はじめてアメリカ音楽史を読んだ。西洋にアメリカ大陸が発見されて以降の白人と黒人が織りなす歴史の中でめまぐるしく動いてきた音楽の歴史がわかる本。
0.アメリカ音楽の起源
1.黒人と白人の間で分離する宗教音楽
2.娯楽産業としての音楽の産声
3.感情の爆発を表に出せるようになったゴスペル
4.近年生まれ変化を続けるジャズ
5.黒人が白人から市民権を得るソウルミュージック
6.ロックンロールとエルヴィスプレスリー
7.現代のポップ・ミュージック
8.まとめ
0.アメリカ音楽の起源 (1600年代)
アメリカ音楽の起源はいつなのか?それは、アメリカ大陸の歴史と同様にコロンブス以降のようで、歴史上はつい最近だ。
先住民たちが音楽そのものに求めたのは狩猟や農業の道具と同じだったので、生活に不可欠な実用的なものであり、「ハーモニーではなくコミュニケーション」、「個人のものではなく霊的なもの」、「音は旋律ではなく、威力や呪力だった」。その後、アメリカに渡ったヨーロッパ人と一緒に宗教音楽、バラッド、ヒム(賛美歌)やフォークソング(民謡)が上陸し、聖書の詩篇を無伴奏で歌唱されていたものが、徐々に「祈り」と「娯楽」の要素が入っていくことによって歴史が始まる。
このように、アメリカ音楽の起源は、「黒人の歴史」でもあるようだ。
1.黒人と白人の間で分離する宗教音楽 (1700年代)
とあるように、プランテーションで働かされる黒人奴隷は、雇い主ある白人から隠れて魂の解放を行う必要があった。
一人が祈りの言葉を叫ぶと、それが反復される。それを幾度かくり返ううちにメロディになる。というように、白人たちが歌っていた賛美歌に、黒人たちの祈りの言葉がミックスされて作られる。そうやってニグロ・スピリチュアルが生まれる。
その後ホワイトスピリチュアルはカントリー&ウエスタンなどに、ニグロ・スピリチュアルはゴスペルなどに変化していく土台となる。
2.娯楽産業としての音楽の産声 (1800年代)
都市ができることのよって、市場ができ、商業娯楽ができる。音楽の大衆化は商業の拡大のメカニズムと一緒だ。このころに音楽の父(クラシックでいうバッハ)と言われるフォスターが誕生する。
ミンストレルソングとは、ミンストレルショーに使われる音楽だ。*聞いている、いくつか今も耳にするメロディがあるのが興味深い。
このような相手(白人)の稚拙を逆手に取った、黒人たちの反転論理が娯楽産業を作る。
このように100年弱くらいの歴史ではあったが、ミュージカルは、ミンストレルショーがなければ生まれなかった。白人による歪んだ黒人像を形成する負の遺産を残したが、アメリカの大衆文化に大きな影響を与える。
3.感情の爆発を表に出せるようになったゴスペル (19世紀後半~)
やがて黒人牧師が誕生すると、彼らは宗教指導者になっていく。当時、知性を持った雄弁な黒人は牧師か教師を目指し、理想家であり、教育者だった。
このようにゴスペルが生まれていく。
これまでプランテーションの雇い主から隠れて「見えない教会」で楽しんでいたニグロ・スピリチュアルが「見える教会」へ出てきたのだ。これが爆発的な力を持つことは想像に難しくない。実際、ゴスペルが国内で芽吹くと、白人だけでなく黒人からも批判の声が上がった。手拍子をしたり、足を踏み均すことが品位に欠けると。ただ、それを吹き飛ばす勢いだったという。
意味合いも、「慰安」や「絶望」だったスピリチュアルやブルースとは、「解放」や「希望」になっていてそれまでとは大きく異なる音楽だった。
4.近年生まれ変化を続けるジャズ
20世紀になると、アメリカ音楽とヨーロッパ音楽が混ざった音楽が生まれ始める。
ジャズの歴史は随分と最近なことがわかる。
ジャズは"あまのじゃく"な反発で変化を続けている。
5.黒人が白人から市民権を得るソウルミュージック
ソウルは黒人であることを誇りに思う、プライドの意味を持つようになった。黒人であることを肯定して生きようとする音楽なのだ。
ソウルは神を称えなかった。これは大きな転換だったようだ。
ソウルの神様レイチャールズ。
極貧から這い上がり、黒光りするグルーヴで、ソウル・ミュージックの希望の星となったジェームズブラウン。
6.ロックンロールとエルヴィスプレスリー
財力を持ち始めた黒人を商業ターゲットとして、音楽が売り始められた流れの中でロックンロールはできたようだ。
と言うが、これが「楽しく騒ぐ」と言う意味を持つようになり、マーケティングコンセプトに変換され、音楽の一つとなった。
この本では特にエルヴィスプレスリーにフォーカスが当たる。
エルビスは人種問題を、音楽によって一つにした「ロックンロールの王様」だと言う。
という著名人の言葉も引用されていた。
7.現代のポップ・ミュージック
エルヴィスプレスリーが切り開いたように、人種の隔たりのない音楽ができてくる。
というように、音楽は特定の人に向けたものではなく、広く間口を広げたものとなる。この領域は、言わずと知れたキング・オブ・ポップのマイケルジャクソンのような音楽であろう。
8.まとめ
ただアメリカ音楽だけ聴いただけではわからない。政治や経済の理解から、白人や黒人文化、そして不幸な過去である歴史的経緯のはあくまで理解して初めてアメリカ音楽を捉えることができる。
歴史の中では短い歴史かもしれないが、その中での葛藤や変化は壮大なものであった。
*前回は西洋史、今回はアメリカ史です