見出し画像

ファーストラブ | 島本理生 | ☆☆☆☆

人の奥底って計り知れなくてさ、そしてそれを言葉にするのってものすごく難しいじゃん。今、私が考えていることはどんな言葉を使ったら、表現できるのか。

そういう系のことを、島本理生さんの小説を読むたびに感じる気がします。

私もnoteで、自分の気持ちを適切な言葉を使って綴りたいと常々感じていますけど、うまくできません。
たぶんそれは、私が混乱して自分の気持ちを整理できていなからで、語彙力的にはあるだろうから、きちんと時間をかけて整理して、適切な言葉を見つけることができれば、同じような感度の文章が書けるのかもしれません。いや、嘘、言い過ぎた。そんな簡単な話じゃないですね。

父親を殺してしまった女子、その背景には複雑な出来事がたくさん潜んでいて、それをゆっくりと紐解きながら、女子の心をはっきりとさせていく主人公。

会話って、心の奥底を探るために重要なツールですけど、登場人物たちが使う言葉はとても丁寧で、作品に対する情熱の込め方がうかがい知れます。

このひとの好きなところは、会話への入り方が独特なところです。違和感がなく、人の行動と共に会話が成り立っているから、スッと入っているなぁ、と読むたびに感じます。

けど、けど、って言うのもアレですけど、夫、ちょっと出来すぎな気がするよなぁ。都合の良い夫感が強かったです。そしてあまり子供がいる感じがしない家庭だなぁと思いました。現実味が薄かったというか。家庭の色なんてそれぞれですから、私が持つ先入観にそぐわなかったってだけでしょうけど。

主人公が培ってきた背景も暗かったなぁ。親との確執ってさ、ホント救いようがないよね。私は比較的(誰と比較してんだ)親には恵まれたかも、と思う反面、それは「親が自分にとって人生の先生と勝手に教え込まれてきて、そして私が、親の引いてきたレールに乗って生きてきている」からであるから、親=正しいものという風に思い込んでいるところがあるかもしれないよなぁ。この、殺人を犯してしまった女子のように。親がいいって言うから、自分もそれは良いものとして捉えてしまう、みたいな。デッサンのモデルになったということ、裸の男性と、自分は服を着てはいるけど密着すること、そしてそれは母は見ないフリをすること、更に言うと母は父に従って生きていること、みたいなものが、イコール正しいこととして認識し、その価値観に従って生きている、けどだんだん成長していって「あれ、おかしくね?」って気づいた時にはすでに遅く、時を昔に戻すことはできない、みたいな。

価値観とか、家族観とか、固定観念とか、分からなくなりました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?