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明かりと音のない世界
2022年の「ジャムの旅」。
最後は愛媛県岩城島に決めた。
11月初旬、これからが旬のレモンに会いに行く。
岩城島は瀬戸内海に浮かぶ小さな島。
アクセスは今治市からしまなみ海道に乗り、ちょうど中間地点の生口島からフェリーを使う。
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車窓から眺める景色を見ると、5年前に自転車でしまなみ海道を走った思い出が蘇る。
あの時は尾道から出発し、途中の大三島で民泊。
今治まで気ままな自転車旅を満喫した。もう5年か…。
瀬戸内海の島々もちょうど紅葉が始まる時期。
内陸の山々の紅葉とはちょっと違い、海に浮かぶ紅葉もまた素晴らしい。
日本各地を巡るということは、その土地独特の美しい景色に出会えるということ。
その中でも瀬戸内の景色というのはちょっと特別だと思っている。
島とういうロケーションがどこにもない景色を生み出している。
みなさんにも特別な景色、ありますよね?
今年の1月に来た時も、夕焼けの美しさに言葉を失った。
あの時の感動があるからまた帰ってきた。
島に着くと一気に時間の流れが変わる。
東京の慌ただしさとは無縁の、穏やかで静かな時間が流れている。
そして旬を迎えた柑橘がそこらじゅうに実っていた。
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旬の初めのレモンはまだ青い。
青いレモンは酸味も尖っていて香りも強く、苦味もしっかり感じられる。
今回はこの青レモンの特徴を素直に感じてもらいたいので、あえて苦味を残してマーマレードを作ってみよう。
畑でもぎたてのレモンをかじりそう決めた。
ブルーレモンファームの生産者、古川夫妻ともたくさん話をした。
久しぶりなんだけど、全然そんなことを感じさせないお二人の人柄に惹かれる。
どうやらあの最高級のみかん「紅まどんな」もそろそろ収穫らしい。
ではこの紅まどんなのマーマレードも作らせていただこう。
「畑が3ヶ所あるので食べ比べてみて、使う果実を決めたら?」
そう言っていただけたので、3ヶ所でそれぞれ食べ比べてみた。
場所によって微妙に味が違うんだな…。
まだ旬の初めなので酸味が感じられる。
その中で一番コクがある物を使うことにした。
現地で作る醍醐味がここにある。
面白い。
収穫したその日は下処理まで済ませて、翌朝4時からマーマレードの仕込みを始めることにした。
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早朝の空気を味わいたくて外に出ると、日はまだ昇っておらず真っ暗だ。
島には街灯がほとんどない。
空には煌々と輝くお月様が。
その月の明かりで自分の影ができていることにハッとした。
都会では明るい月が出ていても、街の明かりでその明るさに気づかない。
月ってこんなに強い光なのか…。
太陽みたいだな。
午前中に仕込みが終わったので、少しゆっくりできる時間ができた。
穏やかな瀬戸内海を眺めていて気づく。
波音がまったくしないな…。
生活音がほとんどしない。
そのかわり、鳥の鳴き声があちこちで響く。
東京にも月は出るし、鳥もたくさんいるはずなのにな…。
都会は明る過ぎて、音が多過ぎる。
日々の何気ない美しさ、豊かさに気づくか気づかないかは、自分の気持ちひとつなんだよね。
日々の忙しさの中でもある程度の心の余裕は必要だね。
と思いながらも東京に帰ってきたら、すぐに時間に追われている自分がいる。
この先もずっとこの繰り返しだろうね…。
でもそんな暮らしも嫌いじゃない!
疲れたらまた瀬戸内海に帰ってこよう!
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