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【WORKS】M HOUSE-3/増築の設計手法①

【プロジェクト概要】
築55年の壁式鉄筋コンクリート造住宅の増築と改修
用途:一戸建ての住宅
設計:鈴木隆介一級建築士事務所
竣工年:2023年
掲載:新建築住宅特集2023年5月号

01.何を増築するか

第三段目となる今回の記事では、M HOUSEの設計手法についてご説明していきます。

クライアントからの要望を整理すると、住居に必要な面積は約130㎡(約40坪)でした。これに対し既存棟の床面積は約105㎡なので、25㎡分を増築する必要があります。
「何を増築するか」を考えたとき、「既存の構造形式」がひとつのポイントとなりました。
ポイントの説明の前に、コンクリート造の構造形式の種類は大きく分けて2種類あります。

①ラーメン構造
ラーメン構造とは、柱や梁などのフレームが構造体となっている鉄筋コンクリート造です。部屋を仕切っている間仕切り壁は構造体ではないため、間取りの変更などの自由度が高いという特徴があります。
コンクリート造の住宅にお住まいの方で、部屋の壁に柱型の出っ張りがある場合は、ラーメン構造です。

②壁式構造
壁式構造とは、柱や梁が無く「壁面全体」が構造体となっている鉄筋コンクリート造です。ラーメン構造とは異なり、部屋を仕切っている間仕切り壁も構造体となります。そのため、間取りの変更などの自由度が低くなります。

内装解体後の既存棟。構造体であるコンクリートの壁で囲まれている。

既存棟の構造形式は「②壁式構造」でした。
お風呂やキッチンなどの水回り設備は、間仕切り壁の変更に融通が利かないと更新しにくい(設備を大きくしにくい)ため、水回り設備が入るダイニングキッチン棟(16m2)洗面浴室棟(9m2)の2棟、計25m2を増築し、リビングや個室などの設備が軽い(照明、コンセント、エアコン程度)部屋を既存棟内におさめることにしました。

赤色が増築部


02.庭(外構)をつくるように増築を計画する

既存棟の大きさ(床面積105m2)と比較して増築棟はとても小さい(DK棟16m2,浴室棟9m2)ので、単純な小屋的に増築をしても、この家の住環境に与える影響は少なく、単純に床面積を付加しただけの場所になってしまうことは想定できました。

壁式鉄筋コンクリート造の既存棟の内部はコンクリートの壁で6畳ほどのマス目状に細かく仕切られていて、平面的にも断面的にも繋がりは感じられず閉塞的な空間でした。
増築をすることが、既存棟のなかの閉塞性を改善するきっかけに繋げることができるようにしたいと考え、増築を「単純な増築小屋を建てる」のではなく「庭(外構)をつくるように増築部分を計画する」ように考えていきました。

(左)一般的な増築。(右)外構をつくるような増築のイメージ。図下側が南。


既存棟の中に入るリビング・個室は全て南に面して配置されています。増築ダイニングキッチン棟は既存棟の南側に増築されるため、南面の庭(外構)をつくるように増築部分を考えていくことで、既存棟内の部屋にも良い影響を与えることができると考えました。

増築のイメージ。(上)断面(下)平面。図下側が南。


【WORKS】MHOUSEの記事第三弾は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
次回も引き続き
・増築の設計手法②
について説明予定です。
どうぞよろしくお願いいたします。

※過去記事はこちら↓


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