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香りの記憶

猛暑から一転、外は秋の香りになってきましたね。
夏が終わり、金木犀の香りがしてくると「あ〜もう秋だなぁ…」と感じます。
(いえ、はやく秋刀魚が食べたいなーとなります…)
近年、秋が短くなったような気がしますが、秋の香りを目一杯楽しもうと思います。

記憶が蘇る時のきっかけって何があるでしょうか?

美しい景色を見た時、
好きな音楽を聴いた時、
美味しいもの食べた時、
花の香りを嗅いだ時、
芝生の上を裸足で歩いた時、などなど…。

「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」

の五感でいろいろ感じたり思い出したりしますよね。

その中でも瞬時に記憶を蘇らせてくれるのは、断然「嗅覚」だと僕は感じます。

僕の中では「焦がしバター」の香りがそれです。
パティシエとして仕事をしていて、焦がしバターを作る機会は多いです。
バターを火にかけて丁寧に混ぜながら、キャラメル状に焦がしていきます。
溶かしバターとはまた違う、香ばしい風味を焼菓子にプラスすることができます。

今から20年くらい前に働いていたパティスリーのシェフはとても厳しく、ほぼ毎秒毎分怒られていました。経験も浅く、技術的にも未熟な僕は、とにかく何をしても怒られた。(今だになぜそこまで怒るのかが理解できないが…)

その当時よく作っていたのが焦がしバターを使ったフィナンシェなんです。
個人的にも大好きな焼菓子なので、現在でもレストランではよく作っています。


ただ仕込みの際、この焦がしバターの香りを嗅ぐと、瞬時に20年前の怒られていた記憶が蘇り、なんだかビクッっとしてしまいます。
心拍数が上がる。悔しくて情けない記憶が鮮明に蘇る。
嫌な記憶だ…。

その反面、経験を積んだ今、気を引き締めるいい機会にはなっています。
まだまだ勉強して、いいものを作れるようになりたいと。

というように、「香り」というのは忘れられていた記憶を瞬時に蘇らせることができるようです。

現在進行中の「ジャムの旅」。
なぜ収穫したての旬の果物を、すぐに現地でジャムにするのか?
それはやはり鮮度のあるうちに旬の「香り」を閉じ込めたいから。

僕のジャムを食べた人には、
苺ジャムの甘〜い香りや、柑橘マーマレードのほろ苦い香り、サワーチェリーの強烈な酸味から漂う香りを感じてほしい。


そして数年後、また季節が巡って旬の「香り」を感じた時、何を思い出すんでしょうか?

「あの当時はコロナ禍で不安だったけど、みんなで助け合ったな」とか、
「朝食をゆっくり食べるようになったのはあの頃からだな」とか
「自宅時間が増えたから、家族とたくさん話をしていたな」とか。
思い出すのかな…。

この先、明るい未来が戻ってきたとしても、今の困難は忘れてはいけないし、今の記憶を呼び起こすような「香り」を大切に、ジャム作りをしていきたいです。

もちろん楽しくて幸せな場面にも、僕の作るジャムやデザートがお役に立てれば嬉しいですよ。

「香り」の話でした!

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