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趣味のデータ分析008_猫おばさん仮説①_独身女性は猫を飼う

昔インドで一人旅をしていたとき、アウランガーバード近辺で日本人と同じ宿になった。多分当時30代半ばの美人だったが、ヘビースモーカーで酒飲みで、マイセンを分けてもらった記憶がある。
で、その女性が自称「猫おばさん」で、確か5匹くらいの猫と一緒に暮らしていると言っていた。インドは当時で5~6回目くらいと言っていて、人生の辛み悲しみを背負ったような雰囲気だった。「恋愛って結局信頼関係なのよね…」的なことを仰っていた気がする。彼女のせいで「独身女性はペットを飼って独身の無聊を慰めている」(そして婚期がさらに遅れる)という固定観念というか先入観(以降、「猫おばさん仮説」と呼ぶ)が私に植え付けられた(割と膾炙している俗説だと思う)のだが、実際その後もまあそんな感じの人と話したりすることがあり、本人とも「犬猫を飼い始めたらマジで結婚できねぇw」とか笑って話していたのだが、総務省がこれに関するちょっと面白いデータを出してきた。

独身女性はペットに金をかける。

総務省の分析によると、「35歳~59歳の女性の世帯のペット関連支出が、単身世帯の中ではダントツに高い」となっている。まさに猫おばさん仮説を傍証する内容。
というわけで、どこまでマジなのか、自分でも分析してみよう。分析視野は下記。

  • 単身世帯か二人以上世帯か、

  • 世帯主が男性か女性か

  • 世帯主の年齢に応じて、

  • ペット(主に犬猫)の飼育状況等を家計等の側面から分析する

データソースは主に家計調査だが、民間調査もあったため、それも用いよう。ちなみに動物飼育の直接の所管は農水省、環境省、経産省辺りだが、彼らの統計で飼育者(消費者)側のデータは存在しない(と思う)。役所は事業者にはリーチできても、消費者に直接リーチするのはなかなか難しいのだ。
さて、こうした視野を一気に全部分析するのは難しいので、まずは総務省の分析に習い、単身世帯の性別年齢別ペット関係消費額の推移を見てみよう…の前に、簡単に使用データについて概覧しておく。

家計調査は原則月次データだが、実は月次は二人以上世帯のみで、単身世帯については四半期、年次、年度次データしかない。さらに、家計調査は尋常でなく消費品目の粒度が高い(特に食品系)のだが、四半期は趣味嗜好品の粒度があまり高くない。年度時はそもそも取得できるデータ項目が少ない。今回注目したい性別×年齢のデータは、単身世帯においては年次しかいいデータが無いので、年次データを用いることとする。よって、二人以上世帯のデータも年次データを用いる。
またデータ項目は時期によって若干異なるのだが、今回はペット関連の消費額ということで、ペットフード、その他のペット(愛玩動物)用品、動物病院代と、他のペット関連サービスを合算した(他のペット関連サービスは2015年以降)。

さて、では改めて単身世帯の性別年齢別ペット関係消費額の推移を見てみよう。上記の通り、データは年次になる。

ペット関連消費額の推移(単身世帯)

明らかに35歳~59歳の女性の消費額が高い。ボラは激しいものの、年間大体3万~5万円弱ペット関連でお金を払っていて、ほぼすべての時点で、2位以下に倍以上の差をつけている。35歳~59歳の単身女性が、男性や他の年代の女性に比べてもペットにお金をかけているのは間違いないと言える。

独身女性はペットに金をかける…かなり。

次に、比較対象として二人以上世帯も見ておきたい。35歳~59歳の単身女性のペット関連消費は3万~5万円弱だが、二人以上世帯ではどうか。

ペット関連消費額の推移(二人以上世帯+35~59歳単身女性)

世帯主の年齢別にデータを作ってみたが、正直驚きである。二人以上世帯は、平均的には単身世帯より消費額は高いものの、最も高い世帯主50代以上の世帯であっても、35歳~59歳の単身女性とペット関連消費額はほぼ変わらない
直感的に考えると、家の広さにしても世話やその他金銭的な負担にしても、単身より二人以上世帯の方がペットを飼いやすいはずだ。冒頭言及した知人との会話も、実際は親とほぼ同居している連中の話で、一人暮らしではない。身近で動物を飼っている人も、大半は世帯持ち。子供にせがまれてとか、結婚して家が広くなって、子供の頃飼ってた動物をまた飼えるようになったからとか、そういう理由である。
もちろんハムスターやうさぎなどのエキゾチックアニマル、鳥類、両爬水棲昆虫奇虫あたりなら単身でも飼いやすいと思うが、残念ながら犬猫飼育に比してこいつらがそんなにメジャーになっているという話は聞かないし、何より犬猫とかのほうが基本的にはお金がかかるはずだ。両爬とか、そもそも餌食う頻度低いし。

いずれにせよ、単身女性はペットにめっちゃ金をかけているというのは間違いなく、しかも経時的に安定的な傾向である。
ただ今回検証したのは、「35歳~59歳の単身女性がペットにお金をかけている」というだけで、彼女らがお金をかけている理由は全くわからない。ペット用の服がグッチやエルメス製なのかもしれないし(出しているのか知らんが)、ペットトリムに週3で通っているせいかもしれない。ここで集計したのは平均値にしか過ぎないので、そもそもこの層がペットをたくさん飼っているかも実はわからないし、「独身の無聊を慰めている」かどうか、それで婚期が遅れているかどうかはもっと分からない
というわけで、この件はもうちょっと深掘りしてみようと思う。気軽に手を出したけど、正直謎が深まったわ。



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