夏の裁断 | 島本理生 | ☆☆☆☆
ナラタージュの主人公とキャラがかぶっちゃって。
帯には、主人公が立ち直って、まで書いてありましたが、私の目にはそこまで立ち直った感じはしなかったなぁ。
島本理生さんは、男性に依存する女性目線が得意なのかなぁ、私にはそういう風に見えます。まだ多くの作品を読んでいる立場ではないのですが、そんな風に感じていて、そして、そんな女性特有の気持ちの揺れ動きがめちゃくちゃ具体的ですごいよなぁ。汗をかく、という一つの生理現象にしたって額からなのか、背中からなのか、それを書くだけでも文章に対する印象がガラッと変わるよな、とかさ。
鎌倉で自炊してる時の気怠さ。暑さ。暗がりという輝度。
柴田さんと会っている瞬間。だんだんと深まっていく酔い。意識。もたれ掛かる時の重さ。タクシーに入った時に感じる空気。
猪俣くんが遊びに来た時の騒がしさ。重なり合う時の熱気。交わす言葉。
思いつく限り書いてみましたが、これらのシーンを言葉で表現し、それを読者がきちんとイメージできたら、それが作家のセンスなのだと私は思っています。
あまり、ジェンダーで分けるべき話ではないですが、私は男だからか、そんな目線ってすぐには思い浮かばないんですよね。そりゃそうか、と思っちゃいけないんでしょうけど、こういうところって意識してトレーニングすると培うことができるのかもしれないよな。そんなスキルが欲しいと思ってる。
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