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火花 | 又吉直樹 | ☆☆☆☆

話題になった本の感想文を書くのに、少し抵抗を感じています。
なぜなら、話題になったということで、多くの人がいろいろな感想を持っただろうから、自分が読書感想文という体でも、意見を言うのがおこがましいと思ったからです。

そう考えると、まるで徳永のような気分だな、と思いました。

全体を通して徳永は自分の気持ちを、神谷さんという対象と照らし合わせながら内省し見つめ続けているように見えました。
それは自分を客観的に見て磨きたいのか、それともただ自分を観察したいだけなのか分かりませんが、いつだって自分は不器用で、それを直したいのに実際は直そうともせず、ただ時間だけが過ぎていって、それに焦り続けているような雰囲気を感じていました。

物語自体は芥川賞作品と言うこともありパキッと読みやすいボリュームでしたが、上でも書いた通り内省する部分が一部抽象的なところがあり、それがこの作品の良さの一つですが、考えさせられるようなところが多かったですね。はっとさせられるところと言うか。

私に置き換えてみると、いつもくすぶり続けているようなnoteばっかり書いているので、徳永が抱く思いは他人事とは思えませんでした。いやむしろ俺だろこれ、みたいな。本当はもっと自由に表現したい、けどその術が分からない、からとりあえず今まで培った腕でなんとかやっていく、けどそれ以上のものは勉強していないから手が届かない。手を伸ばそうともしない。

そして神谷さんという天才の存在。

彼は天才なんでしょうけど、世間から外れているところがあるのでイマイチはまっておらず、徳永はそれをもどかしく感じているように見えました。ホントだったらもっと売れるのに。それはただの願望でしかなく、そして神谷さんも徳永と同様に、不器用なんだろうな、と。

不器用は時として価値のあるものになったりするよね。
それが笑いを取ることだってあるから。
それが周りから助けてもらえるきっかけになるから。
だけどそこにいつまで経ってもぶら下がってたらダメだよな、と思いつつも、それを打破するための明確な行動に移せない。そこがものすごく狂おしかったな。私も同様な気分を良く抱くので、共感する度合いが強いからこそ、ものすごく狂おしかった。

又吉さん、良いね。別のも読もう。

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