような音をぶつけてくる、そんな感じだろうか。

それでいて、余計な音は一切ないし、ことさら自身のオリジナリティを主張する感じはなく、おしつけがましいところは一切ない。うるさくない。じっと静かに立っているのに、存在感があってにこやかだ。

"Nefertiti"は、"River"でも演奏されている。"River"での演奏は、最初、え?何の曲だっけ?間違ったかしらん?と思わせる導入で新曲?としか思えない仕上がりだが、元の曲を解体して構成し直したうえでまったく新しい魅力を引き出した、という風情だろう、こちらの演奏も本当にすごい。

このあまりの自由さが、ハービーの魅力だ。

ソロ・アルバムも素晴らしい。有名な ”Maiden Voyage” 「処女航海」
もいいし、美しいジャケ写が気に入っている "Speak Like A Child"も素晴らしい。それこそ、擦り切れるほど聴いた。

"Maiden Voyage"は、1988年にリリースされたアルバムで"Perfect Machine"ヒップホップバージョンもあり、私はけっこう気に入ったのだが、「そんなのは自分の好きな「処女航海」とは違う」みたいに言う人もいて、当時、おおいに物議を醸した。要するに「自分の世界を壊さないでくれ」といわんばかりなのだが、楽しそうに自分の世界を自ら壊したり作り直したりする、そんな自由さがハービーの魅力なのだ。


ハービーのエレクトリックの楽曲は楽しくていい。元気が出る。たとえば、"Chameleon" 。1973年リリースの "Head Hunters" 収録のオリジナルもいいし、ライブも動画を探すといろいろ視聴できる。私のお気に入りは、ギターにリオネール・ルエケをバンドに迎えての2010年前後のライブだ。

"Head Hunters" は今も色褪せない名盤だ。"Watermelon Man"も収録されている。いつまでも聴いていられる。

ハービーのことは、いくら書いても書ききれない。超有名曲を数曲紹介するだけでも、このありさまだ。マイルス、ウエイン・ショーター、そしてトニー・ウイリアムスのことまで触れていたら五万字あっても足りないかもしれない。非常に中途半端だが、今日は時間切れ、ここまでにしておく。

そうそう、"River" オリジナルが YouTubeに上がっていた。

失恋の歌のようなので、クリスマス・ソングとして適当かどうかは微妙だが。美しい曲だと思う。

It's coming on Christmas
They're cutting down trees
They're putting up reindeer
And singing songs of joy and peace
I wish I had a river I could skate away on

Joni Mitchel "River"

ジョニ・ミッッチェルのこともそのうちに熱く語らねばなるまい。


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3. いずれも、耳もあまりよくないし、知識も少ない、語彙力もない、なので、基本YouTubeやSpotifyのリンク貼り付けと「好きだー」「愛している」というだけの記事ばかりになっているし、そうなっていく。

私本人が楽しく書いていることだけは間違いない、それだけは伝わるだろう。

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