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風呂上がり

さっき風呂入りながらさ、鏡を観てたんだけど、自分の目頭を切開したら、少し表情が変わるかな、と思ったんだよね。

同僚はタバコのカートリッジを交換しながら、そんなことを何気なく話す。

仕事帰り、月イチくらいのペースでこの銭湯に通い、缶ビールを飲み、タバコを吸い、解散するようになった。同僚とは2歳差で、中途入社だったものの入社するタイミングが一緒だったから、自然と仲良くなった。
同世代の社員は他にも何人かいるが、彼とだけ、気が合った。

けどさ、俺らの歳になって整形とかしても、あんま意味ないんじゃないの?

同僚がタバコのカートリッジを交換しているのに反応するかのように、俺のタバコも、先についているLEDが点滅し始めた。タバコのカートリッジを交換するように、という指示だ。
だいたいいつも一緒に、同じようなペースでタバコを吸うから、交換時期もだいたい似てくる。
そんなことを考えながら、俺は新しいタバコの封を切った。

35を過ぎると脂が乗ってくる、みたいな幻想は嘘だ。

俺たちは38になり、お互い独身で、ここ数年はこれと言って浮足立つような話がなく、仕事に忙殺され、一日が、一ヶ月が、そして一年が終わっていく。一瞬で、35からの3年が過ぎたように思う。何も変わっていない。というより、だんだん身体が錆びついてきたように感じる。メンテナンスを一切していないんだから、ガタついてくるのは当然だよな、と自分の中にいるもうひとりの自分に、諦めるように言う。

いやー、正直、休みの日も大してやることとかなくて、昼間から飲んだりすんじゃん。でさ、午後、3時くらいから眠くなって寝て、起きたら夜9時で、あっという間に土曜日が終わり、日曜日も似たような感じでさ。なんていうの、刺激が足りない?から、ちょっと整形とか、いいんじゃないかと思って。

俺も同じような生活だなぁ。けど整形はさすがに、、、と受け流そうとした時に見た彼の表情は割と本気で、

俺には彼が整形をすることに反対をする権利なんて無いから、

まぁ、お前がやりたいと思うんならやってみたらいいんじゃん、

と受け流しの角度を変え、その話題は宙に浮き、喫煙所にある大型の換気扇に吸い込まれて消えた。

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