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選手の主体性の引き出し方

●何のための主体性?

「この社員は仕事が受け身なんだよね。。」

「あのメンバーは主体性が全くないです。。」

というお声を仕事をさせて頂く中で多くの経営者や組織者の方からご相談を頂きます。これはスポーツ現場でも同じで、多くの指導者やコーチにとっていかに選手の主体性を引き出せるか頭を悩ませる事が多いのではないでしょうか?わたし自身も頭を悩ませるその一人でした。


主体性を引き出していく上でまず大切になってくるのがその目的です。

つまり、

「何のために主体性を引き出したいのでしょうか?」

という事です。

「そりゃ~目標達成することだよ。。」とか、「それは、、チームが勝つことだよ。。」と答える方が多いかと思います。
もう一つ質問の仕方を変えると、

「誰のために主体性を引き出したいのでしょうか?」

という質問にも置き換えられます。

その問いの答えが、答えられない。もしくは少しでも心の中に、「自分自身の杵柄のため、、」と思い描いてしまう指導者やコーチは主体性は引き出す事は難しいかと思います。私自身も以前はそうでした。。。

●「コーチ」の役割とは

現在ではコーチという言葉は一般化しており、指導者という意味合いで使われている事が多いかと思いますが、「コーチ」の語源を知っていますでしょうか?

実は、コーチの語源は「馬車」です。

ブランドの「コーチ」のロゴを見るとイメージがつきやすいかもしれません。

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コーチングとは、それが転じて「その人が望む場所へ送り届けてあげること」という意味になります。

これがコーチングの目的になります。

そしてこのブランドのロゴでいう、コーチは「運転手」の役割になり、選手は「乗客」という構図になります。

1スポーツ部会


つまり、コーチがはじめにしなければならない事は、「乗客の行き先を聞く」という事になります。

逆にここでもし馬車の運転手(コーチ)が、乗客(選手)に行き先を聞かないで突然自分の行きたい場所に走ってしまうとなると身勝手な馬車で誰も乗りたくなくなってしまいます。

それだけではなく、現在は以下のような指導者も見られます。

2スポーツ部会

つまり、選手の行き先をまったく聞かず、OBや後援会、学校の理事長、親企業といった自分より立場が上の人間の意向を聞き、それを選手にぶつけている指導者です。これでは主体性を引き出すどころはコーチとして失格です。

これはあくまでも例え話ですが、このような状況で指導をしている指導者はスポーツ場面には本当に多くみられます。

「何のために主体性を引き出したいのでしょうか?」

「誰のために主体性を引き出したいのでしょうか?」

●主体性の源は「願望」

ではコーチの役割を定義したうえで、いかに主体性を引き出せば良いのでしょうか?

その鍵は選手の「願望」にあります。

先にも「乗客の行き先を聞く」という話をしましたか、コーチは選手に対して何を成し遂げたいのか?どんな選手になりたいのか?という選手の願望を聴きだす事が大事になります。

これは行動のメカニズムを解明した心理学である「選択理論心理学」が土台になっています。

選択理論によると人の動機付けの源は5つの基本的な欲求であり、それを一つ以上満たすイメージ写真を「上質世界」(≒「願望」)とよんでいます。そして人はその上質世界(願望)を求めて行動をしています。

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大事な事は「運転手」である指導者やコーチは「乗客」である選手1人ひとりの「上質世界」(願望)を引き出し、それを実現するために効果的な情報提供をし、そのイメージ写真を強くする事が鍵になるのです。

昨年ご引退された大学アメリカンフットボールの名将である、鳥内監督は新チーム発足後に4年生全員と面談し「どうやってチームに貢献すんねん」「どんな男になんねん」などと問いかけ、その内容を録音し、部員同士で共有する仕組みをつくっています。

これさまさに選手1人ひとりの願望を引き出し、コミットを取り付け、効果的な情報を提供していく典型的な「選択理論心理学」を基にしたリードマネジメントだと感じます。

リードマネジメントとは、ビジネスの場面で選択理論を応用したマネジメントの事を言います。 従来のボスマネジメントは、上司が部下の達成すべき成果を決め、部下に指示を与えて動かすものです。これに対し、リードマネジメントでは上司が率先して模範を示し、部下の自主性を伸ばします。

「でも選手の願望を聞いたら、出来れば楽をしたい、とか、休みたいとか、プライベートも充実したいという的違いの願望が出てきそう、、、」
そう感じでしまう方もいらっしゃると思います。
私は結構それでも大丈夫だと思います!
指導者、コーチに聞いてもらったという事実が信頼関係につながると私は思います。

また、これは指導者としてのリードマネジメントの技術次第ですが、「出来れば楽をしたい」という表面的な願望が出てきたとしても「なぜそう感じたのか」というように願望を掘り下げていくと必ず選手の芯の願望に到達するかと思います。

●チームづくりで大切な事は「バス×タクシー」

しかし「選手1人ひとりの願望を考慮していたら、そもそもチームがバラバラになってしまう。。」
もしくは「意識が低い選手に合わせてしまうとチームが弱くなる」と懸念してしまう指導者もいらっしゃるのではないでしょうか?


確かに1人ひとりの願望に対して効果的な情報提供しながら指導者をしていく事は大事ですが、組織全体というのも目的というものがあります。

会社でいうとなぜこの会社があるのかという企業理念、そしてどこを目指しているのかという企業ビジョンがあるようにスポーツチームでも同様にそのチームが大切にしている価値観や目指すべき方向性があるかと思います。
つまりチーム全体としては行き先が決まっている事が多いのです。

だからこそ主体性を引き出す上で指導者は逆説的ではありますが、選手に対してチーム全体の行き先を伝えていく力も必要になるのです。

つまり、選手の願望を聞き出して導く=タクシーだとしたらチームの行き先を伝えて乗客を募集する=バスの2つの要素があるのです。

●まとめ

まとめると選手の主体性を引き出すには
①選手の願望を引き出す

②願望実現に対して効果的な情報提供をする

③チームが目指している方向性が選手の願望実現に対してどう紐付けされているかを伝え、選手のイメージ写真(願望)を強くする

というのが私は大切なのではないかと感じております。

理論上では分かるけど、現場はそうは甘くなく、一筋縄でいかないところもたくさんあり、私もまだまだトレーニング中です。。。是非スポーツ指導やチームづくりにご興味のある方は一緒に学んで情報交換出来たら嬉しいです。


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