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"insight"の読書感想文~経験や年月は自己認識力を下げるので注意~

insightを読んだ。自分自身を理解できない存在だと認識し、向き合い続けることがプロフェッショナルであると言うことを突きつけられる本。

現在の世界における成功にとって極めて重要な各種の力 ー 心の知能指数、共感力、影響力、説得力、コミュニケーション力、協調力など ー は全て自己認識がもとになっている。

とし、「自己認識は21世紀のメタスキルだ」という。ただし、

私たちは他人の認識不足はすぐ責めるが、自分に認識力が欠けているか自問することは極めて稀である。

というように、人は往往にして自分自身と向き合わず、理解も出来てない。

多くの人は「自己認識」を仏教に関するものと考えるが、ほぼ全ての宗教が昔から自己認識の重要性を指摘している。第一章では、自分(と他人)の目の中にある丸太についての聖書の逸話を紹介した孔子も、人を治めるには、まず己を納めよと解いている。ヒンドゥー教のウパニシャット哲学では「真の自分を追求することこそが知識だ」と言われている。ユダヤの教えでは己を知ることは「自己修養の必要条件」とされてきた。

そして、このように昔からあらゆる宗教が自己認識を取り上げているほど、本質的なことなのだろう。

[内的自己認識]
自分の価値観、情熱、野望、理想とする環境、行動や思考のパターン、リアクション、そして他者への影響に対する内的な理解のこと。
[外的自己認識]
外の視点から自分を理解すること。つまり周りが自分をどう見ているか知る力だ。

自己認識とは自分にあった決断をし、幸福度を上げる内的なものと、相手との信頼関係を築ける外的なものに分かれる(ちなみにこの二つにはなんの相関関係もないらしい。) 。この二つの両方を獲得していくことで、自分自身のパターンを理解し、状況をコントロールすることができるようになる。

権力が増すにつれて、評価の過大さも増していく。例えば管理職や現場のリーダーに比べて、重役たちの方が自分の共感力や順応性や、コーチング力や、協調性や(皮肉なことに)自己認識の能力を実際よりもはるかに大きく見積もっている。だが、さらにショッキングなのは、経験の少ないリーダーに比べて経験豊富なリーダーの方が自身の能力を過剰に見積もる傾向があるという点だ。同じように、年配のマネージャーの方が、若いマネージャーに比べて自分の能力を上司からの評価以上に見積もる傾向がある。

自分がどきっとしたのは、リーダー経験 / 年齢 / 年数はインサイトを下げるということだ。ここは"失敗の科学"を読んだ時も、経営者は認知的不協和を受け止められないという。研究では最も失敗から学ぶことができないのは、最も失うものが多いトップの人間だったということが書いてある。

では、役職がありチームを率いる身としては気をつけないといけない。では、見誤る原因はなんだろうか。

1) 認識の盲点
特定の状況における自分の能力に対する見解は、実際のパフォーマンスというより、自分自身や自分のスキルに対する思い込みに基づいて形成される。
2) 感情の盲点
判断する際に、人は理性ではなく感情が多分に影響する。
3) 行動の盲点
自分の行動を客観的に明確に見ることができない。

というこの三つのようだ。

ギリシャ神話のイカロスはいい例だ、イカロスは父のダイダロスが蝋と羽で作った翼でクレタ島から逃げ出そうと試みる。ダイダロスは高く飛びすぎても低く飛びすぎてもいけないと忠告する。低すぎると海水によって羽が重くなり、高すぎると太陽が蝋を溶かしてしまう。その忠告通り、蝋が溶けて、イカロスは空から落下し、命を落とした。

自分を見つめるにあたり、翼を広げる勇気を持つ必要はあるが、高く飛びすぎない賢さも持たなければならない。中庸であることが大事なのだ。では盲点を最小化するには、

1) 過去にした予測と実際の結果を比較検証する習慣を身につけること
2) 学び続けること
3) 自分の能力や行動に対するフィードバックを求める

を行なっていることが大事という。特にその中でも3は強烈だという。

自分の考えに反する予期せぬインサイトについて、自分なりの言葉を使って説明した。そうしたインサイトは「宝石だ」と彼は言う。(フォードの元CEOムラーリー)

自分や自分の組織に関してうまくいってない部分を耳にした時、一般的にはネガティブに捉えてしまうが、それを宝石と認識して取り組むべきなのだ。ただ、

「望ましくないメッセージについて沈黙を保つ(MUM効果*Mum about Undesirable Messages)」

と言うように、相手を動揺させ得る情報を持っている場合、人はもっとも負担の少ない道を選ぶ傾向にあること。つまり、単に何も言わないと言う選択をする傾向にある。なので、自分のまたは自分の組織の正しいインサイトを得るためには大きな労力を必要とする。正しいインサイトを得るためには3つのことが必要だ。

1)まず手本を示すリーダーがいない時、自己認識に向けた取り組みは中身がないだけではなく、有害なものにすらなり得る。

まずはリーダーが全身全霊をかけて向かう必要があり

2)次に真実を告げるにあたって心理的安全性がないとき、正直なフィードバックが得られる可能性は限りなくゼロに近くなる。

自らも弱さを認めてさらけ出したり、批判的なフィードバックを歓迎する姿勢を持ち、

3) そしてこの二つをクリアした上で、継続的な取り組みも必要になる。ームラーリーの BPRとよく似て、フィードバックのやりとりが一度きりのものでなく、チームの文化に組み込まれていかねばならない。

瞬間的な施策で終わらせないこと。

年も食ってきて、組織を作っていく身としては身の引き締まる内容でした。劣化しないように学び続けなければ。

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最後に、ワークの一部を添付

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