いつかここにいた貴方ために_ずっとそこにいる貴方のために

いつかここにいた貴方のために/ずっとそこにいる貴方のために

この物語を読んだのは、絵柄が気に入ったから。タイトルが好きになったから。あらすじに興味惹かれたから。
きっかけは何だったか、正確にはわからないけど

すぐにこれは好きな物語だと思った。

構成は、現在から過去を回想するような感じになっております。二つの時間軸から物語を見れるので2回読むといいかもしれません。僕も、近いうちにまた読もうと思います。とても好きな物語なので。

あらすじ

ただの少年兵レンカは来る日も来る日も、ただひたすらに戦場を駆け回っていた。そんなある激戦の日、レンカは戦場には場違いな少女を見た。自軍も敵軍もその異様な光景に”凍り付いた”。
四月に雪が降った日、その戦線は終結を迎えた。

ふとしたことから、レンカは「氷棺の聖女」と呼ばれるその少女と出会い、距離を縮めていく。しかし、二人は忘れていた。

少年が「ただの兵士」であることを。
少女が「ただの兵器」であることを。

決して幸福ではないけれど、幸せな二人

僕はどうしても想いあっている二人が好きなのだと思いました。想い合って相手のために、自分のできる最大限のことをしている、でも自分の力だったり立場だったり、周りの環境だったり、いろいろな要因が重なってもがき続けることしかできない。たとえ相手が望まなくても未来で相手が幸せならと今相手が望まない決断を下す。どうしたって上手くいかない状況であっても、そこに確かにある幸せをしっかり掴んでいる。

尊いなと思いました。

いつかここにいた人のことは、ずっとそこにいる人が考えることなのだと思います。でもここにいた人が残した望みは、それがとても大切な人だったら叶えたく、いや叶えますよね。

いつだって何かをできるのは、ずっとそこにいる自分だけで、ここにいた人が残したものを頼りに、いろんなことを考えて、やり残したことがあるなら、やってあげて、前に進んでいくしかないんですよね。そして、想っている人なら、絶対に前に進むことを望んでいると思います。ここにいた自分のことを枷にしてほしくないと。ここにいた自分のことを思って立ち止まってくれるのは少し嬉しいけど、やっぱり前に進んでほしい。
そう望むのかなと思いました。

だって、前に進んだら、また何か出会いがあり、出来事が起こるかもしれないですか。辛い事、悲しい事、寂しい事...良い事ばかりじゃないと思いますが、それ以上に嬉しい事、幸せなこと、希望にあふれたこと、そういうのだってたくさんあるのだと思います。

最後に

これは本当に、

愚かな少年が、兵器だった少女を、救えなかった。

そういうお話。

お互いに想っていた二人の、終わりの物語です。

でも、僕はとても好きなお話です。二人の心や、その周囲の心の動きが絡まり合って戦場という絶望の中で、かすかだけど希望を見出していく。
物語の主人公がいつだって、みんなが望むヒーローになれる訳じゃない。
主人公だって同じように葛藤しもがきながら、進んでいる。ただそこにいたという偶然で、自分で選んで主人公になろうと努力する。

悲惨な状況下で仲間と協力して、大切な人を助け出し、ハッピーエンド。そんなみんなが求める痛快な物語ではないかもしれないけれど、それでも僕はこの物語が好きです。

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