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茶道とは何か③

西洋藝術の視点から茶道を論じた岡倉天心

岡倉天心(1862〜1913)
美術評論家。代表的な著書『茶の本』は、明治39年(1906)に米国ボストン美術館で中国・日本美術部長を務めていた天心が、ニューヨークの出版社から刊行。茶道を仏教(禅)、道教、華道との関わりから広く捉え、日本人の美意識や茶道文化を世界に紹介している。

天心の代表的な著書である『茶の本』では、

茶は芸術品であるから、その最もけだかい味を出すには名人を要する。茶にもいろいろある、絵画に傑作と駄作と―概して後者―があると同様に。と言っても、立派な茶をたてるのにこれぞという秘法はない、ティシアン、雪村のごとき名画を作製するのに何も規則がないと同様に。茶はたてるごとに、それぞれ個性を備え、水と熱に対する特別の親和力を持ち、世々相伝の追憶を伴ない、それ独特の話しぶりがある。真の美は必ず常にここに存するのである。芸術と人生のこの単純な根本的法則を、社会が認めないために、われわれはなんという損失をこうむっていることであろう。宋の詩人李仲光は、世に最も悲しむべきことが三つあると嘆じた、すなわち誤れる教育のために立派な青年をそこなうもの、鑑賞の俗悪なために名画の価値を減ずるもの、手ぎわの悪いために立派なお茶を全く浪費するものこれである。

『茶の本』

茶道は日常生活の俗事の中に存在する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式であって、純粋と調和、相互愛の神秘、社会秩序のローマン主義を諄々と教えるもの

『茶の本』

茶道は美を見いださんがために美を隠す術であり、現わすことをはばかるようなものをほのめかす術である

『茶の本』



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