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二十歳と飲み会。

ムクッと目覚めると、隣には三女、反対側の隣には姪っ子、そしてその奥には長女が、それぞれ布団に埋もれて寝ていた。

「ん?何時?」

枕元のスマートフォンを見れば10:12。
じゅうじ…。もうこんな時間か。

昨晩、長女と姪っ子二人と二番目の姉の五人で近くの居酒屋へ飲みに行った。
10年ぶりくらいのお店、若い衆やそうじゃない衆も賑やかに、あぁそうだったそうだった、こういうの久しぶり。

「生中一つと─」
二十歳をすぎた姪っ子たちと長女を連れて、こうして飲みに行く日がくるとはね。

「生中のグラスは凍ったのと普通に冷えたのとありますがどちらにしましょ?」
には、もちろん
「凍ったので」
と、おねえさんに笑顔で答えて。

乾杯🍻

はぁ〜うんまい。


奥では五、六人女性のグループが盛り上がっていて、その隣のテーブルでは、女性グループの中に男性が「おまたせー」と合流して。

タコの唐揚げや生ハムサラダや、串焼き盛り合わせを仲良く食べ、生中を追加するごとに、梅サワーやレモンハイやファジーネーブルをたのみ、新しい生中が来るたびにグラスを空にして「おねがいします」とおねえさんに笑いかける。

付き合って二ヶ月の彼氏の話をする姪っ子①を「めんどくさい女」認定して笑いこけ。
たびたび「は?なんて?」と会話が聞き取れない天然な姉に「ある一定の音域が聴こえない人」認定をして笑いこけ。

途中で長女たちのBeRealがピコンと鳴って、
みんなでグラスを片手にポーズをキメる。
女子大生と飲むのは楽しい。

と、すぐ隣のテーブルに見覚えのある男性がいるのに気がついて、ただ「誰だっけ…」くらいぼんやりうっすらな記憶なもんだから、モヤッとしたままそのニット帽の男性を見るともなしに見ていた。彼の連れたちを見たとて思い出せず、でもどこかでみたことある…と、けれどもとうとう思い出せず帰った。

そう、帰りといえば。

なぜかこの店を出ていくお客さんは、慌ててコソコソッと、なかば小走りくらいで帰っていく。二組も続けて小走りで帰っていくから
「何であんな慌てて帰るんやろ 笑」
「めちゃ走るやん 笑」
と内輪でツッコミを入れながら見ていたのだけれど、結局、私たちの出した答えは
「この店では〝帰るときは慌てて帰る〟のが流儀なんじゃない!?」で。
(なわけないのだが。)

いい具合に出来上がった私たちは、ケタケタしながらお会計をして、「ごちそうさま」とおねえさんに笑いかけ(しつこい)。
帰りはちゃんと〝慌てて〟帰ったのだった。

外に出るなり、みんなで笑いこけた。

「なんだこれ」

いい夜だった。
楽しくてたくさん笑った夜だった。
働きっぷりのいいおねえさんが可愛かった。


あ…。


思い出した!

あのニット帽の男性、夫の会社の若い子だ。
前に会社のBBQで話したことあった子だ。
夫に話すと、すぐに連絡をしたらしく、やっぱり彼だった。

「奥さんいましたよ。
   はい、金髪でした。」


……そら、目立つわな。


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