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きみはポラリス | 三浦しをん | ☆☆☆

着眼点の広さと深さだよなこの人、と読むたびにその辺を考えてしまいます。

ラテラルとロジカル

いくつかの短編から作られているこの本は、様々な視点があることを教えてくれました。作った人が、一人の女性ということを考えると、ほんと、三浦しをんという人はいろいろな人になることができてすごいよなと思ってしまいます。

水平思考でいろんな立場の人を着想し、垂直思考でその人たちが恋に関する物語を紡いでいく様は、いろんな布を縫い合わせていくパッチワークを彷彿とさせました。普通の、女性視点での男性との恋というのが、果たして普通なのか、その普通ってなんだよ、っていう私の好きな話題への展開もできますが、今回はそこは置いておきますが、

まぁ、飼い猫が抱く飼い主への 恋心っていうのはさ、なんか、できそうな気がするじゃん。
私としては、三浦しをんがすごいと思ったのは、性別を超越してるところですよね。ゲイと一言で表すだけだと薄っぺらい、ただの性的指向のひとつですが、その、本人たちが抱く(であろう)葛藤、自分は普通じゃないのかな、あれ、俺、女性よりも近くにいる男のコイツのことが好きなんじゃないか、みたいなものに 気づくところとか、その、気持ちがゆっくりと動いていく様を、言葉というツールを使って表現するのは、いつも同じことを言っている気がしますが、この人のすごさなんじゃないかと思うところです。

発想だよね。着眼点というか。
彼がどんな職業に就いているか分からないとか、出張が多くなった夫を若干ながら怪しむ主婦、そこに登場する第三者とか、そしてその第三者との、とか、

なんかあれだよな、言葉ってすごいよな。

星3つの理由

短編だからです。私、長編の方が好きだったのが良く分かりました。このくらいの掌編だと、ものすごく物足りなく感じてしまうんですね。
その辺が良くわかりました。

この中で、長編でやってほしいものを挙げるとすれば、だいたい全部なんですけど、男性が男性をのやつ/本当は兄弟だったやつ/夫が不倫してたやつかなぁ。  印象の強い作品という意味で挙げたのかもしれません。

恋ってさ、人類が抱く一つのテーマでもあるし、世界中で語り継がれているジャンルだし、それって相手の気持ちが分からないから、自分なりに解釈して、相手の気持ちを引っ張りたいとか、相手の 行動が自分の思い通りじゃなくて哀しくなってしまうとか、それって全て「相手と一緒にいたい、本当はもっと近づきたい」の裏返しであるはずだから、それが、自分の価値観として作りあげられているわけでしょうけど、それが、他の人はどうなんだろう、と知りたくなった時、三浦しをんを手にするのは、私としては正解だと思います。

長編読みたい。

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