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松本人志×宮本茂の対談を見て思ったこと

だいぶ昔の話ですが、2011年にNHK BSプレミアムで、松本人志さんと宮本茂さんの対談番組が放送されていました。

今更ながらそれを見た感想を書いてみます。
(※独自の解釈も入れているので、正確な内容は動画で確認することをオススメします)

■宮本茂さんの発想法について

対談の中で「どうしたらあのような独特なゲームが生まれるのか」ということを松本人志さんは聞いています。
これに対して、宮本茂さんは以下の回答をしています。

* 子供の頃の遊びが元になっている
* 他の人が考えた企画にダメ出しをして、色々積み上げたり整理した結果生まれた

特にピクミンについて、最初からあのようなシステムができていたわけではなく、オブジェクトがたくさん動いているものを遊びにしようとして作っているうちに「何となくアリっぽいから、アリの習性を取り入れてみよう」という発想から始まりました。
そして、純粋そうなピクミンを見ていたら「何を知らないピクミンを犠牲にするのは可哀想だなぁ……」という部分に心が動いて、この気持ちを商品化したらうまくいくのではないか、ということに気がつき、「ピクミンの命を犠牲にしないとゲームを攻略できない。命の大切さや尊さをこのゲームで感じ取ってもらえたら」という方針が決まったそうです。

つまり、「作りながらゲーム内容について考え、これはイケる、と思ったらそれを形にしていく」という手を動かしながら考える発想法・作り方をしている、と言えそうです。

■お客さんを意識して作る

松本人志さんは、自分のファンから「昔のコントをもう一度やって欲しい」とよく言われるそうですが、それを頑なに拒否しています。というのも過去にやったことを再びそのまま繰り返すことに抵抗があるからです。
しかしゲームについては考えが矛盾していて、ピクミンが大好きで「ピクミン3」を早く出して欲しいと宮本茂さんにせがみ、「ステージを追加するだけでもいいから」というわがままを言ってしまいます。

このことに対して、宮本茂さんは「仕事の悩みはまさにそれ」と返します。どういうことかというと、前作と同じものでは作っていて楽しくないけれど、どこかの部分ではそれでもOKとしないといけない(発売)時期がやってくるからです。また続編を作る場合には、前作の要素を補強したり伸ばしたりすることになるけれども、単に足していくだけだと複雑なゲームになってしまい、とっつきにくいゲームになることを危惧しています。
開発者はゲームを理解しているので、作り込んでいくうちに「少しぐらいは複雑にしてもいいかも」と考えるのですが、遊ぶ側には簡単には伝わりません。常に「遊んでくれるお客さんを意識して、マニアックにならないようにする」とのことです。
さらに、ゲームマニアが望んでいるものに対しても「単に内容を深くしただけではダメ」と考えています。マニアが求めているものから少しピントをずらしたもので「そういう楽しみ方もあるのか」という驚きを与えなければならない、としています。

■心・技・体について

松本人志さんは、エンターテイメントには「心・技・体」が重要と考えています。どういうことかというと、技術力を上げることも大切なのですが、それによって大人びて子供のような純真な心が失われると遊び心がなくなり、人を面白がらせることが難しくなると考えています。

それに対して宮本茂さんは「技術力が上がってきたときにそれを見せびらかしたい」と考えたこともあるそうです。ですが「そこは本当にみんなが行きたい方向であるのか?」と踏みとどまり、「本当に作りたいものは何か?」という本音で考えるようにしたとのことです。
例えとして「スーパーマリオ」がヒットしたとき、多くの人に絶賛されたもののその評価の半分は「すでに他のゲームでやっていること」だったそうです。つまり新しい技術は必ずしも要求されず、多くの人にとって技術の高い・低いは重要ではなく、"枯れた技術"であっても表現方法次第で目新しさが出せれば、新しいものが生まれ、多くの人を驚かせることができるのではないか、としています。

■マリオカートは常識破りだった

マリオカートはレースゲームとしてよく考えるとありえないルールだらけで、開発中は批判が多かったそうです。

* なぜ車に乗っているのにコインを拾えるの?
* なぜルーレットを通過するとルーレットが回るの?
* ルーレットが確定した後になぜアイテムが手に入るの?
* なぜ車がジャンプするの?

それに対して「その方がマリオっぽいし、その方が面白いでしょ?」と押し通したそうです。
常識を破ると批判が多いしリスクも高いですが、その方が競争相手も少ないし、ラフの作りでもいいから楽に作れる、という話をしています。

またマリオカートの面白さを「競輪」であるとしています。競輪はゴール間近での競り合いが勝利・敗北を決めるのですが、マリオカートがまさにそれで、最後の一周での競り合いが勝敗を決めるという、今までのレースゲームにはなかった独自のゲーム性を生み出しています。

■マニアックに走るタイミングについて

宮本茂さんは「マニアだけに受けるものにしてはいけない」と考えていますが、ゲームを深く楽しめるものにするには、どこかでマニアックな方向に合格点を出すタイミングがあるとしています。
そしてそのタイミングは明確には決まっていないものの、以下の場合と考えているようです。

* 他の人がやりそうなことはやらない
* どうせやるなら(作るなら)それが楽しそう

そして、「このアイデアはいけるなー」と思って盛り上がったら、経験でどんどん肉付けする、というやり方をしているそうです。

■まとめ

子供の頃の経験を形にしていく
* 新しい発想は何もないところから生まれない。あるアイデアにダメ出しを繰り返すことで色々と積み上げ、整理することで生まれてくる
* 作りながらユーザーにウケる要素を考え、「イケる」と思ったら作り込んでいく
* ゲームマニアだけが喜ぶものにしない。常に喜んでくれるお客さんのことを考える
* 技術は見せびらかすものではない。それを使って「本当に作りたいものは何か」という自分の本音を大切にする
* マニアックな要素を選ぶ場合は、他の人がやりそうなことを避けるどうせやるなら楽しそうと思えることにする
* みんながやっているパターンで勝負すると競争が激しい。独自のものを入れるとリスクは大きいが、ラフに作ってもいいし、仕事も楽しい

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