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チェコ買い付け日記 ㉘「コミックのフェルダ」

チェコの滞在も残すところあと1日です。
この日はホテルからブルタバ川沿いをのんびり歩いてホレショビツェ地区へ。
旧市街地周辺のブルタバ川は遊覧船が列を成して停泊し、それに乗る人たちや川沿いのカフェでビールを飲む人たちで賑わっています。
賑やかな場所を通り過ぎて、川沿いをさらに北へ。
シュテファーニク橋を渡ってホレショビツェ地区へ入ります。

ホレショビツェ地区は市街地の中でもカジュアルな雰囲気。
中心部が観光客向けの「チェコっぽい」店が多いのに対して、チェコに住む若者が見たい、欲しいものがある町という気がします。
小さなヴィンテージショップや本屋に入りたいと思うのですが、お店のオープンがお昼過ぎというところも多く、そいういう部分もまた観光客向けではない感じ。
路面にテーブルとパラソルを出していたホットドッグ屋で昼ごはんを食べながら、店の開店を待ちます。

ヴィンテージショップではチェコの子ども向け雑誌Mateřídouškaを何冊か買いました。
70年代〜80年代発行でわりと状態が良く(それでも子ども向け雑誌なので、書き込みや切り取りがいくつかあるのですが)、ミロスラフ・ヤーグルやラデク・ピラシュなどのすてきなイラストが目をひきます。

実はこの旅の前半にも別の店で1948年発行のMateřídouškaを3冊買っていました。
今から80年ほど前の発行なのでさすがに状態が悪いのですが、オンドジェイ・セコラの『ありのフェルダ』の漫画が最後のページに連載されています。

『ありのフェルダ』は、もともとは大人向けの漫画だったものを、子ども向けのマイルドな物語にして1930年代に出版され、シリーズ3冊が今でも版を重ねています。
日本でも福音館書店から関沢明子さんの翻訳で3冊とも出版されています。
ちなみにチェコの国立図書館では日本語版の『ありのフェルダ』も所蔵しています。
フェルダはチェコでは国民的なキャラクターで、アニメにもなっているようです。
Mateřídouškaでは物語ではなく子ども向けの漫画の形で連載されていたのですね。

作者のオンドジェイ・セコラには昆虫学者の肩書きもあります。
アリだけでなくカメムシやゲンゴロウ、ウスバカゲロウなどいろんな虫の特徴を細かく描写していて、しかもその虫の特徴を生かしたお話の展開はさすがです。
虫好きな子どもも、お話好きな子どもも楽しめる『ありのフェルダ』。
虫たちの細かい描写やコミカルな展開は漫画でも面白そうです。
漫画版も日本で読めるといいですね。

Mateřídouškaはチェコ語でタイムの意味。魚料理などに使われるハーブです。
タイトルロゴは私の大好きなヨゼフ・ラダの描いたデザインが1945年の創刊から現在までずっと使われています。

70〜80年代のものと、48年のものを見比べると2つの年代で雑誌の変化がいくつかあるようです。

48年は隔週(čtrnáctideník)と書いてありますが毎月2回、1日と15日の発行と思われます。
16ページでB5版より少し大きめ約26.5×19cm、ページ表記は多分創刊からの通しページです。
私が持っているのは1948年února(2月)15日号177ページ〜192ページと、それに続くbřezna(3月)1日号193ページ〜208ページ、少し飛んでkvětna(5月)1日号257ページ〜272ページ、の3冊です。
買ったときは通しページということに気づかず、しかも紙テープのようなもので補修?してあるので、分厚い雑誌から切り取って分冊にしてあるのかと思いました。

70年代になるとサイズがひと回り小さくなって約24×16.5cmに。
発行も月1回ペースになり、その分ページが倍の32ページに増えています。
ページ付けは通しページではなく、毎号1ページから。
48年の表紙にはイラストとともに短い詩が書かれていましたが、70年代のものには詩がなくなりイラストが大きく描かれるようになっています。

Mateřídouškaは今も出ている雑誌で、新しい号の表紙にはピカチュウやアナ雪のイラストが見られます。
80年後にこの雑誌を古本屋で見つけた人は、私と同じように「ピカチュウのイラスト、レトロですてき!」と思うのかもしれません。

Mateřídouškaの1948年発行のものは、状態があまり良くないので実物を見てからの購入をおすすめします。
ウェブストアにはアップせず、出店の際に持っていきます。
オンラインでの購入をご希望の方は https://syslovbooks.stores.jp/ の問い合わせフォームやインスタのDMなどからご連絡いただければ対応いたしますので、お気軽にご連絡ください。
状態の良い70年代以降のものは今後ウェブストアに上げていく予定です。



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