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趣味のデータ分析009_猫おばさん仮説②_リーマンは猫を飼えない

前回は「猫おばさん仮説」として、「独身女性はペットを飼って独身の無聊を慰めている」(そして婚期がさらに遅れる)という仮説を提示し、総務省の分析を参考に、35~59歳の単身女性(以降「猫おばさん層」)が、他の年代及び男性と比較し、更には二人以上世帯と比較してもペット関連グッズやサービスにかなりお金を払っていることを明らかにした。

資産所得倍増にかかるネタもちょっと出てきたところそっちもやりたいのだが、猫おばさん仮説が思った以上に興味深そうなので、もうしばらくこっちを深掘りしてみたいと思う。深掘りしたい論点は4つ。

  • 猫おばさん層のペット関連費用で何がかさんでいるのか?

  • 猫おばさん層は実際に猫をたくさん飼っているのか?

  • 猫おばさん層はなぜペットを飼うのか?

  • 猫おばさんは実際に婚期が遅いのか?

例によって一気に分析するのは無理なので、上から順番に見ていこう。

ペット関連費用の内訳の確認

前回確認したペット関連消費額は、ペットフードや病院代などの合算値なので、まずはこれを腑分けしていこう。家計調査で確認できるのは下記である。

ペット関連消費額の推移(35~59歳単身女性・項目別)

いまいちよく分からん。動物病院代が若干高い気がするが、変動も激しい。ペット・他のペット用品もボラが激しい。ていうか、「ペット代」が含まれてると、数十万のペットがかった人とかいるとそれだけで跳ね上がるなこれ。なんというか、「そんなもんか」という結果である。
比較のため35~59歳単身男性でも同じデータを取って、項目別の100%構成比を並べてみたのが下記。

ペット関連消費額の推移(35~59歳単身・構成比)

絶対額が全く違うのでなんともいえないが、女性側は動物病院にコンスタントに消費しているようにみえる一方、男性はボラが激しい。ペット用品とかはそもそも不要だったら買わないからボラが激しいのはわかるが、ワクチン代とかは絶対かかるから、男性側の病院代も、もうちょっと安定して多くてもいい気がする。飼っている動物の差だろうか。いずれにせよ、謎を解明できたという感じでもないな。

ちなみにアニコムというペット保険を提供している会社が、「家庭どうぶつ白書」という資料を作成しており、ここでもペット関連消費額の詳細を取得できる。ペットに特化した統計で、粒度は極めて高い。あと、ペットフード協会の「犬猫飼育実態調査」という調査でも、ペット関係支出の総額だけはわかる。
飼育者の属性がわかるわけではないし、特に犬猫飼育実態調査は時系列含め全然わからず今回直接参考にはできないのだが、一旦図示だけしておこう。

ペット飼育者のペット関係支出

時系列の方が家庭どうぶつ白書である。データ欠損のため、時系列が途中で飛んでいる点に注意。金額水準が家計調査と全く異なり、犬が30万円超、猫でも15万円超となっている。そして家庭どうぶつ白書と犬猫飼育実態調査の間で差が大きいし、さらに家計調査との差も更にある。このへんは別途確認したい。
総額の話は一旦置いて、家庭どうぶつ白書について、その内訳を確認していこう。各項目の詳細は原則割愛するが、動物病院代等は、全消費額の半分くらいと、割合ベースでは最も大きい。ただしここには、単なる病気の治療費だけでなく、ワクチン代や保険料も含んでいる。特に保険料はペット関連サービスに含めても良い気がするが、病気関連ということでこう仕分けた。保険料の額は小さくなく、犬猫いずれも、病院代等のうち40%程度を占める。こうやって見ると、ペットフードの割合は案外小さい。病院代等もそうだし、特に犬については、関連サービスの消費額のほうが高いくらいだ。
なおエキゾチックアニマル等のデータもあるが、そもそもそういう動物は消費額も比較的小さいし(10万円を下回るくらい)メジャーでもないので、これも割愛した。

猫おばさん経営者説

というわけで、項目別ではよくわからなかった…のだが、家計調査の方では別途、興味深い区分でデータを取得できた。勤労世帯/非勤労世帯の区分である。この区分で性別世代別の総額を表したのが下図である。
※正確には全体と勤労世帯の区分があり、それぞれの世帯数と消費額の平均値がわかるので、そこから非勤労世帯を算出した。世帯数は集計世帯数ではなく抽出率調整世帯数を使用している。

ペット関連消費額の推移(35~59歳単身・勤労非勤労別)

非勤労世帯の女性が明らかに高い。いや、ボラは激しいし、勤労女性も男性に比べれば俄然高いのだが、非勤労女性のほうが明らかに高い。特に2017年、2020年は猫おばさん層のペット関連消費額が他の年と比べても高くなっているのだが、明らかに非勤労世帯に引きずられて高くなっていることが伺われる。
そしてここでいう「非勤労」とは、無職だけではない。「非勤労」は全体から勤労世帯を除くことで算出したものであり、ここには無職だけでなく、経営者や自営業など、いわゆるサラリーマンではない人が含まれている。そして59歳以下の単身世帯が無職という可能性は低かろう。つまり、非勤労世帯=経営者や自営業が大宗を占めている、と考えられる。
※上記の通り非勤労世帯の数字はいわば逆算した推計値であり、その結果、例えば34歳未満の男女や、35~59歳でも、内訳の細かい数字を出そうとすると、マイナスの消費額が一部出てくる。非勤労世帯は絶対数が少なく、更に世帯数がマクロの分布に合致するよう多少調整されている関係で、こうした事態が発生するのだと思う(本来はゼロ値だと思うのでその前提で補正しても良かったが、そもそも図示するような話でもなかったので図示していない)。35~59歳では世帯数はある程度確保されており、総額ではマイナスの数字も出てこなかったので、そこだけをグラフ化したが、信頼性という意味で劣る点には留意が必要である。

まとめ

さて、今回の結果をまとめよう。
まずは「猫おばさん層のペット関連費用で何がかさんでいるのか?」という視野で分析してみたが、よく分からないというか、然るべき結果が出ただけな気がする。特定の費目に偏った支出だとか、そういう感じにはなっていない
一方で勤労世帯/非勤労世帯で見ると、非勤労世帯の女性は、勤労世帯の女性に比して明らかに消費額が大きいようだ。つまり、40~50代の自営業や経営者やってる単身の女性は、ペットにめっちゃ、相当に金をかけている。堅牢性は高くない結果なのだが、個人的にはかなり納得感がある。一つ謎が解けた気がする。
では次回は、実際に猫おばさん層が猫を飼っているのか、というところから明らかにしていこう。続く。


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