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"ジョブ理論"読書感想文

ジョブ理論を読んだ。「イノベーションのジレンマ」をかいた著者が、イノベーションを可能にする消費のメカニズムを解いた本。数字などの定量データでは到達できない、ユーザが置かれた"状況"を中心に思考を展開していく良書。

「どんな"ジョブ(用事、仕事)を片付けてくれ、あなたはそのプロダクトを"雇用"するのか?」。顧客が進歩を求めて苦労している点は何かを理解し、彼らの抱えるジョブ(求める進歩)を片付ける解決策とそれに付随する体験を構築することにある。

これがこの本の主題だ。成功するイノベーションは、顧客の成し遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされない念願を成就すると言う。この本ではミルクシェイクの売り上げを上げる実話が紹介されている。とある会社ではどうやったらミルクシェイクの売上が上がるかを考えていた。ユーザインタビューで"もっと濃くすればいいか、甘くすればいいのか、大きくすればいいのか"といったようなヒアリングをして改善を試みたが全く売り上げが伸びなかった。

「来店客の生活に起きたどんなジョブ(用事、仕事)が、彼らを店に向かわせ、ミルクシェイクを"雇用"させたのか」

こう考え直し、ユーザインタビューを仕切り直すと、とある父親の "朝の通勤時間で、腹持ちが良くて、なかなかなくならないものが欲しい"・"夕方に子供のご機嫌をとるためのものが欲しい"と言うジョブを解決していることがわかったようだ。前者は、ベーグルや栄養バー、フレッシュジュースなどが強豪になるし、後者は玩具屋やボール遊びなどが競合になる。こう言うことがわかっていれば、訴求内容が大きく変わる。

ジョブは日々でいかつの中で発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。

商品やサービスが世の中に出た後は、数字第一主義で意思決定をすることが多い。数字は嘘をつかないし、説明が簡単だからだ。だが、ジョブ理論は「状況」にフォーカスするので、文脈を想像しなければならないし、ユーザを観察しなければいけない。

ジョブは機能面だけで捉えることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらの方が機能面より強く作用する場合もある。

機能が劣ると言うわけではないが、顧客のジョブを完全に理解するには、ある特定の状況で顧客が成し遂げようとしている進歩を、機能的、社会的、感情的側面も含めて理解し、さらに顧客が引き換えにしてもいいと考えているものを理解しなければならないのである。

データは常に現実を抽象化したものであり、その根底には、現実世界のまとまりのない現象をどのように分類するかについての潜在的な仮説が存在する。

現実の乱雑な体験の中から意味を見出すにはデータを操作するのではなく、ストーリーを通じてジョブを明らかにするしかない。その上で、顧客のジョブを解決することに沿った新しい尺度に基づき、成功を測る必要があるのだ。

ジョブを形容詞や副詞で説明しているとしたら、それは有効なジョブではないと言うこと。ジョブを片付けるために顧客が必要としている「体験」を説明している可能性はあるが、この二つは異なるものだ。例えば、"便利な"は顧客が顧客が競合他社ではなくあなたのプロダクトを選ぶ理由ではあるかもしれないが、ジョブではない。

これは気をつけたい。"便利な"とか、"滑らか"とか、"簡単に"とか言うことばを使いがちだけど、これはジョブではない。

数字で全て片付けようとしたり、形容詞で耳障りの良い言葉を使ってしまいがちなので、気をつけたいと思う。


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