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趣味のデータ分析078_弱男 vs 弱女⑩_弱者生息マップa

071~077にかけ、日本全土の未婚低所得者――弱者男女についての分析を進めてきた。これまでの分析では、日本全体のデータを使用していたが、今回は、都道府県別の分析を行っていきたい。つまり、弱者生息マップの作成である。ちなみにデータ制約上、2022年に絞った分析となる。
そして今回は、Google Chartによる色分け地図でデータを示すということに挑戦してみた。

<概要>
・未婚率、平均所得について、東京はずぬけて高いが、それ以外の都市と地方の間に目立った差異は見られない。ただし、女性未婚率は、地方と都市部で差がある
・男性未婚者の未婚率、所得は、都市圏を中心に「にじみ」がみられるが、女性はそのような広がりがあまり見られない。
・未婚率や未婚者平均年齢の男女差は、西低東高の傾向が見られる。平均所得にも若干その傾向あり。

都道府県別の配偶関係、年齢、所得分布

当然ながら、当道府県別に配偶関係も年齢も所得も、その平均は異なる。例えば地方のほうが、基本的に平均年齢が高い。また、所得分布も異なる。一般的に都市部は高く、地方は低い。
配偶関係については、所得分布や年齢分布が異なるし、自ずから配偶関係分布も異なると考えられる。なお初婚年齢のデータもあるのだが、データセットが異なるので、これは補足部分で触れる。
これらについて、順に確認しておこう。

地域別配偶関係分布

上で書いた順番と前後してしまうが、まずは基本の配偶関係を確認しよう。都道府県別の未婚率(未婚者+その他に占める未婚者の割合)の割合は、図1のとおりである。なお、これまでのデータとの接続も踏まえ、15歳以上64歳以下で仕切る。これは以降のデータ全てに適用する。
未婚率については、男女で35%前後だが、まずは男女差の大きさに驚かされる。都市部や一部近畿圏では、男女差がないあるいは女性の方が未婚率が高いが、基本的に男性のほうが未婚率が高く、平均では3%ある一方、10%近くに及ぶ地域もある。

図1:都道府県別未婚率(2022年、所得データあり15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

では、これを地図で見るとどうなるか。まず男性(図2)を見ると、特に東京以東の、太平洋側が色が青っぽい=未婚率が高い。図3の女性を見ると、こちらは対象的に、東京周辺や北海道、大阪、京都、福岡等の一部大都市を除けば、全体に色が黄色い。また、中部~日本海側も含めた東北地方で、かなり色が黄色寄りになっている。

男女で比較すれば、まず都市部でのみ女性の未婚率が高く、それ以外の地域では比較的未婚率が低いことがわかる。女性に比べると男性は、未婚率の高低分布が地理的に幅広く、必ずしも都市部で未婚率が高いというわけではない。ただ、未婚率の男女の相関は0.53で、相応の正の相関は窺われる。

図2:男性未婚率(2022年、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)
図3:女性未婚率(2022年、所得データあり15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

以上を踏まえて、男女差の地理分布を見ると、女性の傾向を概ね反映した用に見える。つまり、都市部で男女差が小さく、岐阜以東の東日本全体で色が青い=差分が大きい。
実際、上述の通り男女の相関は0.54あるが、「男女差と男性の相関」は0.20にとどまり(無相関に近い)、「男女差と女性の相関」は▲0.72と、圧倒的な負の相関を発揮している。式的には男性未婚率 ー 女性未婚率 = 男女差、なので、男女差と各性との相関に大きな差がなくても然るべきだが、女性のみで強い相関を示しているということは、未婚率の男女差は、女性未婚率に概ね依存していることを示している。

図3:未婚率の男女差(2022年、所得データあり15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

地域別年齢分布

次に年齢分布だが、グラフで確認すると、図1のようになる。未婚、その他のいずれも男性のほうが高いが、その他の方の男女差は0.5歳にとどまる一方、未婚では2歳近い差が開いている。初婚年齢の平均が、男女で2歳程度差がある(女性の方が若い)ことをそのまま反映していると言える。
また、平均年齢そのものも、その他のほうが地域差が小さく、未婚は相対的にばらつきがある。

図4:都道府県別平均年齢(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

さて、未婚年齢のばらつきを地図で並べると、図5~6のようになる。
未婚男性は近畿圏で比較的年齢が低く、全体的に西側が黄色っぽい。一方未婚女性の場合は、滋賀以東~南部東北地方が黄色っぽい。未婚者の平均年齢は、男性は西が、女性は東が低いという分布になっている…のかもしれない。他方、両者の相関係数をちゃんと取ったところ、0.57だったので、未婚男女の地域別平均年齢には、ある程度正の関係があると言ってよいだろう。地元の近い年齢で結婚…というのが典型的とすれば、不思議なことではない。むしろ、男女で東西差が窺われる方が謎である。

図5:未婚男性の平均年齢(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)
図6:未婚女性の平均年齢(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

ただこの謎の結果として、平均年齢の未婚男女差も、未婚率と同じく西低東高の傾向が発生している(図7)。ここでも、「男女差と男性の相関」は0.28にとどまり(弱い正の相関くらい)、「男女差と女性の相関」は▲0.63と、かなり強い負の相関がある。未婚の平均年齢についても、女性側の変動の影響が大きそうだ。
ちなみに、「未婚率の男女差と未婚年齢の男女差」の相関は0.59で、強い正の相関が窺われる。論理的な因果関係は不明だが、結婚に関する文化的な文脈が影響しているのだろうか。

図7:未婚男女の平均年齢差(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

所得分布

最後に所得分布を確認しておく。当然その他男性が圧倒的だが、これまた地域性がかなり大きい。データの推計法にも依存しているが(後述)、都市部が高いと思いきや、東京圏が圧倒的なだけで、ほかはどんぐりの背比べ感もある。これは未婚男女、その他女性でも同様である。

図8:都道府県別平均所得(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

未婚について地理的分布を見てみると、図9~10のようになる。男性のほうが、大都市圏を中心に青っぽい=所得の高い地域がなんとなく分布しているように見えるが、女性の方は、東京への集中以外の色の「にじみ」が少ないように見られる。「にじみ」の規模感は異なるが、未婚率と同じく所得においても、男女で地域分布の広がりが異なっており、いずれも女性の方が東京の高さの極端さが際立っている。

図9:未婚男性の平均所得(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)
図10:未婚女性の平均所得(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

さて、最後に、所得の男女差の分布もついでに見ておこう。男女差はそもそもの水準の問題があるので、実数と、未婚男性の平均所得で正規化?したものも計算している。グラフと地図で、図11~13のとおりだが、未婚率や未婚者平均年齢よりはだいぶ不明瞭だが、それでも西低東高の傾向があるように見える。
ちなみに相関係数は、「所得差と男性の所得」では0.80(正規化?したあとは0.63)、「所得差と女性の所得」では0.37(正規化?したあとは0.13)、さらに「所得差と未婚率差」「所得差と未婚年齢差」の相関はそれぞれ0.42、0.47なので、やはり相関関係は弱まっているが、何等か関係はありそうだ。他方、女性より男性の所得との相関が強く、「女性の所得の低さ」というより、「男性の所得の高さ」の方に原因があるようだ。これはこれまでの傾向とは異なる。

図11:未婚男女の平均所得差(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)
図12:未婚男女の平均所得差(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)
図13:未婚男女の平均所得差/未婚男性の平均所得(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

まとめ

本当は今回で弱者の分布までやってしまいたかったが、分量的にできなかった。無念。本当は男女の差分とかはやるつもりがなかったのだが。

結論としては、以下のようになる。
・本来地域別(都市・地方別)の未婚率等を確認したかったが、未婚率、平均所得について東京が圧倒的に高いことを除けば、都市と地方の間にあまり目立った差異は見られない。都市部の平均所得は若干高いが、東京と比べるとどんぐりの背比べである。ただし、女性未婚率は、地方と都市部で差がある
・男性未婚者の未婚率、所得は、都市圏を中心に「にじみ」がみられるが、女性はそのような広がりがあまり見られない。
・未婚率や未婚者平均年齢の男女差は、西低東高の傾向が見られる。平均所得にも若干その傾向あり。

最後に、にじみについての背景について、簡単に考察してみよう。まず所得については、未婚男性のほうが勤務範囲が広いということが背景になっている可能性がある。つまり、男性は東京や大阪だけでなく、埼玉や奈良など周辺地域からも広く通勤しているため、都市部の高所得を周辺地域でも得られるように見える一方、未婚女性はそうした移動性が低いのかもしれない。未婚男女の移動性、特に昼間人口と夜間人口の差のレベルでの移動性の詳細を見られれば、この部分ははっきりするだろう(データがあるとは言ってない)。
あるいは、都市周辺部は、地元の男性がその利益に主に浴する仕事(ベッドタウンの開発等?)が多く、結果、男性のほうに主ににじみが発生しているのかもしれない。

未婚率のにじみについては、東日本のほうが男女の未婚率差が大きいという、西低東高の文脈で理解したほうが良いかもしれない。考えられるのは、東日本のほうが、結婚の際に男性に求められる所得が高く、よって未婚率や平均未婚年齢も高くなる一方、女性はそのような要求がないため、男女差が生まれてしまっていること、またこのため、未婚男性の平均所得や未婚男女の平均所得差にも、若干の西低東高が発生しているのではないか、ということだ。
ただこれはかなり妄想の域に入った推測である。結婚観に関する東西差を直接見たほうが良いかもしれない。

最後に、整理のため、上述した各種相関係数についてまとめておく。こう見ると、未婚率の高さと平均所得にはかなりの相関があり、これは都市圏概念が適用できそうだが、平均年齢はむしろ弱い逆相関になっている。年齢と所得の正の相関からすると、結構不思議な結果になっている。

図14:都道府県別の男女の未婚率、平均年齢、平均所得の相関
(2022年推計、所得データあり有業15~64歳)
(出所:就業構造基本調査)

次回で弱者の分布マップを公表する。

補足、データの作り方

出所は就業構造基本調査から。
実は平均所得のデータについて、全国の時系列データ(074077)の結果とは差が出ており、これは所得分布の内訳について、以前は最も荒い1997年の仕分けに合わせていた一方、今回は2022年の仕分けのみを利用しているためだ。両者の最大の差は高所得層で、1997年は1000万円以上、の区分けしかなかったため、このカテゴリは最大3000万円、平均1500万円で計算していた。他方2022年のデータは、1000~1250万円、1250~1500万円、1500万円以上に細分化され、推計上は1500万円以上のカテゴリを最大3000万円、平均2250万円で分析した。このため、結果的に今回の所得データは、全国時系列データより、特にその他男性の平均所得が大きく減少する形となっている。

最後に、初婚年齢の男女差についても確認しておこう。こちらは人口動態調査から。せいぜい1歳程度の地域差で、東京が図抜けて高く、これに比較するとそれ以外の都市部と地方での差は小さい。そしてこちらも未婚率等と同様、男女差に西低東高の傾向が見られる。背景にも、同様のものがあると推察されるが、詳細はわからない。

図15:都道府県別初婚年齢(2022年)
(出所:人口動態調査)
図16:男性の初婚年齢(2022年)
(出所:人口動態調査)
図17:女性の初婚年齢(2022年)
(出所:人口動態調査)
図18:初婚年齢の男女差(2022年)
(出所:人口動態調査)

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