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notヒーローを叩きつけるガン監督の最後っ屁『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol3』

エンドゲームで燃え尽きてしまったマーベルライト勢の自分も、ジェームズ・ガン監督の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の新作は観にいく。

以下、感想など。

本作は3作目にして、ロケットが主役の回。
生体工学で生み出され、知性を持ったアライグマであるロケットは、非道な化学実験の被害者であり、メンバーの誰にも詳しく過去を明かさない。

回想で明かされる出自は、フリークス映画のそれで、“産まれてきてしまった悲劇”みたいなのがとても刺さる。他の失敗作たちもそれぞれ悲劇を醸し出していてよい…。

冒頭ではロケットがクイルのウォークマンでレディオヘッドの「creep」を聴いてるんですよ⁉︎ 俺らが聴くより意味あいが深刻だよ……。

過去のロケットは今よりピュアで可愛い…!
めちゃくちゃ知性派キャラだし……。
メカを治したりハッキングしたりは前からやってたけど、これは工学的な機械いじりの知識で、実戦で身につけたのかと思ってたけど、化学や生物学みたいな理論もいけるんだね……。

他にサブキャラのクラグリンと宇宙犬コスモの活躍などもありましたね。
クラグリンはヨンドゥから笛ペンを譲り受けるも、なかなか操縦に慣れず下手くそなままでしたが、今回で完全に二代目を受け継いだ感じですね。

ヨンドゥの武器はカッコよくて好きなんですよね。AKIRAのテールランプの如く光の軌跡を残してヒュンヒュン飛び回るのが楽しい。

コスモは一作目からいるのはいるキャラだったけど、今回はがっつり活躍する。
スーツに超高性能なバウリンガルがついてます。イグノーベル賞。

上映時間が2時間29分と長丁場なのが少しネック。
一度観るだけならた飽きずに最後まで楽しめますが、2度3度観るのはきついかもしれない。
色々なことに決着をつけなくてはならないのと、他シリーズへの布石などを入れなくてはいけない関係で、どんどんウェイトが増えていく。
ユニバースの弊害が現れてきているのかもしれません。

パンフで初めて知ったけどTV版ホリデースペシャルなんてやってたんですね。
ディズニープラスだけかぁ……サブスクだらけの時代に翻弄…。

ガン監督の作家性など

ライバルDCコミック原作の『スーサイドスクワッド』でも、はみ出しものたちのチームを描くガン監督。
改めて振り返ってみると、監督の美学は王道のヒーロー像とは違うものだ。

1966年生まれのガン監督はX世代で、カート・コバーンと同世代。
グランジでオルタナティブな価値観がガーディアンズを形成している。

ダサいのがかっこいいし、負け犬が正義だし。

神話的なヒーローはガーディアンズにもスーサイドスクワッドにもいない。チームとして戦うとき彼らは初めてヒーローになる。

それだから、マーベル映画にそんなに乗れない自分でもガーディアンズやスーサイドはわりかし好きになれる。

弱さや欠点はあっても、傷を舐め合ったり、徒らに感傷に陥らないのが彼らの強さでかっこいいところ。

ガン監督はマーベルを去って、新生DCユニバースを統括するプロデューサーに就任する予定だそうで、そうなればケヴィン・ファイギvsジェームズ・ガンという構図になりますね。

マーベルはケヴィン・ファイギがあくまで全体のトーンを決めていて、クロエ・ジャオ監督のような作家性のつよい人物に監督させても(『エターナルズ』)最終的にはマーベルタッチになってしまう。コンテンツ主義のスタイルで作ってる感じです。

一方DCはユニバースと銘を打っていても、作品間の繋がりが弱く、単体で完結する映画が多いです。それぞれの監督の個性に任せていて、作家主義のスタイルです。
ガン監督もDCの『スーサイド・スクワッド』のほうが強烈に個性が出ていて、一本の映画としてなら、ガーディアンズより傑作だと思っています。

今後DCとガン監督がどのような戦略を打ち出すのかはわかりませんが、DC全体にガン監督のタッチが加われば、作品に統一感が出ますし、なによりユニバース全体をガン監督の一つの作品だとして、さらなる才能の深化が見れるかもしれないので、楽しみです。

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