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小説:54歳マイクエで奇跡をみた【2】より臨場感を高める深い心の旅ができること間違いないだろう。「時代はここまで来たか!」

第1話はこちらから

54歳マイクエで奇跡を見た【登場人物】

シュン 主人公  54歳独身 サラリーマン
クトー 旅の仲間 小中学生のラグビーコーチ
アンリ 旅の仲間 心理カウンセラー
ホリアーティ 旅の仲間 占い師
ナスちゃん 旅の仲間 看護士
ニバミン 旅の仲間 ダイエット指導者
神林(株)ゴールデン•スパイラル 開発担当
千川部長 シュンの出向先の元上司
籠井先生 シュンの小学校の恩師(担任)
平山先生 シュンの中学校の恩師(陸上部顧問)
魂の指南役 正体不明
片次 シュンの描く漫画の主人公
もやい様 片次の旅仲間

【装備】

マイクエ。マインド•クエストの略で、自分の精神の探求のことだ。僕を含め仲間は日本各地で実際の生活を営んでおり、一同が介して冒険に出るわけではないが、個々がそれぞれの内面や過去と向き合っていく。セミナー後半が始まる60日後に旅が終わるということだけが決まっている。
さて、参加者のもとに心の旅をドラマティックに演出するものが送られてきた。少し大きめなサイズのレンズがついた眼鏡だ。普通の眼鏡のよりレンズの枠より1.5倍もあり、付け根が少々太い。見た目からは想像もできないが、3D映像を楽しむVRヘッドセットのように映像を楽しむことができる。クリエイティング・ドリーム・グラス(以下CDGと呼ばせてもらう)と箱と説明書にかかれている。最近見かけなくなったが、Made in Japanと印字されている。なおWi-Fi接続が必要だ。
このCDGをかけることで、夢を見つけるためのワークが画面越しに出題されたり、ワーク用の動画を見ることができる。仲間とのチャット、ビデオ会議もできるというすぐれもの。スマホを開かなくてもいいし、マイクも不要。公使の区別もつくから、ワークに集中できる。
僕が気に入ったのは、脳内での映像を眼前に投影するというところだった。冒険世界を脳内に想像することで、ゲームのように運営会社が作った世界ではないオリジナルの世界を投影できるのだ。今見えている現実風景とのシンクロ、親和性が高いらしい。研究開発段階の途中でテストプレイ用のため、完璧な再現性は期待できないと注意書きがある。仮に脳内映像を投影できなくても、あらかじめ数十にもおよぶイメージ映像やBGMも準備されているから、より臨場感を高める深い心の旅ができること間違いないだろう。
「時代はここまで来たか!」
実際、感嘆符だけでこのページを埋め尽くしたいくらいの興奮を感じていた。僕は60日後の世界を旅の終着点として、「大魔法使いOZがいる世界」を設定した。「呪い」を解いてもらうには、こういう全能っぽい名前がいいんだよ!と一人でつっこんだ。片次が旅する時代を想像したかったが、悪党を出し抜くでも、誰かを助けに行くのではない。恥ずかしながら、助けてもらうのだ。やはりOZでいい。また、一人でつっこむ。ついでながら、そこまでの冒険の舞台を「オズウェイ」と名付けた。
「冒険世界が僕を待ってる!」
現実では隣のキッチンにおいて、フライパンや茶碗、皿などの洗い物が僕の出番を待っている。一人でいても、オズウェイでは仲間が一緒だ。CDGをかければ、グランドメッセージ(チャットやビデオ通話の総称)を表示させ、仲間とリアルタイムにやりとりもできるのだ。ヴァーチャル・ゲームの世界と違うのは、仲間が登場するとしたら、それは自分の脳が想像したものということになる。
冒険世界が投影された世界「オズウェイ」で臨場感を高めてワークをこなすという心の旅で、「敵」と遭遇し、戦うような熾烈な旅になるとは、思いもしなかった。

《つづく》


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