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ジプシーギターがつなぐスウェーデンとポルトガル:グスタフ・ランドグレン、リリ・アラウージョ Gustav Landgren, Lili Araujo "Passageiros"

ジプシー・ジャズというスタイルがある。1930年にジャンゴ・ラインハルトを始祖としたスタイルで、ヨーロッパのジプシーが演奏する音楽のスタイルで、ジャズを演奏する、そういった感じだろうか。

1980年から現代では、天上の神様の一人、ビレリ・ラグレーン(*1)が有名で、私もビレリ・ラグレーンから入門した。とはいえ、スタンダードなジャズもオリジナルも素晴らしいし、その超絶技巧と斬新なアイディア、器用にテクノロジーもこなして万人に聴きやすいので、最近の人たちだと、ジプシー・ギターのビレリ・ラグレーンなどとジャンルを区切っても、あまりピンとこないかもしれない。しかし、ジプシーバンドを率いてのアルバムやライブもたくさんあるし、探せばたっぷり楽しめる。例えば、1999年リリースのジャンゴ・ラインハルトへのトリビュートのライブ盤。

現代の若手で、ジプシー・ギターの流れを汲む凄腕ギタリストがアントワーヌ・ボワイエ(*2)だ。YouTubeで、たまたまおススメに上がって来たのが、ビレリ・ラグレーンへのトリビュート、"Waltz for Bireli (dedicated to Bireli Lagrene)" でとても素敵な鮮やかな演奏だ。

この人の演奏も聴き惚れる。

そして、最近、スウェーデンのギタリスト Gustav Landgren (グスタフ・ランドグレン) とのデュオでのスタジオライブが去年の秋から何本か動画がアップされている。次の一曲はジャンゴ・ラインハルトの "Blues en Mineur" だ。2人とも、ルックスも気取らずいなせだし、楽しそうな表情も見ていて楽しい。

もう一曲、やはりジャンゴの "Tears"を選曲。

北欧のジャズ・ミュージシャンもいい人がたくさんいるが、なかでもグスタフ・ランドグレンは、数年前からレーダーにひっかかっていて、それほど強い印象は残っていないものの、割合よく聴いているように思う。1980年生まれというしまだまだ若手、Spotifyでは、2009年のアルバムから1年に一枚以上のアルバムをコンスタントにリリースしていて精力的に活動している。

映画音楽をカバーした "At the Movies" は、なつかしさもあるおなじみの曲ばかりだが、押しつけがましさは一切なく、どの曲も軽快な仕上がりだ。

最新は、2020年リリース、サックスプレーヤーの Chris Cheek (クリス・チーク)がリーダーのジェローム・カーン ソング・ブックも同様に力が抜けていていい。朝の仕事のBGMにもってこいだ。

2018年リリースの"What's New?" オルガン・トリオでの演奏なんかも落ち着いたいい演奏で、ゆったりと聴いていられる。


さて、そんな彼のアルバムの中で、ひときわ感じがいいのが、2014年のブラジルの女性ボーカル、リリ・アラウージョとの共作、"Passageiros" だ。オフィシャルからプロモーションビデオがYouTubeにあがっていた。

ちょっといい感じの、さりげなくおしゃれなジャケ写だ。これも、しっとりとゆったりと身を任せて聴くといい。

リリ・アラウージョは、一時期ウイーンで活動していたということで、グスタフ・ランドグレンとそこで知り合いアルバムを制作したということだ。

迂闊なことに、これまで知らなかったのだが、1982年リオ・デジャネイロの生まれということで、アルバムの枚数こそそれほど多くはないようだが、活動歴もそこそこ長い。ヤギ声要素(*3)のある少し厚みのある素直な声の魅力的なシンガーだ。

2020年のアルバムはなかなか魅力的だ。

英語字幕つきのインタビューつきのプロモーション動画があった。

2008年のアルバムもいい。タイトル曲を選曲。

また、2021年のライブ配信の動画は、2時間たっぷり楽しめる。


思わず、ジプシー・ジャズ、ベルギー・フランスからスウェーデンに、そこからブラジルに繋がってしまった。面白いものだ。


■ 注記

(*1) ビレリ・ラグレーンについては、これまでも何度か書いている。

(*2) アントワーヌ・ボワイエについても、そこでもビレリ・ラグレーンに触れながら書いている。

(*3) あまり説明はいらないか、たとえばコロンビア出身のシャキーラ。

2010年のサッカーのワールドカップのテーマ "Waka Waka (This Time for Africa) [The Official 2010 FIFA World Cup (TM) Song]" を選曲。

私の好きなシャキーラのアルバムはこちら、2000年のMTV Unplugged.

ヤギのような声は売れる歌声の要素だ。

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