見出し画像

アメリカ視察記②【Uber】サザエさんとなった1日

いま、自分はUCLAの就活センター前にあるバスやタクシーなどの乗り場の前で熱を持ったスマホを持って佇んでいる。

大谷翔平の視察のために家族をおいてロサンゼルスへやってきて2日目。MLBの試合は夕方なので日中は公園でスケボーをしたり、せっかくだからということでアメリカ屈指の名門大学UCLAを訪れた。天気も景観もよく敷地も広大なのだが、18時から始まるMLBの試合に余裕を持って球場に行くには早めに帰らないといけない。行きは1時間ほどで到着したので3時30分に出発すれば大丈夫だろうということで3時ごろからアメリカに来てお世話になりっぱなしのUberで目的地を入力した。

そこから40分、「ドライバーを探しています」という表示から一向に進展しないスマホの画面を見つめながらスマホが熱くなるのと比例してを不安と焦りが高まっていく。

待ちながら考える

なぜ、こんなことになったのだろう。
ここまでUberを3〜4回は使ったはずだが、すぐにドライバーは見つかり、待ち時間といえばドライバーと待っている場所の距離の分だけでしかなかった。こんなに見つからないことは想定外。
UCLAは日本でも関連グッズが日本でも売られているぐらい有名な大学で近くに駅とかもないので合理的な思考を持つ現地の人はUberをバンバン使っているのかと思ったけど、ぜんぜん利用者がいない。
そもそも夏休みで人が少ないのもあるのかもしれないが。。。
Uberがダメなら「イエローキャブ(タクシー)」とか「バス」とか選択肢はあるのだけど、イエローキャブは事前登録をしてないと使えなくて、バスでホテルのあるアナハイムへ行くには4〜5時間かかると事前学習していたYouTubeで言っていたし、間違って別路線に乗ってしまえばどうなることかわからない。そもそも小銭もないしクレジットで乗れるかもよくわからない。そんなことを踏まえると利用するのは悪手。

Uberを信じ、Uberを待つ。

それしか、自分には残されていない。

グッドラック

消去法によってやることはひたすら待つということに至ったのだけれども、実は問題がもう一つ。行きは1時間で来れた道が帰りは2時間くらいかかる計算になっている。


初めの3時30分に乗れたとしてもホテルに着くのは6時前。ホテルに着いたらプレーボール!!つまり、余裕を持ってグラウンド入りという計画はそもそも破綻していたということだ。

俺はここに何をしに来たのか。
そんな後悔をしつつ、Uberのアプリを見つめることしかできない。
そうこうしているうちに1時間。バッテリーが20%を切った。
ここでバッテリー切れは一番ヤバイ。
急いでショップに走り、先ほど物色を散々した挙句「俺はUCLAを胸に掲げられるほどのエリートじゃない」という自意識に負けてステッカーと鉛筆しか買えなかったショップで猛スピードでバッテリーを購入。従業員の人に「Uberがぜんぜん捕まらないんだけどどうして?(Google翻訳を見せるスタイル)」と聞くと「ああ、この時間は渋滞がすごいんだよ。幸運を祈るよ。」とロサンゼルス交通事情と、いかにも本場らしい軽い感じのグッドラックを添えられ乗り場に戻る。

グッドラック

このフレーズの本質は心配してる風を装うけれどもこれ以上はあなたとは関与しません的な「上っ面の親切心」なわけで、いまここで使用することは適切な使い方なんだろうなと唇を噛みしめながら思いを馳せる。

命をつなぐバッテリー

まあこれで、バッテリーの不安はなくなった。
しかし、いつ戻れるのだろう。てか、今日中に戻れるのかなと孤独に苛まれているとスマホに反応が。
UCLAに学生を送ったドライバーが自分をアナハイムに連れて行ってくれることに。
ああ、生きて帰られる。しかもゲームも少し観れてラッキー。
もう、優先順位はゲームではなく命にシフトしていた。

リラックスにご用心

ドライバーはナイスガイで気さくにいろんなことを喋らせてもらった。
自分はGoogle翻訳を介してなのでテンポが悪いのにもかかわらず気さくに話してくれた。
ああ、この人でよかったなと思いつつ車で過ごす。少し、景観を見る余裕も出てきた。
そうやって、不安や絶望の状態から安心できる状況に変わると全身の力が緩み、ある問題が浮上する。

トイレに行きたい。

人の体は緊張状態にあると便意が薄れる。逆にリラックスすると便意が高まる。
自分も人間なので、そのような生理的反応が起きるわけである。
でも、「トイレ行きたい」とは言えない。
なぜなら気さくに話をしてくれて、少しでもMLBの試合を早く観られるように高速道路ではなく裏道を駆使しながらあの手この手で爆走しているドライバーに、そんなこと言えない。
まあ、大ではなく小なので最悪ペットボトルにすれば、、、など訳のわからないことを考えつつ、どうしようかなとヤキモキしていたらリラックスが便意を通り過ぎて眠気にたどり着き、少し眠ることができた。
起きると球場目前で、残り20分は気合で乗り切ることに成功した。
試合はもう3回を終わっているし大谷のヒットを見逃してはいるのだけど、ここに立てていることに100%感謝できる。ドライバーには熱い握手とこの旅行最大のチップを入力し、車を見送った。
よし、球場に入ろう。迷いなく走り出した。

15分ぶり2回目

やっとの思いでたどり着いたエンゼルススタジアム。事前に購入しているチケット画面を開き、入ろうとした瞬間「あっ」と声を出してしまった。

リュックを持ったままじゃないか。。。(痛恨のミス)

そう。アメリカではテロ対策として透明のトートバックやポシェット程度のものしか持ち込むことができない。そのため、自分が背負っていた黒のリュックではテロの可能性を持つ男として入場できないのだ。球場近くにコインロッカーとかもないのでホテルに置きに行くしかない。(事前学習でのYouTubeでもそう言っていた)

さっきのドライバーとの握手の感触が消えぬまま、球場から出る作戦を立てないといけない現実に泣きたくなる。

走ってもいいのだけど、ここならUberは見つかるんじゃないか?
そんな直感も働き、Uberで配車手続きを済ませると1分程度でドライバーが見つかる。
いやいや、早すぎる。乗り場まで走らないとということで猛ダッシュ。
急いで乗り込み、事情を説明(もちろんGoogle翻訳)し談笑しながらホテルへ。
ホテルでリュックを置き、ここでやっとこさトイレで用を足すことに成功。
クレカとキーを確認し、エンゼルスのキャップとラリーモンキーという猿の人形を片手にいざ出発!!
待ってもらってたUberに飛び乗り、しばらくしてからあることに気が付く。

パスポート、リュックの中やん!!!(15分ぶり2回目の痛恨のミス)

昔のちびまる子ちゃんよろしく額に縦筋と冷や汗たらり。

どうしよう。ここで引き返すか。

どうしよう。ワンチャン大丈夫じゃないか。

そんなことを逡巡してたら球場に到着。もういい。なんとかなる。
そんな気持ちでドライバーと熱い握手を交わし、球場へ。

走れ!!

どれだけ大谷が活躍しても「なおエンゼルスは逆転され負けました」と続く通称「なおエ 」でお馴染みエンゼルス。
前日の試合は、まさにそのようなゲーム展開だったのだが、その日は1週間ぶりの勝利を飾った。左中間の奥から大きな花火が打ち上がりファンたちは久しぶりの勝利に大盛り上がり。しかし、その花火は自分にとっては気持ちを盛り上げる花火ではなくスタートの合図でしかない。
ファンは9回1アウトぐらいから自分の席に戻り、戦況をみつめ、
「勝ちました→花火→大盛り上がり」となる。これが普通だ。

ところが自分は、9回1アウトぐらいから整理整頓を済ませいつでも帰れる状態を作っていて
「勝ちました(用意)→花火(スタート)→ダッシュ」という花火を合図に猛スピードでホテルへ。

走れ!!Road to Passport!!

そんなフレーズを胸に秘め、
ホテルへ向かって前へ前へ進む。

途中で街路樹に水を与えるスプリンクラーにも怯まず、路上で奇声を発する人の手に注射器が目に入っても心を乱すことなく、ただ一直線に、ただ真っ直ぐに走り切るその姿はフォレスト・ガンプそのものである。

ホテルにつき、息を整えつつホテルの部屋に入る。
パスポート発見。
「ああ、生き残った〜」
と、胸を撫で下ろしながらシャワーへ。

UCLAでUberがつかまらず耐え難い孤独とグッドラックについて思いを馳せ、予想より倍の時間がかかる道中をトイレを我慢しつづけ、やっとの思いで球場に着いたらリュックを置きに行かなくてはならず、帰ったらパスポートを忘れてフォレスト・ガンプの走って帰る。それに加えて午前中はサングラスはなくすし、立ち寄ったアウトレットでは奥さんに「そんなん、いらんで」と一蹴され何も買わずに出たりということがあったけど、いま生きているし、安心感とともにシャワー浴びている。

行き当たりばったりで、なんとかしようと思っても次々と想定外が起きる一日。

もうこれはサザエさん状態と名付けていいはずだ。

サザエさんであれば「ホント、今日はまいったわ〜」と言いつつ
波平が「まったく、そそっかしいやつだ」と注意し
カツオが「ホント、姉さんは困った人だよ」とツッコミ
サザエさんが「なに、カツオ!!あんたに言われたくないわ」とキレる。

そんな団欒をしててもおかしくないよなと、ホテル近くのダイナーでピザを(1カットが注文の仕方がわからなかったため)1枚食べて満腹のお腹をさすりながら想像しつつ2日目が終わった。

気づいたらペロリ。

行き当たりばったりってのは予定調和がなくて、端から見えいる分には楽しいのだけれど、自分ごとになると命がけだよなと痛感させられた1日でした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?