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冷静を装う。
運転免許証の写真に、かわいいとかない。
なんの表情でもない真顔の長女が、めでたく運転免許証に載っていた。
取りたての、湯気さえたちそうな、ホヤホヤの初心者の助手席にのる。
むろん、車は私の愛すべきRocky。18年連れ添った愛車ムーブラテ(オレンジ)は役目を終え、一昨年に迎えたRocky 黒×赤。私の大切な相棒である。その運転席にホヤホヤの初心者が乗ってみる。助手席は私だ。
とかく、運転手を焦らせたり動揺させたりしてはいけない、命懸けで冷静さを保つ。
道を間違えようとも、変に減速しようとも、ウインカーのタイミングが気持ち悪くても、「上手に運転できてるよ」と寄り添う。動揺させてはいけない。助手席は私。
見慣れた道を、10時10分のハンドルで、背筋を伸ばしたホヤホヤの運転手が60kmで行く。助手席は私だ。
「そこ右!」などとは言ってはいけない。
穏やかに、普段と同じ口調で
「次の信号は右ね〜」
「対向車きたから、左にじんわり寄ってとまろか〜」
家に無事ついて、難関の車庫入れもやってみる。
「ゆっくりねー、そう、そっちにきって、下がりながらゆっくり戻してく〜、ゆっくり」
かなりゆっくりだが、真っ直ぐ、車庫に収まった。エンジンを切る。
「お疲れ様〜。あとは、慣れればもう少し周りもちゃんと見えるから、自然な運転できてくるよ」
と、愛すべきRockyの助手席から降りる。
ホヤホヤの運転手も
「あ〜緊張したー、怖かったー」
と手汗をぬぐい、安堵である。
翌朝、私の両足に違和感が。
そう、助手席に乗っているあいだ中、両足にかなり力が入っていた。筋肉痛である。
口調は冷静を装い、「初心者だからそんなもんだよ〜」くらいの余裕さえ醸し出していたのだが。
両足は、ガッチリ踏ん張っていたらしい。
ホヤホヤの初心者の助手席は、
足腰が鍛わる。
そして、
本当は
めっちゃ怖かった。
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