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夏の支度。

「夏のにおいがする」

子どもたちが、「夏」を察知している。
窓からの風に、おそらくそれは、ほのかな草いきれのにおいなのだけれど、「夏のにおい」だと。鼻先にうっすら夏の気配。

「夏の音がする」

のは、夫が芝刈り機で庭を丸刈りにしていた音。陽射しの強い明るいおもてで、乾いた機械音がジャリジャリジャリジャリと気だるく響く。窓を閉めればきっと、そこまで聴こえない、やる気のなさそうな音。

ちなみに付随して思い出すのは、

「祭りのにおいがする」

近所の夕飯の支度のにおい(献立はおそらく生姜焼きか何か、肉を焼いたにおい)が、まだ日の暮れない生ぬるい風に漂ってきたから。出店っぽいにおい。美味しいにおい。


昨日のまとまった雨で、草木がしっかりと、たっぷりと湿っていて、力強くなってきた陽射しに当てられ、もわっと初夏の、まだ「夏の気配」くらいな、赤ちゃんみたいな夏のにおい。日向に出れば、赤ちゃんと言えど、まともに暑いのだけれど、影に入れば心地よい風にほっとする。まだ大丈夫。

メダカの水槽を洗い、水換えをする間、日向で作ったメダカの水は、たっぷりと陽射しを浴びて、キラキラ光をとじこめる。

去年の夏に、6匹いたメダカ。
今は3匹と、その隣の水槽には子どもたちが15匹。そろそろの繁殖時期にそなえて、ふわふわの水草を入れる。やわらかで細かなふわふわの産卵草。

メダカは、それだけで小ちゃいけれど、親メダカはやっぱり立派だ。
体つきもスラッとしていて、「大人」だ。どこか「ちゃんとしている」し、「安定」している。スンッとひと泳ぎでツーッといく。

子どもメダカたちは(それでも2センチくらいにはなっているものの)、チロチロ尾ビレを忙しく動かし、泳ぎもどこかあどけない。孵化したほんの2週間ほどの差で、まだまだ小さな子もいる。ぽっちゃりな子も、スレンダーな子も。チロチロ、ツンツン、上に行ったり下に行ったり、懸命に泳ぐ。

この夏は、きっとまた大家族になる。

夏の気配と、夏の支度。

冷凍庫の「勝手に氷」が、
ガトンッガラガラと、
夏の支度を手伝う音がする。


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