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アタッシェケースに惹かれてきた半生

 個人的な思い出を書き連ねていく前に、最初に確認しておくが、「アタッシュケース」ではなく、「アタッシェケース」が本来正しい表現なのをご存知だろうか。
 フランス語も英語もアタッシェであり、アタッシュは単に日本における慣用的表現に過ぎない。アタッシェとは、大使館職員のことであり、彼が用いていた書類カバンをそう呼ぶようになったのが語源。
 さて、アタッシェケースといえば、悪の組織が金銭の取引に用いたり、拳銃をしまっていたり、あるいは映画の中で金融マンが用いていたりと、既に我々――特に日本――の社会では実際に使用されることがあまり多くない印象がある。
 僕自身が初めてその名を冠するカバンを手に触れ、使ってみたのは、小学校低学年の時だったと思う。アニメキャラがプリントされた、UFOキャッチャーの景品だったかと。何かの拍子にカバンが壊れ、既に手元にはもう無いので在りし日のオモチャよろしく、思い出の中にしかその形は留めていない。
 それからしばらくして、僕にアタッシェの魅力を感じさせたのは、『名探偵コナン』「空飛ぶ密室 工藤新一最初の事件」(原作21巻)。
 別に作中の中では、特になんということは無いのだが、容疑者の一人である外国人がアタッシェケースを使っていることが描かれている。持ち物検査で中身も紹介されるのだが、まさに映画でみたことのあるような品々。新聞と本とetc.
 コナンもフィクションではあるものの、その現実味のある世界を読んだ僕は、おかしなことだが、「アタッシェケースを使っているのは映画の中のキャラだけじゃないんだ」と感慨深くなる。

 映画『マイ・インターン』では、ロバート・デニーロ演じる男性が、クラシックは不滅だという信念のもと、アタッシェケースを使用している。
 まさしくその通りで、僕の中ではクラシカルな装いの中で、唯一、未だに残っているモノこそがアタッシェケースだと思っている。
 それよりも遡ってクラシカルな装いというと、もはやステッキやマント、シルクハットといった具合に、今再び復活させて用いるとなると、なかなか厳しいものが挙がってくる。そうではなく、やや使用人口は減少しているものの、クラシックとして現役でもあるアイテムのひとつが、アタッシェなのである。

 普段使いのカバンを少量サイズのものにしたことにより、多くの書類などを要する場合、旧来のビジネスバッグなどをスーツの際は用いる。スーツ好きとしては、やはりリュックサックを選んではならない。型崩れに直結する上に、フォーマルとカジュアルの濫用だから。
 けれども、時にはアタッシェケースを持ち出すのも一興であろうと思い、まずはアルミのものを買ってみた。使用感などが抜群であれば、いずれは革製の高価なモノを選んだりして、クラシックは不滅だと周囲にうそぶく将来も悪くないだろう。

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