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ケイト・ブッシュ:Kate Bush "The Sensual World"

世界の歌姫たち」という我ながらベタな名前だなと思うマガジンを作って、愛している女性シンガーばかり、愛している思いのたけを週1、火曜日に投稿している。24回目の今回は、メキシコ湾流に乗って大西洋を渡りヨーロッパに戻りイギリスから、ケイト・ブッシュ。

一言でいえば「狂気の歌姫」、もう少し言葉を使うならば、「美しい姿形と声を持って生まれて狂気の知性を備えた歌姫」という感じだろうか。

まずは、多くの人が一度は聴いたことがあるだろう "Wuthering Heights" 「嵐が丘」。不思議で妖しい雰囲気の曲調と細いが力強い高く高くのびる声、一度聴いたら忘れらない。そして、ビデオクリップを見て改めて思ったが、やっぱりこの人は目だ。対象をつかんで決して離さないその目力だ。

1978年、19歳でリリースしたデビューアルバム "The Kick Inside" (日本語タイトル「天使と小悪魔」)にそして、同年にリリースされたもう一枚 "Lionheart" も欠かせない。

1980年のアルバム "Never For Ever"からのヒット曲、"Babooshka" もいい。

強い知性は対象をつかんではなさない力が必要だ。そして、その力が強すぎるゆえ、ときには狂気もはらむ。とはいえ、このへんは序の口だ。

一番ぶっとんでしまったのは、1982年のアルバム "The Dreaming" ではないだろうか。ジャケ写の表情もトリップしてしまっている感がある。騒々しい一曲目の "Sat in Your Lap" は、音作りもビデオクリップも時代を感じる部分もあるが、一気に聴かせる。


それほど多作ではない。1978年にデビューでその年に2枚アルバムをリリースして、2011年までセルフカバーの1枚を含めても10枚ほどだ。

その中で、私が一番気に入っているのは、2005年の "Aeriel" だ。まず、美しいジャケ写が印象的だ。CD 2 枚組でトータル 1時間20分の大作だが静かで落ち着いていて曲が粒ぞろいだし全体でストーリーを感じさせる。洗練されていて全体の統一感のある幻想的な音作りもいい。トータル42分強の9曲から構成される Disc 2  "An Endless Sky Of Honey" は見事だと思う。27分前後から8分半ほどの "Nocturn" 、そして "Nocturn"のあと最後を締めくくる "Aerial" は迫力だ。

ケイト・ブッシュの曲には、どれもアイルランド、あるいはスコットランドだろうか、北海の海岸ぞいの寒い荒涼とした冬の大地を思わせる雰囲気があると思う。

曲で一番好きなのは "The Sensual World"だ。この曲をタイトルにする1990年のアルバムも目力のジャケ写が美しく、曲も粒ぞろいだが、プロモーションの関係なのかバラエティには富んでいるが、アルバムとしては若干統一感には欠ける印象を受ける。

"The Sensual World":直訳すれば「この官能的な世界」あるいは「このふしだらでみだらな世界」といった感じだろうか。ジェームス・ジョイスの「ユリシーズ」の登場人物モリーを題材にしているということだ。曲にかぶさる "mmmmm .… yes" は、ユリシーズの最後のフレーズ、"yes" から、そして、官能的だ。

このアルバムの2曲目の、"Love And Anger" はもっと普通にポップで、これも私の好きな一曲だ。ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアがエレクトリック・ギターで華を添える。

なんだかちょっとイライラした気がしながら、しかも元気がでないとき、そんなときに思い出したようにケイト・ブッシュを聴く。

その目は対象を掴んではなすことはない。美しさと知性を兼ね備えた狂気の歌姫なのだ。


■ 関連 note 記事

Aerialの2曲目は円周率を歌った "Pi" だ。一度別の記事で取り上げたことがある。

大好きな漫画家、「オヤジギャル」で一世を風靡した中尊寺ゆつこは、ケイト・ブッシュの日本でのファンクラブ会長を務めていたことでも知られている。



■ 関連 マガジン

1. 好きでよく聴いているミュージシャンを紹介。毎週木曜日に更新中。ギタリスト多め、たまに懐メロ。

2. 愛している女性シンガーに特化したのが、我ながらベタな名前だと思うが「世界の歌姫たち」。こちらはさらに愛している思いのたけのみの記事ばかり、週一、毎週火曜日に新しい記事を書いている。懐メロ多め。

今週、ヨーロッパに帰って来た。来週に原点のフランスに戻って世界を2周終えることになる。再来週に番外編を一本書いて、このシリーズは終わる予定だ。

3. いずれも、耳もあまりよくないし、知識も少ない、語彙力もない、なので、基本YouTubeやSpotifyのリンク貼り付けと「好きだー」「愛している」というだけの記事ばかりになっているし、そうなっていく。

「なんだ、超有名どころばかりじゃないか。やっぱり音楽のこと何もわかってないんじゃないの」という批判は甘んじて受ける。

私本人が楽しく書いていることだけは間違いない、それだけは伝わるだろう。

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