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【学び㊿冊目】ビジョナリー・カンパニー3

シリーズの3では、衰退していく会社の特徴を段階を追って分析するものでした。

本書によると企業の衰退は以下の5つの段階の順を追って、進みます。

1成功から来る傲慢
2規律無き販路拡大
3リスクと問題の否認
4一発逆転の追求
5屈服と凡庸な企業への転落、

第一段階、第二段階が発生するのは、主に事業のライフサイクルでいう成長期のフェーズに発生すると思います。
1は、少しの成功で、成長の要因は自分たちの戦略の優位性にあると信じ、学習意欲が低下し、新たなことをしなくなるという罠がです。

経営は、成功した時は、要因を外部に求め、失敗した時は、原因を自らに求めなければいけません。成功したら、その成功を否定しなければいけません。逆に、失敗したら責任を自らとらなければいけません。その部分を怠ることにより、起こるのが衰退への段階1です。

2では、適切な人材をバスに乗せ、不適切な人材をバスから降ろす(誰バス)ことを行わず、規律が社員に染み付かないまま、どんどん販路を拡大していき、官僚制が確立され、結果的に適切な人材までもが、バスを降りなければいけない状況になります。いわゆる、これはオフロードカーで道なき道を全速力で進むようなもので、属人的なモデルで短期的な成果しか得ることができません。まず道をしっかりと敷くことをすれば、自ずとバスに乗せるべき人材は決まってきます。それをやらないと会社は組織ではなく、どんどん狩猟場のようになってます。

3を経て、4の段階まで進むと、事業ライフサイクルでいう衰退期に既に入ってしまっている状態です。業績が非常に悪くなると、会社はドラスティックなことをしようとします。M&Aや、外部の経営者の将来、完全な新規事業への乗り出し、その結果として逆転の一手が失敗し、一気に衰退への道を進んでいくケースが本書の調査でも多く報告されています。

一倉定さんも言っていますが、原則として得意なこと以外やってはいけないのです。原則として得意な事業を捨てて、全くやったこともない、経営者が得意でない事業に入っていくのは、ナシなのです。今までやってきた花形の事業が一瞬にして業績悪化することは、滅多にありません。過ちを繰り返すことによって、じわじわと段階を追って、衰退していくのです。

1つの事故の裏には、29のヒヤッと事故があり、その裏に気づかないような小さな事故が300個あるのです。(ハインリッヒの定理) 原因は常に見えない所にあるので、見えるようになるまで気づきません。そして見える段階(衰退の4段階目)に入ってから手を打つのでは、基本的にはもう手遅れなのです。(とはいえ、規律を改めてしっかりと固めて、奇跡的に4段階目から再び這い上がった希望のケースも、本書では紹介されていましたが。)

個人であれば、帰納法的に、失敗してもそこから学び、次から失敗しなければいいというだけの話ではありますが、
会社の場合、「躓いてもすこから学べばいいや」ではすみません。社員全員が載っているバスが事故を起こしていいわけではありません。とはいえ、失敗の原因は可視化できないところにあるので、対策をとるのが難しいです。この矛盾をどのように解決すればいいのでしょうか。社長だけでなく、組織全員でマネジメントを勉強するしかないのです。社長だけでなく、社員全員です。経営の感覚を社員が分かっていないなければ、上手くいって波が来ているときも、その戦略感を組織として共有できず、危機の時も危機感を共有できません。経営、マネジメントは全員が学ばなければいけないのです。本は失敗のテンプレを学ぶことができる場所です。全員本を読み、ディスカッションをし、全員で経営を勉強する文化ができれば、衰退段階の4になるまで誰も気づかないということは、起き得ません。

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