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ネガフィルムスキャン沼の実験と検証

本記事は、Syuheiinoueがネガフィルムスキャンに苦悩し、毛根が飛び去るほどの実験と研究に関するXのポストをまとめたものです。

Syuheiinoue


デジタル撮影が主流の昨今とは逆行するように、昨年からフィルム写真のネガスキャン(デジタルデータ化)を行ってきました。先日、香港で撮影した写真のスキャンを年始から延々と行って自身のスキャン能力も上がってきたので、Xにポストされたものをまとめたnoteになります。

主にスキャンソフトSilverfastの凄さと独自の編集過程を綴っていますが、割とブラックボックスに包まれたネガスキャンの世界が何かの参考になればと思います。ようこそ沼の世界へ。

そもそもネガスキャンとは何ぞや…という方は以下のリンクをご参照ください。


①Silverfastを知る

フラッドヘッドスキャナーと呼ばれる一般的な機器を使用しているのですが、色の補正が難しく使い勝手が悪くて困っていたところ、Xのフォロワーさん(https://twitter.com/arata_kid)にSilverfastを教えて頂いたことがきっかけで大きくフィルムスキャンのクオリティが上がりました。

今まで使用していたソフトは、EPSONの純正ソフトです。


はじめてSilverfastでスキャンした写真とポスト。
初期設定後、なんとなくスキャンをして調整を施したものですが圧倒的に色の出方と解像感が良くなり、個人的に大感動です。
iPhoneやWEBでは正直分かりづらいのですが、等倍の画像を見るとスキャン性能は一目瞭然です。

純正ソフトの等倍
ディティールが甘く、少し滲みのある印象
Siverfastの等倍
しっかり解像され、美しいディティール

※色は調整しているので、多少違います。

②スキャンの工程

ネガに現像後、スキャンソフトだけでは色を上手に出すことができないので基本的にはSilverfast → Camera RAW → Photoshopの順番で最終的な色を仕上げています。主にホワイトバランス、色被り補正、HSL、カラーキャリブレーションで調整。

左)silverfast スキャンのみ
右)camera RAWで色調補正、photoshopで埃取り

現像モジュール画面


③データ化された写真たち

以下のポストが、実際にデータ化されたフィルム写真です。昨今のデジタル写真では感じることのできない線の細さ、グラデーションの美しさを感じることができると思います。


純正ソフトでスキャンした写真を含めて、僕のWEBから閲覧することができます。【⊿ Film】にジャンルを分けて格納しています。


④ネガスキャンの心得

以下ポストより、ネガスキャンを繰り返しながら最適なカラーを表現するために最低限必要な要素をまとめました。スキャン時だけではなく、ある程度光と露出を追い込んで撮影しておくことも重要です。

【スキャン時の心得】
①暗く撮影された写真は、そもそも色が出ない
→ネガが薄いと、情報量が少ない

②露出を上げると、ネガそのものの色が反映される
→ピンクやマゼンタに色が転ぶ

③ハイライトのラチチュードは広いが、デジタルと同様ではない
→現像ソフトのハイライト、白レベルとは意味合いが違う

④高解像度でスキャン可能だが、デジタルの高画質と意味合いが違う
→等倍で写真を閲覧した場合の解像度は圧倒的にデジタルが上だが、同じ解像度で肌の質感を比較するとトーンが滑らかなのはフィルム

⑤トーンカーブとカラーグレーディングがほぼ全て
→良き勉強の機会すぎる

【撮影時の心得】
①適正露出より、明るめに撮影しておく
→ハイライトのラチチュードが広いので、デジと逆の考えだと理解すると分かりやすい。シャドーの情報を持ち上げることが徹底的に弱いので、補正するとノイズとがひどくコントラストが破綻する。ポートラは1〜2段明るく撮影した方が良い。

②コントラストの強い光の環境下は撮影に向いていない
→フラットな光をベースに、コントラストを足し引きする

③それぞれのレンズ特性を理解する
→例)ペンタレンズはマゼンタ寄り、carl zeissはブルー寄り

④光と影の色温度を理解する
→光の向き、環境で色温度が大きく変化するので、適正なカラーを表現する場合はレンズカラーフィルターを使用したり、撮影時の環境に注視する


⑤フィルムとデジタルの違いとは

大きな違いはグラデーションの階調だと分かるのですが、うまく言語化ができていません。フィルム特有の「線の細さ」が影響しているのかもしれませんし、ネガに感光させる方法、光をRGB信号に変換している方法の違いなのか、詳しい方がいらっしゃればご教授ください。


フィルムで撮影するグラデーション、水の質感は本当に美しいと感じています。以下は夕方と波を中心に撮影したページです。


⑥スキャン時の機器について

フィルムスキャナー:エプソン GT-X830
→ 一般的なフラッドヘッドタイプのスキャナー

スキャニングプレート:Lomography DigitaLIZA 120 スキャニングマスク
→ ネガの歪みを整え、モアレや解像度の劣化を防ぐものです

スキャンソフト:Silver Fast9
→ エプソンGT-X830と互換性のあるアプリケーション

ペンタブ:wacom intuos ctl-4100wl
→ 埃取りのスピードを早めるためのツール

スキャン解像度が 3200ppi に設定されている場合、出力は 6 x 6 フォーマットで長辺約6500ピクセル程度のサイズになります。フィルムに付着したゴミがスキャンに影響するため、可能な限りブロワーを使用してゴミを除去することをお勧めします。

⑦まとめ

フィルムネガスキャンの世界、いかがでしたでしょうか。お店でデータ化をするよりも高解像度で最適なカラー写真の結果を得ることができる一方で、専門性が高く手が出し辛いものかと思います。しかも1枚スキャンするのに2〜3分かかるので、ネガの転換作業やphotoshopの時間を加味すると12枚で40分〜1時間かかる計算。デジタルに比べて圧倒的に非効率なので時間が音速で溶けていきます(笑)

ですがその一方で、フィルムでしか味わうことのできない写真の美しさ、手塩を込めた過程を通じて大切にしたくなる写真を得ることができるので、写真本来の記録としての役割を十分に発揮できる素晴らしいものです。

写真好きの皆様が、より一層沼の世界でご活躍されることを願っております。長くなりましたが、以上でネガフィルムスキャンの実験と検証を終わります🙏

また進展があれば書きます。

Syuheiinoue


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