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日本の「プログラミング教育」の黎明

 2年前(2020年)、小学校でのプログラミング教育(「プログラム学習」はスキナーが考案した学習法であってプログラミングとは無関係)が必修となった。
 それ以前は、中学校の実技教科「技術・家庭科」で行われていた。「技術・家庭科」は、古くは「職業・家庭科」といい、男子のみ履修する「技術」系列で生産技術を教えていた。たとえば、「木材加工」領域では、「製図」領域で学んだ製図板とT定規の製図からスタートし、ほぞ接合という職人技を教えていた。ところが、現在は、履修時間の削減と、「男女雇用機会均等法」(1985年制定、1986年施行)の余波を受けての男女共学化から生活技術に変わり、「材料と加工に関する技術」領域では、日曜大工(D.I.Y.)を教えている。

■「技術・家庭科」の「技術」系列の変遷

1958年
(男女別学。週3時間) 「職業・家庭科」から「技術・家庭科」に。
設計・製図、木材加工、金属加工、栽培、機械、電気、総合実習
1969年(男女別学。週3時間)
製図、木材加工、金属加工、機械、電気、栽培、総合実習
1977年(男女共修。週2時間)
木材加工、金属加工、機械、電気、栽培
1989年(男女共学。週2時間)
木材加工、金属加工、電気、機械、栽培、情報基礎
1998年
技術とものづくり、情報とコンピュータ
2008年
材料加工に関する技術、エネルギー変換に関する技術、生物育成に関する技術、情報に関する技術

自由七科(The Seven Liberal Arts)は普遍でも、「技術」は時代の波を受ける。

 今後は「読み・書き・算盤」から「読み・書き・電算」(「コンピュータ」は「電子計算機」と訳された)の時代に変わるとして、プログラミング教育が導入されたのは1989年の「情報基礎」(「情報リテラシー」の意で、パソコン各部の名称に始まり、プログラミングや情報の取り扱い方まで中学3年生が選択必修(1年生は「木材加工」領域、2年生は「電気」領域が必修))である。文部省(現・文部科学省)内では「技術科の教諭は馬鹿だから、プログラミング教育は数学に導入しよう」と考えていたが、現場の数学教諭から「教科書を教えるだけで手一杯。プログラミング教育を導入するなら学習内容を減らすか、授業時間を増やして欲しい」と反発され、技術科に組み込まれたという。

 プログラミング教育の場合、最も重要なのは、コンピュータ言語の選択であるが、教科書には「Bakademo Ahodemo Sikkariwakaru Ii Computergengo」と言われたBASIC(ベーシック。beginners' all-purpose symbolic instruction code)が載せられていた。しかし、BASICは行番号がある「手続き型プログラミング言語」で、アルゴリズムを頭で考えてからコンピュータに命令するわけで、構造化BASICでなければ、「試行錯誤しながら最適な解答を探す」という現在のプログラミング教育の目的は到底達せられない。当時、日本語が使え、試行錯誤に適した「構造型プログラミング言語」といえば、「日本語版LOGO(ロゴ)」しかなかった。(国家プロジェクトでTRON(トロン)が開発されたが、諸外国から「日本語でプログラミングされたら、わが国は日本への参入は厳しくなる。日本はガラパゴス化するぞ」と脅されて頓挫した。)LOGOはMITのパパート教授が開発したプログラミング言語で、開発当時はディスプレイに図形の表示が出来なかったので、タートルと呼ばれるロボットを動かしていた。LOGOという名称は、「はじめにLogosありき」の「Logos」を子供に人気の「LEGO(レゴ)」ブロックに対応させたもので、LEGOをパソコンで動かすLOGO-LEGO(コンピュータ制御)は、技術・家庭科らしいが、「日本語版LOGO」は、findout(福武書店、ベネッセ)にしろ、LOGO Writer(ロゴジャパン)にしろ1本数万円で、スクールパックでも高価であり、さらにLOGO-LEGOは高価なので、実践していたのは、静岡大学教育学部技術課程の亀山教授と、亀山ゼミの袴田先生など少数かと。
・袴田先生『ロゴで取り組む情報基礎』(ロジカ)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsei/12/4/12_KJ00002151940/_pdf

※「はじめにLogosありき」:世界初の『聖書』は当時の世界語であるギリシャ語で書かれました。logosは、pathos(感情、感性)の対義語で、「論理、知性」だと思うのですが、『英訳聖書』ではword、『和訳聖書』では言葉となっています。思えば、ユダヤ教の天地創造神・YHVH(ヤハウェ、ヤーベ、エホバ)にしろ、神道の天地創造神・天之御中主神にしろ、声は聞こえるが姿は見えないわけで、それをlogosと言うか、隠身(かみ)と言うか。
※「ヨハネ福音書」
https://www.suomikyoukai.org/?p=13571

 なお、小学校のプログラミング教育で用いられるコンピュータ言語は、Scratch財団がMITと共同開発した「ビジュアルプログラミング言語」のScratch(スクラッチ)である。(Scratchという名称は、DJがレコードを手でこするスクラッチングに由来する。)


『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』
「プログラミングできたら人生変わっちゃう!?の巻」

初回放送日: 2022年11月11日(金) 午後11:15-午後11:30 放送

大注目!プログラミングを俳優・町田啓太が超速解説!国の未来を左右する必須の知識?プログラミング的思考を学ぶと人生激変?難しいことが漫画やCGで楽しく分かっちゃう 漫画家イエナガ(町田啓太)が編集者(橋本マナミ)へ「プログラミング」をテーマに新作を売り込む。スマホやパソコンを自在に操るプログラミング。その言語は爆発的に増え2500種類以上!AIが自動で書く?ノーコード?驚きの連続。さらに世界の長者番付に元プログラマーがズラリの秘密。カギはプログラミング的思考?それとも…。深く知れば賢くなってあなたが新たな未来をつくれるかも!ワクワクな世界を15分で超速解説。


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