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うまいと話題のナツジカとは!?


イラストレーション:小倉隆典

自分で料理したシカのなかでは一番のうまさでした!

「『ナツジカ』食べてみませんか? 国産ジビエ認証の施設で解体したものなので、安心してお召し上がりいただけると思いますよ」
 
8 月半ばのある日、鳥取県在住のハンター・山本暁子さんから嬉しいお知らせをいただいた。さらに、

「ナツジカについて説明しておくと、シカが一番おいしい時期は若芽をたくさん食べる夏の時期です。そのなかでも、3、4 歳以上のオスのシカ肉を『ナツジカ』と呼んでいます。ナツジカの赤身にはうま味があり、お尻部分にはイノシシやエゾジカのように脂肪がつくんですよ!」

連絡から間を置かず、山本さんからチルドの骨付きモモ肉が届いた。気温が低い冬ならまだしも、連日30℃を超える酷暑の日本の夏では止め刺しから内臓出し・剝皮までを迅速に行わなければならないだろう。

届いた骨付きモモ肉
送られてきたときはちょうどよい熟成具合。
尻に近い所には脂肪がたっぷり。
脱骨は捕獲直後ではなく、死後硬直解硬後に行うと、軟らかい肉が得られるという。
山本さんによると、「ジビエコーディネーター曰く、『ナツジカ』という言葉を広めたのは、鳥取県若桜町の『わかさ29工房(じびえあん)』の方」とのこと

「止め刺しから施設搬入までの時間は一般的に2 時間以内が原則ですが、ナツジカは気温が高い夏なのでもっと短いと思います。解体所には冷蔵車で途中まできて引き取ってもらっていることもあるようです」

止め刺し直後から腐敗が始まるので、完全な放血や素早い内臓出しに加えて、いかに体温を早く下げられるかもおいしい肉にするために重要で、冷蔵車を稼働することによってクリアすることができるのだろう。
 
私(編集部スズキ)がジビエ料理店で食べたシカ肉をのぞいて、自分で料理したシカ肉のなかで『ナツジカ』はダントツの一番だった。夏が旬というのは聞いていたが、とにかくうま味があって食べやすいのだ。

つくってみた料理は写真のとおりなのだが、食べやすい部位はステーキや焼き肉に、脛の部分はひき肉にしてハンバーグ、端肉はしぐれ煮にしてうどんにのせた。これまではジビエでうまいのは圧倒的にイノシシ肉でしょ!と思っていたが、ナツジカを食べて以来は、クセがなくて脂っぽくないシカ肉のほうを好きになってしまった。

飼育されている牛や豚や鶏の肉には基本的に旬はない。いつでも安定した味を楽しめる半面、季節を感じることはない。自然に生きる動物や魚には旬があって、出回ることで季節の到来を体感し、四季折々の味を楽しむことができる。夏と冬のシカでも違うだろうし、もちろん個体差も楽しめる。それを体感できるのは、みずから捕獲できるハンターならでは。それに夏に捕獲できるのは有害駆除に従事しているハンターだけ。有害に携わっているみなさんも機会があればぜひ、次シーズンにナツジカを試してみてください。ハンターではない方も、ナツジカを提供するお店にぜひ足を運んでみてください。

※当記事は『狩猟生活』2022VOL.12「うまいと話題のナツジカとは!?」の一部内容を修正して転載しています。

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