100年の孤独/放哉に想う〈Vol.19〉 病を得て時を知る
写真の米アンソニア社製の時計は100年間、時を刻み続けています。1900年前後につくられたといいますから、放哉が生きていた時代、ひょっとして同社製の時計をどこかで見ていたかもしれません。
人は病を得て時を知る、ということをこの句から感じます。無限の時の流れのなかで、ゼンマイを巻けば時計の針が限られた時間だけ動くように、人もまた限られた生命をどう生きるか――。その一端をうかがわせるような文章が『尾崎放哉 随筆・書簡』(放哉文庫 春陽堂)のなかにあります。それは明治39年、放哉21歳のとき思いを寄せていた沢 芳衛に宛てた手紙です。文中で放哉は、まわりの学生を痛烈に批判しつつ、いかに志を高く持ち得て生きるべきかについて述べています。
後の放哉とはちょっと一致しない感もなくもないのですが、若き放哉の煩悶は自由律俳句へとカタチを変え、生き続けたのだと思います。
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