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vol.050「視座が変われば課題が見つかること:箱から出る、逆マトリョーシカ構造」

何度か紹介しているMFJ(マインドファッションジャパン、政近準子代表)の"野外授業"として、講演会プロジェクトにサポート参加する機会をいただきました。
通算5回めの今回は「大隈塾リーダーシップ研修」。昨年は当日現地で、今年は前日までの準備(裏方)サポーターとしての参戦でした。

1.なぜファッションの学校で「プレゼン」なのか。

◆なぜ「プレゼン練習」なのか。

政近さんのnote記事に、参加者の方の感想が登場する。「ファッションだけじゃ格好悪いし説得力がない」。ほんとうにそのとおりです。ラッピングだけ立派でも肝心の中身、商品がショボければ仕方ない。それどころか、視覚情報の印象が良いぶん、話しはじめたあとの落差で、かえって大きくマイナスになる。今まで生きてきて何度となく目撃してるし、自分がやらかしたことだってあります。
裏返しで、プレゼンや知識・理論、言語化がよくても(=私は良く言えばこちらタイプ)、ファッション/装いが実践できていなければ、やはり説得力がない。
「理屈正論だけではダメ。人がついてこない」。この点は政近代表のほか、尊敬する師たちから何度か指摘・助言をもらっている、現在の強化研究課題です。

◆結果とプロセスの関係。

100回練習して1回本番。かつ、本番の結果がすべて。といってプロセスは意味が無いのではなく、振り返る。言い換えると、「評価」されるのは結果、「分析」するのはプロセス。この構造を理解せずに「結果がすべてですから!」と熱さ/精神論だけで語ったり自己陶酔している人間を見ると、心の底からイラっとします(毒)。「結果がすべて」とか、簡単に言うなよと。

そのプロセス、つまり「話す練習」は、時間をきちんと取って、「さあ、練習するぞ」でやってると、追いつかないし練習のハードルが上がる。第一、量が不足する。スキマ時間を活用する、濃い練習と薄い練習を使い分ける、といった工夫がいります。
この「初動にかかる摩擦係数を、自分でなるべく小さくする術(すべ)」を知ってるか知らないかで、大げさにいうと人生が変わる。

◆練習メニュー。

私がやってる方法を参考に挙げてみると、
(1)通勤中や歩いているときなど、ヒマさえあれば、口の中でセリフをぶつぶつ言う
(2)人前でしゃべる機会をなるべく逃がさない。挙手する。質問する
の二つです。
オンラインミーティングで「発言します」と挙手。公私ふくめてセミナー受講したら質疑タイムで必ず挙手。つまり、「練習の延べ時間をとにかく増やす」、「小さな本番をなるべく多く作る」。
野球でいえば(1)=キャッチボールやトスバッティングの単位動作練習、(2)=短縮版の紅白戦、のような感じ。
基礎練習は、正しい方法なら量より、実地お試しは、本番の試合と同じ形式であればあるほどいい、という二大原則が作用する。

◆「練習のコツ」のようなもの。

・練習する"セリフ"は何も大勢のまえでプレゼンする、といった「ザ・本番ひのき舞台」だけではなく、全体朝礼での一言、チームメンバーとの面談での重要な言い渡し、等、広範に対象とするといい。
・実際に計画されている場面ではなく、架空の想定「もしこんな緊迫した場面になったら」「顧客からorメンバーからこんな手厳しいことを言われたら」どう返すか、の「とっさの一言」を同じくシミュレーションして練習する。

要は、「いろいろな、あり得る日本語が口から出ていく実戦練習」をひたすらやる。これが結果的に、「原稿を作り込んだプレゼンで、計画外のことが起こったとき、対応できるか」に直結します。
言い換えると、このぐらいやって、ひっかかる/冗長になる/文章構造が論理的でないetc.なので、道はとほうもなく長い。もともと話があまり上手ではない/頭の中が整理されてない、という資質上のマイナススタートも要因だと思ってます。

◆「原稿」をつくれ。

「しゃべる練習」をする際、最初は「ミニ原稿」を用意することをおすすめします。全文を書き上げる必要はなく、「話すおもな項目を箇条書き」+「このフレーズだけは詰まるとカッコ悪い」を書き出すだけでも、ずいぶん違います。
ZoomなどWebのミーティングなら、目の前の見えないところに原稿を置いて参照しながらしゃべることもしやすい。仕事の打合せでカメラオフの場合ならなおさらそう。原稿を目の前に置いて読んでもいい。ただし自然に、はつらつハキハキと。
最初は紙に書いてでも、口から言葉が連続的に出る、という経験を積む(=脳に学習させるといえばいいのか)ことが有効です。

2.参加する「ポジション」と鍛える筋肉。

◆「支援で関わる」ということ。

現地でリアル参加する場合と、準備支援でだけ関わる場合とで、「貢献」する難易度は、とうぜん後者が高くなります。自分が直接ではなく他者に伝わらない限り何も起こらない。遠隔=ほぼ言語のみ(オンライン時の会話、オフラインの文章)がツールとなるからです。
1回めと2回めで前提条件の違う形で参戦したことは、負荷の形が変わる=違う筋肉を強制的に鍛えられる感覚で、個人としては非常にためになる、得難い経験となりました。

◆参加する「役得」。

生徒参加型のプロジェクトでは、開催日の1か月~ほど前から、何度かミーティングが行われます。Zoomオンラインで、国内の各所+海外メンバーも接続参加することもある(時差があるから大変。こちらは日本時間の夜、海外組は平日の夕方だったり早朝だったりします)。
ミーティングは、淡々と「当日やる作業の分担」を確認したりしない。学校の(つまり有償の)講義と同じか、より踏み込んだ内容で、政近代表による"授業"が織り込まれる。「参加した者だけの役得」だ。※リアルビジネスの場の経験・目撃だけでも価値があり、やろうと思えばお金の取れるプログラム化もできると思うのだが、そこは黙って、タダで毎回参加しています。

◆受ける"重圧"について。

支援の立場で新たな学びになる、はそのとおりなのだけど、一方で、受け取る重圧、プレッシャーは、当日参加と不参加では本質的に異なります。
「参加するつもりで臨みます!」「当事者意識を持って取り組みます」と100回宣言しても、埋まらない差がある。銃弾が飛び交う戦場で身の危険があるか、後方の作戦本部で補給や通信の部隊にいるか、ぐらいの違いがある。
その動かせない事実への気恥ずかしさ、内心では、ある種の安堵感が入り混じり、ときに思い出してもやもやしながら、ミーティングごとに装いを考え、参加組と同じショートプレゼンを練習し、互いに気づきをフィードバックしあう。脳の違う場所を使って、訓練しているのです。
この感覚の違いは、自覚的であり続けたいと思っています。

3.発見と再発見。

◆「混成チームで試合する」ということ。

プロジェクトに参加するメンバー(学校の生徒)は、職業・属性・住む地域、、、それぞれ異なります。「本業の仕事ではなく"ボランティア"で、指揮命令系統がない」とき、仕事観や温度感が非常に重要だし、もろにあらわになる。
「遠慮しない/気づいたら言う」「自分ができてなくても指摘する【めちゃくちゃ重要】」、という行動原理を早く浸透させられるかがカギです。
呼びかけに1次反応する(いいね!を押す、一言コメントする)、理解できてないと思ったら質問を投げる。本番から逆算したら、また当日の参加者(つまりお客様)から見たら、「ぎりぎりまで頑張ってみます」と「助けてほしいです」のとちらがベストなのか、チーム全体最適なのか、と考えることが求められます。

◆視座が変われば課題が見つかる。

ともかく、当日参加→支援参加、と立場視座が変われば、また別の課題が見つかる。新たなストレッサーの存在に気づく。人間が成長するのは環境/前提が変わったとき、ゲームが面白いのは制約条件があってこそだから、自分のためには良いことです。
学校の哲学「箱から出る」は、「箱から出て、次の箱に入る」行為。マトリョーシカの逆、外に出たと思ったらまた箱があった、みたいな感覚といえば伝わるでしょうか。
箱に入ることは、そもそも次の箱の存在に気づくことでもある。「有意識有能」の前段階、「有意識無能」にまずは立つことが、非常に重要だと思ってます。

◆盗めるものは盗むのだ。

もうひとつ、これも毎回のことだけど、政近さんの「何は指摘して厳然と臨み、何は自由裁量で任せるか(笑って終わらせるか)」が、とてつもなく勉強になる。閉鎖された生態系(代表例が会社、特にニッポン型"優良"企業)で過ごしていると得られないものだ。
これら、「無料体験版だろうとオプション打ち合わせだろうと内容の濃さ・熱さがかわらない」、「見逃さなさ/手抜きしないこと/飽きないこと」は、「一流のプロフェッショナル」に共通する要素だ。「まだ練習序盤だから」「本番は無事に終わったしね」という線引きがない。

ファッション装いも、プレゼンも、結局、「観る側へ提供するサービス」です。裏返せば「自分という商品のウィンドウ陳列方法」です。練習してない計画してないグダグダ、だと、観ている側が「この時間はいったいい何なのか」と不審、苦痛に思います。端的にいうと思いやりがない優しくない。
自分が観る側のときはすぐ気づくけど、ステージに上がると舞い上がったり許される持ち時間を勘違いしたりして、いろいろ迷走する。


生徒全員が参加できるわけではないプロジェクトに、複数回、立場・視座を変えて参加できることは、当たり前ではない貴重な機会を頂いていると受けとめています。自分ひとり、独力では作れないし立てない舞台。
ありがとうございます。引き続きおろしくお願いいたします。




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