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ブロカントのお話

「ブロカント」って?


響きからしてオシャレ感がある。

そう、欧州で長年愛され大切に使われ続ける古道具のこと。
フランス語かな?たぶん。

どうしてフランス語ってこんなに素敵な響きのある言語なんだろう?トレビアン。

その中でもやはり菓子作りに使われてきたものに惹かれる。
若い頃から雑誌で見たり、パティスリーに飾られている古い型に憧れていた。
向こうに行けたら絶対に買おうと。

26歳の時、ようやくベルギーで働くことになった。

ベルギーの首都ブリュッセルで毎週末に開かれる大きな蚤の市があり、どうやらチョコレート型専門の店があるらしいんだけど、不定期でいつ出店しているかは分からなかった。
当時、パソコンもテレビもスマホも持ってなかったから、情報は人から聞くのみ(通うしかねーか…)。

蚤の市が開かれるサブロン広場(老舗のヴィタメールや、新鋭のピエールマルコリーニがあった)に何度か通ったある日、

「あっ!あったー‼︎

ついに見つけた!(よっしゃ、買うでー‼︎)
大阪のおばちゃんばりの勢いで店に近づく。

「こいつは買うな」

と店のおじさんに目をつけられたであろう、満面の笑みで大きな本を開き、

「このチョコレート型はサンニコラっていって、サンタクロースの起源になったものだよ。ほら、ここに載っているだろう。なかなか手に入らないんだぞ。」

まだユーロ表記に慣れていないのもあって

「これ下さい‼︎即答。
(はい、お買い上げ〜)。

他の型よりも高かった。
12,000円くらいしたかな。(屋根裏暮らしのアジア人が何買ってんの…)
でもめちゃくちゃ嬉しかった。決して綺麗ではなく、へこみや傷もあるけどかっこいい‼︎
部屋に飾って時々眺めてはニヤニヤしていた。

それからも住んでいた街のゲントや、隣町のブルージュ、またフランスに出かけた時に見つけてはちまちまと買い集めた。
愛くるしい動物型や、街の名前が刻まれた船型など、またチョコレート型だけじゃなくて、銅鍋やバヴァロワ型、ゴーフルの焼型なんかも買い集めた。


そのどれもがヨーロッパでの長い歴史を感じさせる、素敵な味わいのあるものばかりだった。

ヨーロッパの人は古い型でも機能的であれば普段から使う。
働いていたベルギーの「ダム」のシェフ、ピットさんもやはりそう。
使い込まれて味のある古い焼型を普段から使っていた。

ある日、いきなりピットさんがノコギリでその型をぎこぎこと切り始めた。(おいおい、何してんねん⁉︎)

「こうした方がもっと使いやすい」って。

いや、そーやけども…。
この人のこういう人間臭いところが大好だ。
ピットさんの話も書かなきゃな…。

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