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趣味のデータ分析077_弱男 vs 弱女⑨_弱者は高齢化しているか

073076で、弱者男女(要するに未婚低所得の者)、そしてそれ以外のレイヤーの30年の歴史を概観した。結果として、以下のことが判明した。

【弱者の動向】
・人口は経時的にも男女間も大きな変化なし。
・構成比は女性のほうが多いが、差は縮小傾向。
・弱者男女内での平均値、中央値は、男女格差があったものの、差は大幅に縮小(データによっては消滅)。
【弱者以外のレイヤーも含む全体】
・男女ともに、未婚者の増加を除けば、弱者、強者、その中間層の人口比率等に変化はあまりない。
・所得中央値について、未婚者では男女格差が相対的に小さく、特に低所得層では格差がほぼ消滅に向かっている。他方、その他(既婚等)では男女差がむしろ拡大している。

さて、これまでの分析は、年齢についての分析をしていない。というわけで今回は、改めて弱者に対象を絞ったうえで、年齢別の推移について確認しよう。

<概要>
・未婚有業者は男性のほうが2割程度多いが、うち低所得者は男女数に差がない。理由としては、25~54歳の働き盛りの年齢で、未婚女性の方が低所得者比率が高いため。
・弱者の平均年齢は、20代後半から30代前半へ趨勢的に上昇。ただ水準は、女性の方が低い。
・低所得者内での所得中央値は、2012年以降、概ね全年齢で伸びており、男女格差も縮小している。弱者男女の所得格差縮小は、全年齢的な現象である。

母集団の整理

今回データ的には、有業所得データありの者のみを1997年から2022年まで扱っている。総人口だけでなく既婚率等も大幅に変わった25年間でもあるため、母集団は全く一様ではない。というわけで、まずは母集団を整理しよう。
配偶関係別性別(無業込み・15歳以上64歳以下)のデータをまず確認すると、若干女性の方が総数自体が少ない(男子のほうが出生率が高いので、自ずからそうなる)。それを踏まえてか、未婚男女の無業の数も女性の方が少ないが、大きな差はない。

図1:性別配偶関係別有業無業区分別人口と構成比の推移(15歳以上64歳以下)
※1997年以前の「未婚」は、「有配偶でない者」
(出所:就業構造基本調査)

次に、今回分析対象である、所得データが有る有業の65歳以下だとどうか。まずは配偶関係別性別のみで仕分けると、図2のとおりである(所得データなしを弾いているので、図1と数値が若干ずれるが、大きな差はない)。ものすごい変化があるわけではないが、男性は総数が趨勢的に減少している一方、女性は徐々に増加しているのは面白い。少子化なので減少するのが自然だが、勤労女性の増加の勢いは、少子化の勢いを上回っているということか。
また、未婚者については、実際には200万人(20%)程度の差分が発生している(理由の考察は後述)。

図2:性別配偶関係別人口と構成比の推移(15歳~64歳所得データあり有業者)
※1997年以前の「未婚」は、「有配偶でない者」
(出所:就業構造基本調査)

さて次に、年齢別にこれを細分化しよう。15~24歳では男女ともに未婚が多く、特に男性のほうが女性より多いが、25~34歳でほぼ同数、それ以上はその他区分のほうが多くなっている(ちなみにラベルの人数は総人口)。つまり、これまで年齢区分をせずに弱者男女を分析してきたが、実際のところ、15~34歳が過半を占めるデータの分析だった、ということだ。逆に言えば、上述の未婚有業者数の男女差は、35歳以上のレイヤーで発生していると考えられる。

ただ、2007年時点では10%前後だった45歳以上の未婚者比率が、男女ともに単調増加しており、2022年では20%超であるのは、年齢構成上の大きな変化と言える。またちょっと分かりにくいが、未婚有業男性のほうが未婚有業女性のほうが多い背景は、特に35歳以上のレイヤーで、未婚男性が多いことにあることが確認できる。
また、図1で見たその他男性の減少は、全年齢的に観察される事象であることがわかる。

図3:有業者の年齢別人口(所得データあり)
※1997年以前の「未婚」は、「有配偶でない者」
(出所:就業構造基本調査)

年齢別弱者男女

では、以上の分布を前提に、年齢別の弱者男女の状況を確認しよう。本当は、先に細かく所得分布を見るべきなのだが、データがあまりに長大になるので、先に統計量から確認する。詳細な分布は、補足を確認いただきたい。
そして重要な補足だが、今回の分析では、「全年齢での所得中央値」=これまでと同じ値を、低所得の閾値として用いた。当然だが、年齢が上がるごとに所得に中央値は上がるため、年齢別に所得中央値を区切らないと、若年層に低所得者が偏ることになる。ただ、年齢別に閾値が変わる=弱者の意味が年齢別に変わってしまい煩雑だし、これまでの分析との連続性も見にくくなってしまうため、このように閾値を設定した。

年齢別人口

上記の条件の元、年齢別の弱者人口をカウントすると、図4のようになった。総数自体は、以前確認した「各年の所得中央値以下の人数と、性全体に占める者の割合」と同じとなっている。ただ年齢別に見ると、男女で特に有業者数に大きい差がある35歳以上の部分で、弱者数の男女差が大幅に縮小していることがわかる。

図4:弱者(未婚低所得)の年齢別人口(所得データあり)
※1997年以前の「未婚」は、「有配偶でない者」
(出所:就業構造基本調査)

この部分をもう少し明確にしたものが、図5、図6になる。図5は年代別の、未婚者のうち低所得者の割合で、総じて男性より女性の方が多い。時系列での変化はそこまで窺われない(35~44歳は、男女ともに上昇傾向にある)。その差分を取り出したのが図6で、15~24歳では、絶対水準は当然高いが男女差は小さい一方、25~54歳は男女差が大きい(女性の方が未婚のうち低所得者割合が高い)。結果、この年齢層で、弱者人口の男女差の縮小が発生している。

図5:未婚者のうち低所得者の割合
(出所:就業構造基本調査)
図6:未婚者のうち低所得者割合の男女差
(出所:就業構造基本調査)

年齢別の弱者の質

次に、年齢別の弱者の質――低所得者の所得中央値の変化等について確認しよう。データが煩雑になるので、中央値だけの比較とする。
これも、人口と同様に、絶対水準と男女差、という形で確認すると、図7、8のようになる。これを見る限り、「弱者男女間での所得格差の縮小」は、全年齢的に生じている事象のようだ。特に15~24歳では、2012年以降男性のほうがむしろ中央値が低いくらいである(この年齢は学生を除外できていないので、信頼性には欠ける結果だが)。
075では、弱者男女の団結を呼びかけたが、彼らは年齢を問わず連帯できるということになる。逆に言えば、彼らが連帯できないとすれば、それは所得以外の、ミソジニー等も含む所得以外の点に原因があることになる。

もう一つ興味深いのは、男女で差はあるにせよ、基本的に「1997年~2012年まで所得は減少、それ以降上昇」というのが基本傾向だが、15~24歳では男女ともに2012年以降の伸びがあまり見られないことと、55~64歳の女性は、2012年までの所得の上昇がそもそもなく、近年所得が大きく伸びている、ということだ。これについては、対象が異なるので短絡的に接続している感も強いが、過去日銀の展望レポート内で、高齢女性の労働供給が逼迫しつつある(ので、全体的な給料も今後上昇していきますよ)、と指摘されていることともパラレルな現象ではないかと考えられる。

図7:低所得未婚者の所得中央値
(出所:就業構造基本調査)
図8:低所得未婚者の所得中央値の男女差
(出所:就業構造基本調査)

まとめ

今回は、年齢別の弱者男女の状況について確認した。結果、まず人口については、特に25~54歳、いわゆる働き盛りの年齢で、未婚女性の方が未婚男性より絶対数は少ないものの、他方所得が低く、未婚者中に占める低所得者の割合は高くなるため、結果として未婚低所得者の数は男女でほぼ同数くらいになっている、ということが確認できた。
また、これらのデータから、弱者男女の平均年齢の推移を確認すると、以下のようになる。2007年以降、緩やかではあるが確実に上昇している。ただ、人口動態に比して、特に働き盛り年齢の女性のほうが弱者が多いにも関わらず、男性のほうが平均年齢は((データの定義が異なる)1997年を除けば)高いし、差が縮小しているようにも見えない。

図9:弱者(未婚低所得者)の平均年齢(推計)
(出所:就業構造基本調査)

この理由のひとつは、図10にあるように、男女で未婚年齢の構成比に差があり、要するに25~34歳の割合が女性の方が高いからだと考えられる。図5~6で言及した、働き盛り年齢で、女性の方が未婚のうち低所得者比率が高い、という内容とやや矛盾するが、絶対数ではなく構成比ベースでは、女性の方が若い方に偏っている、ということだろう。

図10:弱者(未婚低所得)の年齢別人口構成比
(出所:就業構造基本調査)

一方で、こうした弱者間の男女比較では、男女ともに絶対水準の上昇と、所得格差の縮小があり、それは全年齢的な現象であることも確認できた。これは、所得上昇ピッチも全年齢的に女性の方が速いことを意味する。

ざっくり言えば、冒頭で確認したこれまでの分析事項は、年齢別に見ても概ね外していない、ということだ。弱者男女の年齢別構成比で15~34歳が多いことは、全体の分析に大きな影響を与えていないと思われる。やはり弱者男女は連帯できる…と思うのだが、そこまで進んでいないような気もするんだよなぁ。悪く見れば何らかの分断統治なのかもしれないが、上述のとおり、もっとシンプルな、感情的ななにかが邪魔をしているのかもしれない。

補足、データの作り方

出所は就業構造基本調査から。

まず、特に35歳以上未婚男女の有業者数の男女差が大きくなっている理由(のひとつ)は、男女の再婚形態の差にあると思われる。つまり、再婚の中で「男性再婚、女性初婚」の形態が比較的多い(そしてそういう男性が再婚を繰り返すパターンも見られる)ため、純粋に未婚の女性の絶対数自体が少なく、その他に算入されてしまうからだ。このグラフ、どっかで作成して記事にしたはずだが、どこで記事にしたか思い出せない。雑。

図11:総婚姻数に占める初婚再婚の組み合わせ別割合
(出所:人口動態調査)

もう一つ、グラフが長大なので、本文では割愛したが、各年齢での所得分布を最後に掲載しておく。基本的に、所得は
・未婚男性<既婚男性
・既婚女性<未婚女性
という分布になっているが、特に若い層のミクロな分布は、そこまで単純ではない感じも強い。

図12:15~24歳男女の所得分布構成比
(出所:就業構造基本調査)
図13:25~34歳男女の所得分布構成比
(出所:就業構造基本調査)
図14:35~44歳男女の所得分布構成比
(出所:就業構造基本調査)
図15:45~54歳男女の所得分布構成比
(出所:就業構造基本調査)
図16:55~64歳男女の所得分布構成比
(出所:就業構造基本調査)

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